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2024.09.10

 更新日:

2024.09.10

全2回 イノベーション創出のための新発想法!「SFプロトタイピング」とは? 《連載:第1回》 SFプロトタイピング導入前に知っておきたい基礎知識と進め方

SFプロトタイピング導入前に知っておきたい基礎知識と進め方

「VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」時代とも呼ばれる昨今、ビジネスのあらゆる領域でイノベーションが求められていると言っても過言ではないでしょう。とはいえ、余程の天才でもない限り、ただ待っているだけで革新的なアイデアが湧いてくるなんてことはありえません。では、何をするべきか?
——その答えの1つが、今回のテーマである「SFプロトタイピング」です。

第1回目となる今回の記事では、SFプロトタイピングを導入する前に最低限知っておきたい知識と進め方を簡単に紹介します。

SFプロトタイピングとは?

SFプロトタイピングとは、SF的な思考やSF作品の創作を通じて未来の社会や産業、技術を描き出し、その未来像から逆算して、これから取り組むべき事業や戦略、製品・サービス開発などについて考えるメソッドを指します。

既に存在しているものではなく、「未だ存在していないもの」からアイデアを生み出すところが従来の思考法や未来予測にはない大きな特徴ですが、それゆえに既成の枠にとらわれない柔軟な発想が期待できます。ちなみに「プロトタイピング」は「試作品を作る」という意味で、ソフトウェア開発などでも使われている言葉です。

なお、以前紹介したデザイン思考も同様にイノベーティブな発想を目的としたアプローチですが、デザイン思考はあくまで現実に存在している顧客・ユーザーを起点に発想する点がSFプロトタイピングと大きく異なります。

なぜビジネスにSFを?

「ビジネスとSF」は一見縁遠いように思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。例えば携帯電話や自律走行車、3Dホログラムといった技術はもともとSF小説やSF映画から生まれたアイデアですし、バーチャル空間に現実世界を再現するメタバースも、『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーブンス著)というSF小説にインスパイアされて開発されたことはよく知られています。

また、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグなど、いわゆる「イノベーター」と呼ばれる巨大テック企業の創業者たちがこぞってSF小説からの影響を公言していることから、SF小説をビジネスパーソンの基礎教養に挙げる向きもあるほどです。

日本でもSFプロトタイピングに取り組む企業は増えています。そのきっかけになったと言われているのが、2013年に出版された『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』(ブライアン・デイビッド・ジョンソン著/亜紀書房)。米インテル社初の「未来戦略家」を務め、製品開発にも携わっていた著者による書籍です。

インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング|亜紀書房
インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング|亜紀書房(画像は版元ドットコムより)

それから10年以上経った現在、日産自動車や清水建設、京セラ、デンソーといった有名企業でもSFプロトタイピングの導入は広がっています。また、民間企業以外の官庁や地方自治体でも、社会課題の解決や街づくりなどを目的にSFプロトタイピングのプロジェクトを実施しています。

SFプロトタイピングの進め方

先述の通り、SFプロトタイピングにおいて未来像を描くために創作するのがSF小説です。小説という形態にするメリットとしては、ストーリーによってリアリティや臨場感を醸成させられること、立場の異なる複数のキャラクターを登場させることで多様な視点から考察できることなどが挙げられます。ただし、よりその世界観を共有しやすくするために、映像やイラストなど他ジャンルの作品を併せて(または単独で)制作するケースも少なくありません。

SFプロトタイピングの進め方に決まったやり方は存在せず、企業やプロジェクトによって千差万別ですが、基本的には外部のファシリテーターやSF作家を中心としたチームを作り、ワークショップを重ねて未来像や作品を作り上げていき、完成後に今後のアイデアを出し合う、という進め方が一般的なようです。

参考のために一例を挙げると、農林水産省が産学官連携により立ち上げた「フードテック官民協議会」では、2021年~22年に「2050年の食卓の姿」をテーマにSFプロトタイピングを実施した際、次のような手順で進めたということです。

(1)手法の理解

(2)ビジョンの素材出し
未来の食卓のガジェットに関するアイデア出し(2050年の食卓を変えている技術、製品・サービス、それらを必要とするユーザー像等)

(3)未来の食卓のガジェットに関するディスカッション

(4)未来の食卓のコンセプト作成
小説のストーリー骨子の作成

(5)未来の食卓をとりまく世界観の作り込み
小説家がSF小説第1稿を完成

(6)ビジョンの磨き上げ
SF小説第1稿の世界の課題やキャラクターの価値観、ライフスタイル、行動、セリフ等について議論するワークショップを実施。意見を小説家にフィードバック

(7)小説家によるSF小説第2稿の制作、イラストレーターによる小説世界を表現するイラスト制作

(8)シンポジウム
SF小説の公表と発信、2050年の食卓の姿についてのパネルディスカッション

※出典:2050年の食卓の姿ワーキングチームFoodtechVision~SF思考による~|農林水産省 フードテック官民協議会より(一部文章表現を変更)

続く第2回目記事では、実際に国内の企業・組織がSFプロトタイピングによって創作した小説などの作品を紹介します。

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