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2023.06.01

 更新日:

2023.01.31

全2回 アプリ・システム開発の新たな一手「ノーコード/ローコード開発」とは? 《連載:第2回》 課題解決から新サービス創出まで――ビジネス・行政で広がるノーコード/ローコード開発事例

課題解決から新サービス創出まで――ビジネス・行政で広がるノーコード/ローコード開発事例

第1回目の記事で解説したように、様々なメリットと可能性を持つノーコード/ローコード開発。今回はその魅力を存分に生かした活用事例と、導入の際の注意点を紹介します。

企業と地方自治体におけるノーコード/ローコード開発事例

■株式会社ヤマダホールディングスのノーコード/ローコード開発事例

家電量販店業界トップでありながら、スピーディーなビジネス環境の変化に対応するために、内製化を前提としたDXを推進しているヤマダホールディングス。その一環として取り組んでいるのが、総務部を主体とした業務アプリのノーコード開発です。

目的は、同社の深刻な課題であった紙資料による業務負荷の高まりを解消すること。そこでノーコード/ローコードでワークフローアプリを開発できるツールを導入し、その開発・運用に特化した「総務デジタル運用課」を新設。出張申請など、各種申請業務をデジタル化するアプリを多数開発しているということです。

この取り組みにより、それまで1週間以上要していた承認までのリードタイムが即日完了するまでに短縮。リモート環境での申請書の起案・承認も可能になり、作業時間の削減効果は1年で300時間程度になると概算しています。

※参考:ヤマダホールディングス DX 戦略による業務効率化を SmartDB®︎で実現~働き方改革およびペーパーレス化による SDGs 目標達成へ~(株式会社ヤマダホールディングス)

■エンプティ株式会社のノーコード/ローコード開発事例

ノーコード開発を活用して革新的なサービスを実現した企業がエンプティ株式会社です。同社が東京・渋谷で運営するパーティー用レンタルドレス店舗『Empty Dressy』は無人店舗。1人も店員を置かず、ノーコードで開発したアプリケーションを複数組み合わせたシステムで運営しています。

店舗の人件費が不要のため競合店よりも低価格を実現。店員に気を遣うことなく試着やキャンセルができることから、ユーザーからも好評のようです。

※参考:実店舗なのにLINEで完全自動化!無人のレンタルドレスEmpty Dressyがノーコードでフルリニューアル(エンプティ株式会社)

活用しているのは、決済システムを構築できるShopifyを始め、アカウント登録や来店予約、店舗の鍵(スマートロック)の受け取り、返却手続きといった顧客とのやりとりを24時間自動対応できるLINEのアプリケーションなど。システムはエンジニアを使わず1ヶ月という短期間で自社開発したということです。

■東京都のノーコード/ローコード開発活用事例

前回記事でも紹介したように、DXを強力に推進している地方自治体の一つが東京都です。ノーコード/ローコード開発に関しても、職員向けワークショップだけでなく、業務アプリの開発というかたちで既に実務での導入・活用が進んでいます。

例えば福祉保健局・市場衛生検査所では、豊洲市場での食品衛生監視業務(有毒魚などの不良食品の排除や仲卸業者へのヒアリングなど)を効率化するためのアプリを開発。モックアップ(試作)の開発はデジタルサービス局の職員が手掛けたものの、その後の改良には現場の職員も加わり、ノーコードとローコードを併用しながら、テストと改善を繰り返すアジャイル開発の手法で機能を進化させていったそうです。

その結果、単に業務をペーパーレス化するだけでなく、チャットなどコミュケーション機能も備えたアプリが完成。それまでは有毒魚が判別できないときは持参の図鑑で調べたり、わざわざ事務所に戻って確認したりしていたようですが、アプリを入れたタブレットを持参することでそうした手間からも解放され、業務効率が格段に向上したということです。

「魔法のツール」ではない

上記のように現場の課題解決から新サービスの創出まで、様々な用途に活用されているノーコード/ローコード開発ですが、とはいえ一部のベンダーやメディアのように「魔法のツール」とまで呼ぶのはさすがにはばかられます。ノーコード/ローコード開発には、フルスクラッチ開発に比べて機能・デザイン面で自由度が劣るという点以外にも、いくつか課題や注意すべき点があるからです。

例えば開発ツールのベンダーロックイン及びセキュリティ問題。もちろん、ともにノーコード/ローコード開発ツールに限った課題ではありませんが、現場近くで使用する可能性が高いため、とりわけセキュリティに関してはセキュリティポリシーの周知や、いわゆる野良アプリとシャドーITの乱立を回避するためのガバナンスが欠かせません。

また、複雑なプログラミング知識なしに誰でも開発できるといっても、当然ながら限度はあります。中枢を担うシステムや費用対効果の大きなアプリの開発、さらに運用後の変更などの難易度の高い業務は、専門の知識・スキルを持った担当者に任せるのが現実的でしょう。

とはいうものの、短所にばかり目を向けたり、統制の検討にばかり時間を掛けたりしていては、いつまで経っても変化・変革を起こせないこともまた明白です。先行きの見えない現在、現状を変えるために重要なのは統制と自由のバランス。無料や安価で導入できるツールを使って、一度試してみるのも一策です。先程紹介した東京都の事例のように、ノーコード/ローコード開発の成否を分けるのは、こうした失敗を恐れないアジャイルマインドの有無かもしれません。

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SmartStage編集部

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