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2024.12.29
更新日:
2025.01.21
全2回 2025年版:IT部門なら知っておきたいITトレンド・注目キーワード10選 今すぐチェック! 2025年のITトレンド・注目キーワード〈後編〉
今回も引き続き、2025年注目のIT・デジタルに関するキーワードを5つ紹介します!
〈6〉ゼロタッチキッティング
ゼロタッチキッティングは、パソコン・スマートフォンなどのデバイスを業務に使用できる状態にするキッティング作業を効率化する仕組みです。キッティングに必要なデバイスの初期設定、アプリケーションのインストール、ユーザーアカウント設定といった作業を、インターネット経由で自動化することができます。
IT担当者の負担を軽減するアプローチとして注目されており、基本的に担当者に求められるのは、デバイスに利用するポリシーやインストールするアプリケーション、ハードウエアIDなどを事前にクラウド上で設定しておくことだけ。従来のように、パソコン1台ずつ手動で設定したり、マスタイメージ(ひな型)を作成して各デバイスにコピーしたりする作業は必要ありません。
また、ユーザー側はログインしてインターネットに接続するだけですぐにデバイスが利用できるため、テレワークやハイブリッドワーク環境にも対応可能です。ゼロタッチキッティングの代表的なツールはMicrosoft社の『Windows Autopilot』。同社の『Microsoft Intune』と併用すれば、キッティング以外のPC運用管理業務も効率化が可能です。
〈7〉マルチモーダルAI
マルチモーダルAIは、テキスト、画像、音声、動画、センサー情報など、複数の異なる種類のデータを統合的に処理するAIモデルです。反対に、画像認識AIのような単一の情報だけを扱う従来のAIモデルは「シングルモーダルAI」と呼ばれます。
また、複数のデータを扱えるだけでなく、学習によって異なるデータ間の関連性を自ら見つけられるようになることもマルチモーダルAIの大きな特徴です。そのため、シングルモーダルAIよりも多角的な視点での解析や高度な技術の習得が可能です。まだまだ開発途上ではありますが、現在、医療や産業用ロボット、自動運転、広告・マーケティングなどの分野で応用や研究開発が進んでいます。
例えばソフトバンク株式会社は、2024年11月、自動運転を遠隔サポートするためのマルチモーダルAIの開発を発表しました。基盤となるAIモデルは、交通教本や交通法規に加え、一般的な走行シーンや予測が困難な走行状況におけるリスクと対処方法を学習。自動運転車の前方映像(ドライブレコーダー映像など)と現在の交通状況を問うプロンプトを入力することで、走行状況やリスクを判断し、安全走行を可能にするための推奨アクションを生成することができます。
参照:低遅延なエッジAIサーバーで動作する自動運転向け「交通理解マルチモーダルAI」を開発|ソフトバンク株式会社
〈8〉DevSecOps
DevSecOpsは、開発(Development)と運用(Operations)を密接に連携させる「DevOps」にセキュリティ(Security)の概念を組み込んでシステム開発を行う手法です。
DevSecOpsの目的は、安全性を確保しながら迅速かつ柔軟にシステム開発をおこなうこと。近年、クラウドネイティブなシステムの増加により、DevOpsや短い開発サイクルを繰り返すアジャイル開発が主流になりつつありますが、これらの手法では、セキュリティ対策が疎かになったり、余計な工数が増えたりするケースがしばしば発生します。
そこで鍵となるのが、開発工程のなるべく早いフェーズでセキュリティ対策を実施する「シフトレフト(Shift Left)」というアプローチです。リスクを早期発見・修正することで、手戻りを削減できるメリットがあります。
シフトレフト(イメージ)
また、DevSecOpsを実現するためには、マイクロサービスやコンテナ、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)といった効率化・高速化を可能にする技術も重要です。先述のクラウドネイティブを含め、マイクロサービスやコンテナについては↓の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
【入門編】クラウドネイティブの特徴・メリット・事例|SmartStage
〈9〉データクリーンルーム
データクリーンルーム(DCR)とは、企業が保有するデータを複数の企業間でセキュアに統合・分析できるクラウド環を指します。暗号化技術などの活用により、顧客データを個人が特定できない形で活用できることが大きな特徴です。
データクリーンルームが注目される背景には、ユーザーのオンライン行動を追跡できるサードパーティーCookieの規制を始め、消費者の個人情報やプライバシー保護に対する社会的な意識の高まりがあります。ただし、データクリーンルームにはプライバシー保護だけにとどまらず、複数のデータソースを統合して分析することで、これまで価値や深い洞察を得られるというメリットもあります。
そうしたメリットを効果的に活用できる領域の一つがデータドリブンマーケティングです。例えば、広告主が持つ顧客データとプラットフォーム事業者が持つデータを連携させることで、より高度な顧客分析や精度の高い広告配信を実現することが可能です。
〈10〉AIの2026年問題
生成AIに使用する大規模言語モデル(LLM)の性能を向上させるためには、膨大なデータを活用した学習が必要です。しかし、インターネット上に存在する質の高いテキストデータが、早ければ2026年頃に枯渇する可能性が指摘されています。この問題を「AIの2026年問題」と呼びます。
ちなみに、ここで言う「質の高いテキストデータ」とは、ファクトチェックが行き届いたニュース記事や専門家によって書かれた論文などを指します。一方で質の低いデータは、SNSの投稿のような信頼性に乏しい情報が該当します。言うまでもなく、質の高いデータが不足すると、生成AIのアウトプットが不正確または倫理的に問題のあるものになってしまうリスクが高まります。
こうした状況に対処するため、現在アメリカのAI企業ではさまざまな対策を模索しています。一つは、質の高いデータを多く保有する通信社やニュースメディアとの提携。また、もう一つのアプローチとして「合成データ(シンセティックデータ)」の活用があります。合成データとは現実世界のデータを基に人工的に作り出されたデータで、医療や金融など、プライバシー保護が必要な分野で有用とされています。いずれにせよ、データの質はAIの発展にも関わる重要な要素。今後の動向から目が離せません。
2025年のITトレンド・注目キーワードの紹介は以上となります。何か気になるトピックはありましたでしょうか? これからも『SmartStage』は、IT部門が「ビジネスクリエイティブ集団」に生まれ変わるために役立つ情報を毎月お届けしてまいります。他では扱わない意外な(?)テーマも取り上げていますので、過去の記事も含めて是非参考にしてください。
それでは、2025年も引き続き『SmartStage』をよろしくお願いいたします!