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2024.11.19

 更新日:

2024.11.19

全2回 IT部門の永遠の課題?自社の社員のITリテラシーを向上させる方法 《連載:第2回》 社員のITリテラシー向上のために効果的な取り組みとは?

社員のITリテラシー向上のために効果的な取り組みとは?

第1回目記事で述べたように、非IT社員のITリテラシーの低さはIT部門にとっても企業にとっても早急に解決すべき重要課題です。今回はそのための具体策と、企業・自治体のユニークな取り組み事例を紹介します。

社員ITリテラシー向上策(1) 研修・e-ラーニング

社員のITリテラシー向上のための施策として一般的なのが、社内外での研修(オンラインを含む)とe-ラーニングです。

どちらもインターネットで検索すれば、法人向けのサービスを提供している企業がすぐに見つかります。また、基礎レベルであれば無料で利用できるものもあります。例えば、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が運営する情報セキュリティ・ポータルサイトでは、新入社員向けや一般社員向け、中小企業向けなど、対象者別に無料の資料や教育コンテンツがまとめられています。

ここからセキュリティ!|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)

ここからセキュリティ!|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)

ただし、こうした取り組みは単発ではあまり成果が期待できません。体系的な知識・スキルの定着や最新情報の取得などの観点から、ロードマップを策定した上で、定期的かつ継続的に実施することが効果的です。

社員ITリテラシー向上策(2) 資格取得推奨制度

近年、DX推進企業を中心に広がりを見せているのが、非IT社員を対象とした資格取得推奨制度です。ITに関する資格にはいくつか種類がありますが、中でも非IT企業を含め受験者数が急増しているのが「ITパスポート試験」。情報処理に関わる国家資格で、基礎的なITリテラシー全体を総合的に学ぶことができます。

よく知られているところでは、経済産業省により「DX認定事業者」に認定されている住友生命保険相互会社が全職員に同資格の受験を推奨・支援していますし、最近では株式会社ニトリホールディングスが2025年までに8割の社員に取得してもらうようにすると発表して話題を呼びました。その他、入社前の内定者全員に受験を推奨している企業や、社員のモチベーションを高めるために社長・役員が率先して受験し、合格を果たしている企業もあります。

社員ITリテラシー向上策(3) インシデント対応訓練

情報セキュリティのリテラシーに関しては、定期的な研修に加えて、防災訓練のようにサイバー攻撃やインシデントを疑似体験する訓練もおこなわれています。近年よく目にするのが、IPAが毎年公表している『情報セキュリティ10大脅威』でも常に上位にランクインしている「標的型攻撃メール」に対する訓練です。

標的型攻撃メールとは、情報窃取を目的に特定の組織に送られるウイルスメールです。多くは、実在する個人や組織になりすまし、受信者がメール内のリンクをクリックしたり添付ファイルを開いたりするとウイルスに感染する仕組みになっています。手口は巧妙ですが、往々にして不自然なフォントや日本語が使われているため、見分けることは不可能ではありません。

訓練では標的型攻撃メールを模した疑似メールを社員に送付し、「不審なメールを開封したか(開封率)」「開封してしまった場合、ルール通りに上長や担当部門に報告できているか(報告率)」などをチェック。定期的に実施することにより、こうした指標の改善と社員のセキュリティ意識の向上を図ります。なお、訓練対象者のリテラシーレベルに応じて、事前に告知するパターンと抜き打ちで実施するパターンを使い分けると効果的です。

続いて、ユニークな取り組みをおこなっている企業・組織の事例を紹介します。

ユニークなITリテラシー向上取り組み事例(1) 若手社員が経営トップにレクチャー!?

全社的にIT・デジタルを導入する企業の場合は、一般社員だけでなく経営層にもITリテラシーは必須です。そのための一般的な取り組みは経営層向けの研修ですがある大手化粧遺品メーカーでは「リバースメンター制度」という一風変わった制度を取り入れています。

リバースメンター制度とは、名前の通りメンター制度の逆、つまり若手社員が先輩社員のメンター(助言者、指導者)となってアドバイスや指導をおこなう制度です。

同社では、ITに詳しい若手社員をメンターに任命し、異なる事業領域の役員にマンツーマンでITツールの知識や使い方をレクチャー。経営層のITリテラシー向上だけでなく、普段なかなか接することのない役員とコミュニケーションを取ることで、若手社員の成長にもつながっているということです。

ユニークなITリテラシー向上取り組み事例(2) 気軽に学べる「漫画」を活用

研修や訓練の他に、ちょっとした隙間時間などに気軽に学べる環境を用意しておくことも効果的です。その参考になるのが、山形県庁のデジタル担当部門(やまがた幸せデジタル推進課)の取り組み。同課では2021年7月より、職員のITリテラシー向上を目的としたデジタルマガジン(庁内報)を週1回発行しています。

これまで取り上げたテーマは、「デジタルに一歩踏み出すショートカットキー集」「ちょっとまった!そのLANケーブル接続」「Zoomであの人を上座にしたい」など。初歩的ながら、すぐに業務に役立つ豆知識的なノウハウが目立ちます。

マガジンを読んでもらうための工夫の1つが、短時間で読める“漫画”形式でわかりやすく伝えているところ。詳細を知りたい方に向けて、手順書にアクセスできる仕組みも用意しています。また、漫画にはデジタル担当者やメールでネタやノウハウを提供してくれた職員が顔出しで登場するなど、“職員参加型”のメディアになっていることも大きな特徴です。

※参照:職員のリテラシー向上に向けて~デジタルマガジン~|山形県
※参照:先進政策バンク詳細ページ|全国知事会

ユニークなITリテラシー向上取り組み事例(3) 非IT人材のロボット開発を支援

社員のITリテラシー向上に対して積極的なのは、やはりDX推進企業です。中には基礎的な知識・スキルの習得だけでなく、実際に業務に利用するITツールを開発するための支援をおこなっている企業もあります。

そのうちの1社が、経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)により、『DX銘柄2024』に選定された株式会社三井住友ファイナンシャルグループ。2017年度より、非IT社員のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)自主開発支援をおこなっています。

RPAはパソコンの定型作業をソフトウェア上のロボットで自動化できるITツール。同社では、社員自らロボットを開発できるよう、徹底した寄り添い型の研修制度を設け、座学だけでなく、マンツーマンで開発をサポートする体制を整備しました。

既に「業務交通費精算ロボ」など様々なロボットが開発されており、導入による業務効率化時間は12万時間以上。IT・デジタル担当ではないのにかかわらず、この制度をきっかけにプログラミングに興味を持ち、独学で勉強して資格を取得している社員もいるということです。

※参照:SMBC GROUP REPORT 2020 特集:カラを、破ろう。|株式会社三井住友ファイナンシャルグループ

今回紹介したように、社員のITリテラシー向上のための取り組みにはさまざまな種類があります。他にも、こうした教育的な取り組みとは別に、最新の技術やITツールを積極的に導入して実際に触れる機会を増やすことも効果的です。

しかし、いずれにしても最も重要なのは、第1回目記事で取り上げたITリテラシー習得の必要性、そして習得できない場合のリスクを、組織全体に周知徹底することかもしれません。

なお、IT部門がヘルプデスクの業務負荷を減らしてコア業務に注力できる環境を実現するためには、社員のITリテラシー向上以外では、ヘルプデスク業務またはノンコア業務全体を効率化させることも一策です。具体的な手法については下記の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

【事例で紹介】AIチャットボットでITヘルプデスクを改善する方法|SmartStage
ITSMツールによるノンコア業務効率化・自動化のススメ|SmatStage

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