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2022.02.15
更新日:
2019.02.12
全2回 ITシステム運用改善を実現するために何が必要か 《連載:第1回》 攻めのITへの投資を妨げる、企業を取り巻く現状
企業がこれからの競争を勝ち抜いていくには、デジタルを活用した新たなサービスやビジネスの創出、および業務の最適化が欠かせません。攻めのITへ積極的に投資し、デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業が注目される一で、まだ多くの企業がそこまで踏み出せていない現状もあります。いま企業とデジタル化を取り巻く現状を改めて整理します。
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全2回ITシステム運用改善を実現するために何が必要か
第2段階のデジタル化に向かう企業の現状
デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)というキーワードが注目されるようになり、多くの企業がデジタル技術をフルに活用した新しいビジネスやサービスの創出、事業競争力の強化に向かっています。
その中で、企業におけるIT活用のあり方がいま大きなターニングポイントを迎えようとしています。IT投資の方向性に注目すると、SoR(System of Record)と呼ばれるバックエンドのシステムにおけるプロセス効率化から、SoE(System of Engagement)と呼ばれるフロントエンド領域における価値創造へのシフトが鮮明になってきています。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が昨年に発表した「企業IT動向調査2018」によると、日本全体ではそうした第2段階(モード2)のデジタル化に踏み出した企業の割合はまだ2割程度にとどまっているものの、売上高1兆円以上の大手企業に注目すれば、すでに7割超がデジタル化を実施していることがわかります。前年度調査と比較して20ポイント以上の大きな伸びを見せているといいます。
また、デジタル化が最も進んでいる企業群では、経営層の関与が非常に高いことも大きな特徴です。経営層自身がデジタル化を企業の重要事項として認識してリーダーシップを発揮しており、同調査によれば、75%を超える企業が経営会議などでデジタル化に関する議論や報告を行っています。
運用改善における課題解決の難しさ
しかし、見方を変えれば一部の大手企業を除くと第2段階のデジタル化への取り組みは思ったように進んでいないという現実があります。そうした中で経済産業省は2018年9月、「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」という報告書を発表しています。「2025年までにレガシーシステムをモダンなシステムにリプレースしなければと企業は崖に落ちる(破局を迎える)」と警鐘を鳴らした同レポートの衝撃的な内容は、あらゆる産業に大きな危機感を与えています。
実際、第2段階のデジタル化への取り組みは容易ではありません。ビジネスの付加価値創造を目指す企業において、最も重視すべきテクノロジーの上位に位置付けられているのは、「AI」「IoT」「各種クラウド」「ビッグデータ」「RPA」「ブロックチェーン」などです。とはいえ、そうした最新のテクノロジーを活用したイノベーションに踏み出したくても社内には“余裕”がありません。デジタル化が停滞する企業のIT投資の内訳を見てみると、その大半がレガシーシステム維持・運用費に費やされているのが実情だと指摘する調査もあります。要するに「守り」の投資に大きく足を引っ張られているのです。
さらに、IT部門の人手不足という問題が輪をかけます。「企業IT動向調査2018」を再び参照すると、日本企業におけるIT人材は増加傾向にあり過去5年間で最高の伸びを見せていますが、業務改革や新技術調査、データ分析といった業務を担当できる専門的な知識やスキルをもったIT人材は著しく不足しています。そこで企業は、これらの不足するIT人材を補うために新卒採用よりも中途採用を重視する傾向にあります。
ITの高度活用を進めていくには経験や実績が重視されるため、この施策も決して間違いとは言えません。ただし問題は、企業が求めるIT人材が、現在のIT部門をどう捉えているのかです。同調査によれば、実は約75%のIT人材がIT部門は魅力的でないと回答しているのです。
IT部門をいきなり魅力的な組織に変貌させるような特効薬はありません。JUASも「社内への情報発信やコミュニケーションの充実を図るほか、仕事で成果をあげて社内で評価されるなど地道で継続的な活動が必要」と説いているように、まずは既存の仕事で社内の信頼をしっかり得ることが1つのポイントとなってくるでしょう。