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2022.02.15
更新日:
2020.04.28
全2回 ITサービスマネジメントにあたってIT部門が果たすべき役割とは?〜ITILの有効性〜 《連載:第2回》 ITILの基本プロセスと活用のコツ
前回の記事ではITシステムの導入にあたってITILが重要な役割を果たすことを紹介しました。そこで、今回の記事ではITILをより具体的に理解するためにフェーズごとの詳しい解説と、どのような業務に役立つのかを解説していきます。
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全2回ITサービスマネジメントにあたってIT部門が果たすべき役割とは?〜ITILの有効性〜
ITILの基本プロセス
前回の記事でITILは5つのサービスライフサイクルによって構成されると紹介しましたが、その各サービスライフサイクルに詳しく解説します。
サービスストラテジは「戦略」を意味するフェーズです。たとえば小規模事業の場合はExcelなどによる顧客管理も可能ですが、数千人、数万人といった顧客を抱える事業になってくると現実的に考えて難しいもの。そこで、「顧客管理を自動化するITツールを開発したい」といったように、意思決定のプロセス郡がサービスストラテジに相当します。
その後、ITツールの「設計」を行うサービスデザインのフェーズに移行します。システム開発における要件定義に近いもので、目的に合わせてどのような仕様、機能を盛り込むのかを検討し文書化します。厳密に言えば要件定義とは多少異なるのですが、サービスデザインが十分に検討されていないと機能が不足してシステムを十分に活用できない可能性もあります。
3つ目は、「移行」を意味するサービストランジションです。開発したシステムを業務に導入または旧システムからの移行を行うフェーズに相当します。本番環境へ移行することによって既存のシステムやほかの業務に影響を及ぼすことも多いことから、慎重に進めなければなりません。
本番環境への移行が問題なく完了したら、4つ目にあたる「運用」に相当するサービスオペレーションのフェーズに移ります。実務担当者の役割確認や運用ルールの制定なども含めて、通常のオペレーションに向けて検討を行います。その後、オペレーションの段階で問題が発生した場合など、都度「継続的サービス改善」を行っていきます。これが5つ目のサービスライフサイクルです。
ITILの活用事例とコツ
ITILはさまざまな業務のシステム化に対応できますが、中でも代表的な活用事例として挙げられるのがサービスオペレーションにおけるインシデント管理プロセスです。
システムの運用段階でインシデントが発生したとき、記録自体は残して管理しているケースは多いものの、後で見直したときに何が原因だったのかがわからなくなってしまうことがあります。これはインシデントとして発生した事象そのものと、何が問題だったのか、そのための解決策などが整理されず曖昧なまま管理されていることが原因として考えられるためです。
ITILに沿ってインシデントを管理すれば、インシデントの事象、状況把握、問題解決策などを適切に切り分けることができるようになります。例えば、音楽エンタテインメント事業を展開する株式会社エクシングでは障害発生時におけるインシデントに対してITILベースの管理を実装。従来はExcelによって台帳管理を行っていましたが、ITILをベースにしたシステムを導入したことによってルールが明確化され、問題解決のナレッジ共有も進んでいきました。
インシデント発生時には、原因調査と暫定的な対応(ワークアラウンド)、恒久的な対応とそれぞれ優先順位を考えながらプロセスにあわせて担当者は動かなければなりません。しかし、起こっている事象や問題点が整理されていないとインシデントの解決自体が難しくなります。このような問題を解決するために有効なのがITILであり、ITILに沿ったシステムの導入をすることがIT部門の重要な役割といえるでしょう。見方を変えれば、ITILによって「誰がどのプロセスを担うのか」を明確化できるということでもあります。
インシデント管理を手作業によって実施している場合や、情報共有の範囲が不明瞭で誰が対応しているかわからない、同様の問題が複数回発生している場合など、インシデント管理において発生しがちな問題を解決するためには、ITILのライフサイクルに沿った考え方やシステムが不可欠といえるのです。