- Tips
2023.08.29
更新日:
2023.08.29
全2回 2023年版:IT担当者なら知っておきたいトレンドキーワード10選 《連載:第2回》 見逃し厳禁! 2023年のITトレンドキーワード〈後編〉
今回も引き続き、IT担当者なら知っておきたい2023年の旬のキーワードを5つ紹介します。
プロンプトエンジニアリング(プロンプトエンジニア)
2022年11月に米OpenAI社から『ChatGPT』がリリースされて以来、LLT(大規模言語モデル)を始めとする「生成AI」がビジネスでも話題になっています。プロンプトエンジニアリングの“プロンプト(prompt)”とは、その生成AIに対する指示文や質問文のこと。つまり高度なプロンプトを作成して、AIから質と精度の高いアウトプット(回答)を引き出す技術を指します。
プロンプトエンジニアリングに必要なスキルは、AIや自然言語処理(NLP)、さらにPythonやJavaといったAIに関するプログラム言語の知識など。「プロンプトエンジニア」という職種も誕生しており、日本でも多くの講座や研修を目にします。生成AIの成果はプロンプトによって大きな差が生まれるため企業も大きな期待を寄せているようですが、その一方で「プロンプトエンジニアリングは過渡的な技術であり、生成AIの発達によって近い将来不要になる」という見方もあるようです。
オブザーバビリティ
従来のシステム監視(モニタリング)に代わる新たな障害検知・対応のアプローチが「オブザーバビリティ(Observability:可観測性)」です。システムやアプリケーションの利用状況やパフォーマンスに関する数値データから、内部の状況をリアルタイムかつ一元的にモニタリングする技術を指します。
オブザーバビリティが関心を集めている背景には、クラウドやコンテナ、マイクロサービスなどを活用するクラウドネイティブ・アーキテクチャの普及があります。従来の監視手法では、クラウドネイティブのように複数のサービスに分散し、頻繁に追加・変更も加わるシステムの振る舞い(挙動)を把握するのが困難だからです。
専用のツールも既に数多く登場しています。一般的には「メトリクス」(CPU使用率など)、「ログ」(システム内で行われた操作など)、「トレース」(複数コンポーネントにまたがるリクエスト全体の流れなど)といった数値データを収集し、ダッシュボード上で一元的に可視化/分析することで、ボトルネックや障害の根本原因を特定できる仕組みになっています。
オルタナティブデータ
経済統計や企業の財務情報のような、主にこれまで金融分野で用いられてきた一般的な公開情報(トラディショナルデータ)に対し、近年のデジタル技術の進展によって取得できるようになったデータを総称して「オルタナティブデータ」と呼びます。
オルタナティブデータは金融以外にも小売、マーケティングへの活用が進んでいます。具体的には以下のようなデータが該当します。
- IoTデバイスを通じで取得する機器稼働データ
- POS(販売時点情報管理)データ
- クレジットカードの決済履歴
- スマートフォンの位置情報(人流データ)
- 交通量データ、気象情報、衛星画像
- SNSの投稿
- Webサイトのトラフィック
- Webスクレイピング(自動抽出)によって取得する情報
など
オルタナティブデータが活用されるようになった要因としては、上述のデータ取得技術と併せて、機械学習などの分析・解析技術が発達したことも無視できません。なお、オルタナティブデータは「データプロバイダー」と呼ばれる企業から購入しるのが一般的ですが、海外では事業会社が自社サービスで取得したデータを他社に提供することで事業化している事例もあります。
コンポーザブルERP
従来の“統合型”や“コンポーネント型”に続く新しいタイプのERP(統合基幹業務システム)として注目を集めているのがコンポーザブル型のERPです。“コンポーザブル(composable)”は“組み替え可能な”という意味の言葉で、その名の通り、細かい業務部品を組み合わせて業務モジュールを作成し、システムを構築できるのが特徴です。
もちろん、従来のコンポーネント型も様々な要素を組み合わせることは可能ですが、コンポーザブルERPはより柔軟性に優れ、業務上の細かい要件や特殊な要件に応じてカスタマイズすることができます。やや大げさかもしれませんが、業務プロセスをシステムに合わせるのではなく、システムを業務プロセスに合わせられるERPと言えるでしょう。また、最小限の機能のみでスモールスタートできるため、ビジネスリスクを軽減できる点もメリットです。
CCoE
CCoEは「Cloud Center of Excellence(クラウド活用推進組織)」の略称。企業において、クラウドの導入、管理、セキュリティ、コスト最適化など、クラウド活用に関する活動を全社横断的に推進する組織を指します。主に「企業として戦略的なクラウド活用ができていない」、「部門によってクラウド利用に対する温度差が生れている」、「全社的なITガバナンスの維持が難しい」といった課題を抱える大企業(特にDX推進企業)を中心に導入が進んでいます。
具体的なCCoEの取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- セキュリティポリシーやコスト、ガバナンスに関するガイドライン策定
- 運用管理や業務機能、セキュリティのサービス開発、選定
- KPIの策定及び継続的な効果測定・改善
- 社内外の研修、勉強会などを通じての人材育成
上記はあくまで一部ですが、技術面のサポートと併せて、ビジネスプロセスや組織(文化)を変革する働きも求められるのが特徴と言えるでしょう。そのためCCoEには、専門知識だけでなくリーダーシップを持つ人材が不可欠とされています。
以上、2023年のトレンドキーワードを10個紹介してきました。いずれも基礎的な説明ですので、気になる言葉があった方は是非ご自身でも深掘りしてみてください!