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  • サービスデスク

2024.07.23

 更新日:

2024.07.23

全2回 生成AIの普及でIT部門の仕事はどう変わるのか? 《連載:第2回》 生成AIが変えるシステム運用保守とセキュリティ

生成AIが変えるシステム運用保守とセキュリティ

生成AIは、前回紹介した社内ヘルプデスクとプログラミング・開発業務だけでなく、システム運用保守やITサービス管理の領域でも活用が進んでいます。セキュリティ面で求められる取り組みとともに、活用例を紹介します。

インシデント対応における生成AI活用例

前回、社内ヘルプデスクツールの事例でも説明した通り、生成AIは社内ドキュメントや問い合わせメールの内容など、自社で蓄積してきた「ナレッジ」を学習して解決策を提案することができます。最近は、このような生成AIの技術を活用した機能を、運用管理システムやITサービス管理ツールに実装する流れが目立っています。

具体的には、発生したインシデントについて生成AIに自然言語で問い合わせると、ナレッジや過去の類似インシデントに基づいて原因や解決策を提案してくれる機能です。従来のインシデント対応も原因を特定したうえで解決策を講じるという進め方が一般的でしたが、多くの企業で熟練担当者の勘や経験に頼った対応が課題になっていました。こうした機能により、インシデント対応に要する時間と労力の削減、経験の少ない担当者による早期解決などが期待できます。

リバースエンジニアリングにおける生成AI活用例

リバースエンジニアリングに生成AIを活用したサービスも登場しています。リバースエンジニアリングとは、簡単に言うと、通常の設計とは逆にソースコードからシステムなどの設計書を作成する業務を指します。運用保守業務の属人化や担当者の退職によって、仕様書が不足したりシステムがブラックボックス化したりする問題はよく発生しますが、主にそうしたシステムの運用保守が困難になったケースへの対応策としておこなわれます。

一般的なサービスの流れは、生成AIにシステムのプログラムや運用マニュアルなどを取り込んで構造を解析させ、ベンダー企業のエンジニアが生成AIと対話と検証を重ねながら詳細な設計書を作成・整備するというもの。通常、リバースエンジニアリングは多くのエンジニアと時間を要しますが、少人数かつ短期間で完了することが可能です。

システム運用やITサービス管理への生成AIの活用は、他にもシステム改善(データのログをもとに改善案を提案)やナレッジ管理(運用レポートの草案を自動生成)、さらに「AIによるIT運用」を意味する「AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)」でも進んでいます。

AIOpsについては↓の記事で詳しく説明しています。
AI・機械学習の活用も。システム運用自動化の新たなアプローチとは?|SmartStage

求められるIT部門の変化

今回はIT部門の業務における生成AIの活用例を取り上げてきましたが、では今後さらにビジネスでの活用が広がっていった場合、IT部門にはどのような役割やスキルセットが求められるのでしょうか。

当然、効果的なプロンプト(指示文)を作成するノウハウなど、生成AIのポテンシャルを引き出すためのリテラシーは必須になるはずです。それも個人や部署メンバーの習得だけでなく、社内ワークショップなどを通じて組織全体のリテラシーを底上げする役割も求められるでしょう。

また、必要なセキュリティ対策も変わります。生成AIの場合、個人情報や機密情報の漏えいだけではなく、権利や倫理に反するリスク、つまり著作権などの知的財産権を侵害したり、誤りや偏見を含んだ情報を利用・拡散したりするリスクをもたらすからです。

最低限必要な対策としては、次のような取り組みが挙げられます。

  • 入力NGワードを設定する
  • 個人情報や機密情報はAIの学習対象から除外する
  • 従業員のチャット履歴や利用状況を把握できるようにする
  • 入力データを第三者の学習に用いられないサービスを利用する

こうしたツールの設定や管理における対策に加えて、社員にセキュリティ及びコンプライアンス意識を浸透させるための、ルール策定を含めたガバナンス体制の構築も必須です。例えば前回記事で紹介したLINEヤフー株式会社では、ユーザーのプライバシーを尊重しながらAIを安全に活用するために「AI倫理基本方針」を策定して社内外に発信しています。

※参照:AI倫理基本方針|LINEヤフー株式会社

もちろん、このようなリスクを避けるために、生成AIの利用自体を禁止している企業も多数存在しています。とはいえ、今後もしばらく、生成AIや生成AIを活用したサービスの発展は止まる気配がありません。

最近の動きとして、前回はOpenAIの『GPT-4o』に触れましたが、その後すぐにMicrosoftがネット接続せずに生成AIが使える新たなパソコンの開発を発表しましたし、さんざん「AI開発で後れをとっている」と言われ続けてきたAppleも、遂に自社開発の生成AIを『iPhone』に搭載することを発表しています。

このような流れによって、生成AIはますます私たちに身近な存在になっていくはずです。そうなれば関心を寄せる企業も増えていくでしょうし、自社を取り巻く競争環境にも少なからず影響を与えるでしょう。「自社ビジネスへ寄与する部署」への変革を目指すIT部門であれば、例え現状は導入予定がなくても、今までと同じ仕事のやり方を続けていて良いという訳にはいかないはずです。

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SmartStage編集部

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