- 業務プロセス
2025.02.05
更新日:
2025.02.04
全2回 データ価値向上と業務フロー自動化を実現!今注目のiPaaSの基礎知識 《連載:第1回》 クラウド時代の企業を救うソリューション「iPaaS」とは?
「クラウド時代」とも呼ばれる昨今、規模の大小問わず、多くの企業でSaaSを始めとするクラウドサービスの導入が加速しています。もちろんそれぞれ便利かつ効果的なツールではありますが、しかしその一方で、ビジネスの成長を阻害しかねない大きな問題が発生しているのも事実です。その問題のソリューションとして期待されているのが今回のテーマである「iPaaS」。今回はその基礎知識を紹介します。
なぜiPaaSが注目されているのか
iPaaS(アイパース)は「Integration Platform as a Service」の略語で、直訳すると「サービスとしての統合プラットフォーム」。具体的には、「複数のシステムやクラウドアプリケーションをクラウド上で連携・統合するプラットフォームサービス」を指します。iPaaSという言葉自体は2011年にアメリカのIT調査会社ガートナー社が発表したレポートに登場していましたが、日本では2020年代以降、急速にその名が知られるようになりました。
iPaaSが注目を集めている理由の1つが、現在、多くの企業で発生している「データサイロ化」問題です。その大きな要因となっているのは、冒頭でも述べたクラウドサービス導入の加速化。部門ごとにさまざまなSaaSを導入するだけでなく、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用するマルチクラウド環境も当たり前になる中、「どこに使えるデータがあるのかわからない」「似たようなデータが複数のシステムに散在している」「それぞれのシステムが孤立してデータが同期されていない」といった状況を招くケースが増えているのです。
iPaaSを導入すれば、こうした問題を効率的に解決することができます。例えば、従来であればSaaS間でデータを同期したい場合は、システムを繋ぐインターフェースを開発するかCSVファイルをエクスポート/インポートして同期させる手法が一般的でした。しかしiPaaSでは、基本的に各サービスが公開しているAPI(※1)を活用し、製品によってはGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上でドラッグ&ドロップするなど、ノーコード/ローコード(※2)で簡単に連携させることが可能です。
(※1)API(Application Programming Interface)…ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐ仕組み
(※2)ノーコード/ローコード…プログラミングの知識やスキルがなくてもシステムやアプリケーションを開発できるツールや開発手法
また、従来のようにシステム同士を1対1で接続してデータ連携するのではなく、下図のように複数のシステムを単一のプラットフォーム上で一元的に連携・管理できる点もiPaaSの大きな特徴です。
従来型のデータ連携とiPaaSの違い(イメージ)
iPaaSで実現できること
ただし、iPaaSで実現できるのはクラウドサービス間のデータ連携だけではありません。製品の種類により違いはあるものの、一般にiPaaSには次のような導入メリットがあります。
(1)オンプレミスを含む複数のシステム間でのデータ連携
SaaSのようなクラウドサービス間でのデータ連携・同期以外にも、製品によってはオンプレミス同士やクラウドとオンプレミス間の連携も可能なため、クラウドとオンプレミスのシステムを組み合わせるハイブリッドクラウド環境にも対応できます。
下図は一例としてiPaaSで連携できるITツールやシステムを並べたものですが、他にもメールサービスやオンラインストレージなどのアプリケーション、さらにIoT(モノのインターネット)デバイスに連携可能な製品もあり、データ連携による意思決定の迅速化だけでなく、各システムに分散しているデータを統合・分析するための基盤構築としても活用されています。
iPaaSで連携できるシステム(一例)
(2)ワークフローの自動化
iPaaSは事前にシナリオのようなものを設定しておくことで、複数のシステムにまたがるワークフローを自動化することも可能です。具体的な自動化例については続けて紹介します。
iPaaSによるワークフロー自動化例
iPaaSを導入することで、次のようなワークフロー自動化の仕組みを構築することができます。
・営業、マーケティング業務の自動化例
MA(マーケティングオートメーションツール)ツールとSFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理システム)をiPaaSで連携することにより、マーケティング部門が獲得したリード(見込み客)情報を営業チームやインサイドセールスチームに自動で共有することができます。
MAとSFA、CRMの連携例
また、次のようにSFAとカレンダーアプリ及びビジネスチャットツールを連携すれば、商談日の決定後、スケジュール登録や関係者への通知の手間を省くことが可能です。
SFAとカレンダーアプリ・社内チャットツールの連携例
オンプレミスのシステムと連携できる製品を活用することで、クラウドの名刺管理サービスに登録した名刺情報をオンプレミスの顧客管理システムに自動登録することもできます。
名刺管理システムと顧客管理システムの連携例
・経費申請業務の自動化例
クラウドの経費精算システム、文書管理システム、社内問い合わせ管理システムをiPaaSで連携させた上でiPaaSと社内チャットツールを連携することで、経費申請後の管理者への依頼通知、内容確認、承認などのやりとりを、各システムにアクセスすることなくチャットツール上で完結させる仕組みを構築できます。
経費申請に関わるシステムの連携例
他には、人事部門における新入社員向けの端末手配やID発行といったワークフローの自動化などにもiPaaSが活用されています。
以上のように、iPaaSにはデータサイロ化の解消だけでなく、作業工数削減やヒューマンエラー防止による生産性向上も大きなメリットです。次回の第2回記事では、そんなiPaaSを効果的に活用するために重要な製品選びに必要な知識、そして今回紹介したものよりも一歩進んだワークフローの自動化事例を紹介します。