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2022.02.15
更新日:
2018.09.11
全2回 「エコシステム」でさらに進化するITサービス 《連載:第1回》 AWSとMS Azureにみる、エコシステムのカタチ
ITシステムの構築・調達の仕方は大きく変わりました。自社内ですべてを完結させてサービスを形作るあり方では、世の中の変化の追随しつつ高価値のサービスを作ることは難しくなりました。いま重要になるのは、クラウド上に形成される巨大な「エコシステム」を利用することです。ここでは改めてエコシステムが作り出す近年の動きについて振り返ります。
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全2回「エコシステム」でさらに進化するITサービス
クラウドに出現したエコシステム
現在のITシステムの運用基盤はオンプレミスからクラウドへと急速にシフトし、さまざまなクラウドベンダーが提供するIaaS(Infrastructure as a Service)や PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)などのITサービスの利用が広がっています。
さらに新しい潮流として、クラウドベンダーが直接提供するITサービスだけでなく、同じクラウド上でパートナーやサードパーティーが提供する多様なITサービスのポートフォリオも拡大しています。これはクラウドベンダーが自社のAPI(アプリケーションやデータ連携の仕様)を公開したことから加速している動きで、多様なITサービスの自律的な新陳代謝や拡大を促すとともに、複数のITサービスの柔軟な連携とつながりから新たな価値を生み出していく様子から「エコシステム(生態系)」と呼ばれています。
こうしたエコシステムは、ユーザー企業に対してより迅速かつ容易にイノベーションを実践するためのチャンスを拡大します。例えばAI(人工知能)やIoT、ブロックチェーンなど、従来は個別に導入することが困難だったスタートアップが開発した最新テクノロジーを、クラウド上のエコシステムから調達して利用するケースも増えてきました。一部の企業だけしか利用できなかった多様なテクノロジーがあらゆる企業に低い障壁で開放されているようになってきているのです。
代表的なクラウド上のエコシステム
具体的に現在のクラウド上には、どんなエコシステムが誕生しているのでしょうか。代表的な2つのクラウドサービスを取り上げて紹介します。
まず紹介したいのは、AWS(Amazon Web Service)が展開している「AWS Partner Network」です。その名のとおりAWSがパートナー制度を通じて戦略的な拡大を図っているエコシステムで、国内からも数百社の企業が参画しています。
さらに詳細にその構成を見てみましょう。AWS Partner Networkは大きくSIベンダーやコンサルティングファーム、MSP(マネージドサービスプロバイダー)などからなる「APNコンサルティングパートナー」と、サードベンダーや開発ツールベンダーなどからなる「APNテクノロジーパートナー」の2つのカテゴリーに分かれています。そして各パートナーは提供しているITサービスの売上や実績によって「スタンダード」「アドバンスド」「プレミア」と階層化され、それぞれのクラスに応じた支援プログラムが提供されています。
また、「AWSコンピテンシープログラム」と呼ばれる制度のもと、市場(金融サービスや公共など)、専門技術(IoTやモバイルなど)、ワークロード(OracleやSAPなど)といったニーズが高い、あるいは今後の拡大が見込まれる専門領域に関して高度なスキルを有しているパートナーの認定を行っています。すなわちAWSは、パートナー間の競争心をあおりつつ、同時に競合関係を超えた協業を促すことでエコシステムの拡大を図っています。
そしてAWSの最大のライバルであるMicrosoft Azureもまた、パートナーエコシステムの拡大に余念がありません。
日本マイクロソフトの発表によると、2017年度にパートナーと共同開発したクラウドビジネスアプリケーションは865件に上り、そのうち553件がMicrosoft Azure関連となっています。さらに、これらのパートナーが提供したソリューションを分野別に見ると、デジタルマーケティングやメディアサービスが53件、IoT分野は24件、AI(人工知能)分野は46件となっており、先端テクノロジーの拡大が目立っています。
また、機械学習関連の豊富なアルゴリズムやAPIを提供しているのがMicrosoft Azureの特長ですが、パートナーの中にはインフラ部分については他社クラウドのIaaSを利用し、AI領域についてはMicrosoft Azureを利用するといったように、複数のクラウドをまたいだエコシステム上にITサービスを構築するケースも散見されるようになりました。
こうしたエコシステムを利用していくことで、自社で対応できない領域を補いながら、すばやく自社の強みとなるソリューションを素早く展開できるようになるのです。