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IT部門をビジネスクリエイティブ集団に

システムの安定稼働、コスト削減、コンプライアンス強化など、IT部門の「作業」は年々増加しています。
しかし、新規事業や新技術の立ち上げなど、企業力強化のうえで不可欠なものは、IT部門の「知恵」です。
IT部門がビジネスクリエイティブ集団に生まれ変わるためのヒントやトレンド情報をご提供いたします。

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2017.04.04

全6回 【連載】徹底解説!「強いIT部門」を作るための業務改善TIPS 《連載:第3回》 単なる「コストセンター」から脱却せよ――「できるIT部門」に生まれ変わるための8カ条【後編】

IT部門の役割は、企業の経営戦略とビジネス部門の業務をITの側面から支援していくことにあります。それを実現するには、従来のIT部門の「仕事の進め方」「仕事に向かう姿勢」を改め、会社に単なる「コストセンターではない」と認めさせなければなりません。では、どんな行動をとるべきか。前編に引き続き、ITサービス管理エキスパートの井上誠の提言を紹介します。

提言⑤:サービスレベルのルールを決めよ

ビジネス部門とIT部門の間で良好な関係性を築けていない企業の特徴として、「ルールが存在しない」ことが挙げられます。具体的にはシステムの稼働率や障害復旧時間、ヘルプデスクの回答時間や応答率といったサービス品質についての合意がないために、「IT部門のサービスレベルが属人的になってしまう」と井上は指摘します。

「ルールがないと、ビジネス部門との関係性やITスタッフのスキルによってサービスにムラが生じ、対応が変わります。業務に精通したベテランスタッフに当たると迅速に対応してくれるのに、新人スタッフに当たると時間がかかるといった事態が起きてしまうとビジネス部門からのクレームになり、ビジネス部門とIT部門の関係はますます悪化します」

この問題を解決するためにも、ルールを決めておくべきだと井上は言います。

「例えば、こういう依頼ならば3営業日かかるといったルールをあらかじめ決め、そのルールをビジネス部門との間で合意します。すると、たとえ作業が1日で終了しても3日かかってもクレームにはなりません。『あのときは1日で終わったのだから、今度も1日で終わらせてほしい』といった“無茶振り”も避けることができます」

提言⑥:事後の投資対効果(ROI)を報告せよ

IT部門は常に、経営層やビジネス部門から「コスト削減」という厳しい要求を突き付けられています。もちろんそれは、多くのIT部門でも重々承知しています。ビジネス部門の要請によって構築するシステムの投資対効果(ROI=Return On Investment)の予測を立て、効果に見合ったシステムの投資予算額をはじき出す際にも、コスト意識を忘れることはありません。

しかし、問題は事後にあるというのが、井上の見方です。

「IT部門は、経営層やビジネス部門から『ROIに見合っていないシステムを企画・設計したのではないか』と指摘されることを恐れています。そのためシステムが完成し運用が始まった後に、『見て見ぬふり』をしてシステムの効果測定をせずに放置してしまうことさえあるのです。特に基幹業務システムは稼働後に変更することは難しいので、自分たちが提案したシステムの効果を測定したくないというIT部門は少なくありません。しかしそれは、ダメなIT部門と言わざるを得ません

むしろ逆に、事後の投資対効果を積極的に報告すべきだと井上は言います。

「クラウドがだいぶ普及したこともあり、今日のシステムの多くは規模を縮小したり変更したりすることが簡単で、いつでもサービスを止めることもできます。だからこそシステムを導入したことによる効果があったか、なかったかを報告することが、システムのコスト削減に直結します。ROIは本来、システム構築を依頼したビジネス部門がオーナーとして責任を負うべきなので、IT部門が悪びれることではないのです

ここで重要なのは、やはりビジネス部門との良好な関係です。導入効果が表れていなければ、ビジネス部門を巻き込んで次の施策に取り組みます。これにより徐々にROIは改善され、ビジネス部門のIT部門に対する信頼感も増していくのです。

提言⑦:外部ベンダーに委託するなら“可視化”せよ

日本では、深刻化する労働力不足が大きな社会問題になっていますが、コストセンターと見られがちなIT部門は、とりわけ人手不足に悩まされています。そのために、システムの障害監視や運用管理をMSP(マネージドサービスプロバイダー)などの外部ベンダーに委託する場合があります。

こうした場合、特に注意を払うべきだと井上は警鐘を鳴らします。

「私が見てきた中で最も酷いのは、ITのことをまったく知らないIT部門があることです。そうしたIT部門は、システムの構築や運用管理を外部ベンダーに委託せざるを得ないのですが、外部ベンダーへの依存を強めると、ベンダーの“好き”にされてしまう危険性があります。IT部門はそう思わなくとも、経営層やビジネス部門などIT部門の外からはそう見られてしまいます。特に1社の外部ベンダーとだけ長年の付き合いがあるというIT部門は要注意です」

もちろん外部ベンダーと良好な関係を保つことは、システムを安定稼働させるのに欠かせません。外部ベンダーの好き勝手にさせずに、うまく付き合っていく方法はあるのでしょうか。

「最も有効なのは、外部ベンダーに委託している業務を、ITサービス管理ツールなどを使って可視化することです。また、初期投資や運用経費が適正なのかを確認するために、何かを調達する際には必ず複数ベンダーに提案依頼書(RFP=Request For Proposal)を送り、コンペを実施することも重要です。そして外部ベンダーを上手にコントロールするのです」

提言⑧:常に勉強する意欲を持て

会社からIT部門が単なるコストセンターと見られるか、それとも経営戦略やビジネス部門を支援する頼もしい存在と見られるか、その分かれ目はどこにあるのでしょうか。井上は、最終的に「IT部門で働くスタッフのスキル」にかかってくると言います。

経営層やビジネス部門が必要とするITを提案したり、外部ベンダーをコントロールしたりするためには、IT部門で働くすべてのスタッフのスキルを底上げする必要があります。新しい知識を学び、業務に取り入れようとしないIT部門は、徐々に『ガラパゴス化』していき、何か改善が求められることがあっても選択肢が狭まります。これを繰り返していると、IT部門の覇気はどんどん低下します。これを防ぐには、各スタッフが常に勉強する意欲を持たなければなりません」

現在は、インターネットを通じてあらゆる最新情報を入手することができます。無料で参加できるセミナーや研修会も頻繁に開催されています。これらの手段からさまざまな情報を入手しようとアンテナを張り巡らし、各スタッフがスキルを磨いていくのです。

IT部門の価値を引き出すのは難しくない

ここまで「前編」「後編」にわたり、数々のIT部門を見てきた井上が「IT部門の価値を引き出す8カ条」を提言しました。よく読み返していただくとわかりますが、いずれの提言も実はごく基本的な、当たり前のことを述べています。つまり、IT部門の真価を引き出すのは、そう難しいことではないのです。

もちろんいくつかの提言はIT部門だけでなく、経営層やビジネス部門など会社全体の理解が求められます。これから自社のIT部門の課題解決に取り組もうというのなら、この機会に経営層やビジネス部門に協力を仰いでみましょう。経営層やビジネス部門も、間違いなくIT部門の価値を見出してくれるはずです。

井上 誠株式会社クレオ
2002年から、さまざまな業務システムSEとしてキャリアをスタートし、100社を超える企業システムの開発プロジェクトに携わる。数多くのIT部門を見てきた経験とITILやITサービス管理への高い知見を生かし、現在はITILエキスパートを取得し、クライアントの課題解決に日々尽力するITサービス管理のエキスパートとして活躍。

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