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2023.09.13

 更新日:

2023.09.12

全2回 企業が避けて通れない「先端IT人材」不足問題を考える 《連載:第1回》 あなたは「先端IT人材」?それとも「従来型IT人材」?

あなたは「先端IT人材」?それとも「従来型IT人材」?

ビジネスのあらゆるシーンでデジタルシフトが進む現在、IT担当者のスキルは企業の競争力を大きく左右する要素と言っても過言ではありません。しかしながら最近、その“IT人材”のスキルに関してある問題が浮上しています。今回はその、いわゆる「先端IT人材」不足問題について、現状や課題、解決策に迫っていきます。

「先端IT人材」とは

同じ職種でも、時代によって求められるスキルや役割は変わります。特に近年のIT分野においては、テクノロジーの急速な発展とそれに伴う需要構造の変化により、従来と著しく異なるスキルが求められるようになってきています。

そしてその流れは、今後もしばらくおさまる気配はありません。2020年代後半にはこれまで定番だったSoR (System of Record)型のITサービスの需要はますます減少すると言われていますし、代わりにSoE (System of Engagement)型のシステムやクラウド、モビリティ、ソーシャル、IoT、AI、ビッグデータといった技術が、今以上に牽引していくことになると様々なメディアで予測されています。

こうした中、注目を集めているのが「先端IT人材(先端IT従事者)」です。先端IT人材とは経済産業省の資料でも使用されている言葉で、その名の通り、最先端技術を扱う知識・スキルを持つ高度IT人材を指します。ちなみにここで言う最先端技術は、いわゆる社会全体のデジタル化がもたらす「第4次産業革命」で必要とされる技術のこと。例えば経済産業省/みずほ情報総研株式会社の『我が国におけるIT人材動向』(2021年2月)という資料には、下記の技術が挙げられています。

ただし、これらの技術のいずれかを扱えるだけでは、先端IT人材としては不十分と言えます。なぜなら、同じく経済産業省/みずほ情報総研株式会社の『IT人材需給に関する調査』(2019年3月)には、「AIやビッグデータを使いこなし、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化を通じて生産性向上等に寄与できるIT人材」と記されているからです。つまり知識・スキルだけでなく、ビジネスに資するクリエイティブな発想や能力も求められているということです。

また先端IT人材に対し、従来型の保守・運用や受託開発に携わるIT人材は、こちらもそのまま「従来型IT人材」と呼びます。当然、従来型IT人材のほうが数は多く、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の『デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査』(2020年5月)によると、2019年時点のそれぞれの割合は、【先端IT人材:11.8%】、【従来型IT人材:88.2%】。先端IT人材がどれほど稀少な存在であるかがわかります。

とはいえ、感心してばかりはいられません。この先端IT人材と従来型IT人材の極端な偏りは、今後のIT業界、ひいては産業全体にとって深刻な問題だからです。

「従来型IT人材」が抱える問題

なぜ“深刻”なのでしょうか?以前、新聞などでご覧になった方も多いかもしれませんが、上述の経済産業省『IT人材需給に関する調査』内の試算によると、このままいくと“2030年には国内で先端IT人材が54.5万人も不足する可能性がある“からです。さらにその資料には、もう一つショッキングな試算結果が発表されています。それは、先端IT人材が54.5万人不足する一方で、”従来型人材のほうは9.7万人も余ってしまう”ことがあり得るということです。

ただし今後のIT人材について考える上で、従来型IT人材が“余ってしまう”という事実自体はさほど衝撃的ではないかもしれません。確かに“9.7万人”というのは、「売り手市場」と言われている現在の労働市場を思えば想像しがたい数字ですが、とはいえ冒頭でも述べたように、一時期通用していたスキルが年月とともに陳腐化していくことは避けられないからです。むしろ本当の意味でショッキングなのは、そうした外的要因ではなく、他の資料から浮かび上がってくる“自らのスキルに対する考え方・向き合い方“のほうでしょう。

例えば、上でも挙げたIPA『DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査』には、従来型IT人材(資料内では「先端IT非従事者」と表記)の“スキルアップに対する意欲の低さ”を如実に示す調査結果が掲載されています。

まず、自主的な勉強の状況に関するアンケート結果から見てみましょう。「業務上必要な内容があれば、業務外(職場以外)でも勉強する」と「業務で必要かどうかににかかわらず、自主的に勉強している」と回答したのは、【先端IT従事者:73.8%】に対して、【先端IT非従事者(従来型IT人材):48.4%】。実に半数以上の従来型IT人材が、【業務外(職場外)ではほとんど勉強しない】と回答しているのです。

当然ながら、勉強に関する費用の月平均自己負担額についても、【先端IT従事者:¥12,780】に対して【先端IT非従事者:¥3,920】と大きく差が開いています。さらに「データサイエンス」「AI・人工知能」「IoT」など9つの先端ITスキルに関する習得状況や今後の予定については、「習得する予定はない」との回答が9割近くを占めています。

ただし急いで付け加えておくと、これらの結果だけを見て「従来型IT人材=意欲が低い」「だから先端IT人材が増えない」と判断するのは性急に過ぎるでしょう。その理由は後半の記事で解説します。

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SmartStage編集部

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