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2023.06.01

 更新日:

2022.12.27

全2回 DX時代の常識、ビジネスにおけるAPI活用のポイント 《連載:第2回》 APIエコノミーによる企業の新ビジネス創出事例

APIエコノミーによる企業の新ビジネス創出事例

システムやサービスにおいて外部の機能・データの活用を可能にするAPI連携。そのAPI連携によって生まれる新しいビジネスや経済圏を「APIエコノミー」と呼びます。今回は国内企業を中心としたAPIエコノミーの事例を紹介します。

成功のカギは「WIN-WIN-WIN」の関係構築

APIエコノミーの成功事例として頻繁に取り上げられているのが、米・配車サービス最大手、ウーバーテクノロジーズ社です。もともと同社のサービス自体が、地図や通話、決済などの機能を提供する数社のオープンAPIをマッシュアップ(組み合わせ)させたものでしたが、2014年に「Uber API」という自社のAPIを公開しました。

「Uber API」が提供するのはアプリやWebサイトに「配車リクエストボタン」を追加できる機能。例えば、ホテルのWebサイトやレストラン予約アプリがこのボタンを実装すれば、宿泊客は最寄り駅からホテル、またはホテルから周囲の観光スポットへ向かう際に、別のアプリを起動させることなく、ボタン一つでタクシーを呼ぶことができるようになります。

ITIL® V3

もちろん、メリットを得られるのは宿泊客だけではありません。ホテルやレストラン予約アプリは顧客満足度の向上が期待できますし、API提供者であるウーバー社も認知向上が期待できます。何よりAPIエコノミーにおいては、このようにAPI提供者・API利用者・ユーザー(顧客)が「WIN-WIN-WIN」の関係を築くことが成功のカギと言われています。国内でも様々な企業がAPIエコノミーを推進しています。

■ヤマト運輸株式会社の「配達連繫API」事例

メルカリを始め、C to C(個人間取引)のフリマ・オークションアプリに利用されているのが、ヤマト運輸の「配達連繫API」です。送り状の宛名を手書きすることなくQRコードを使って発送できたり、発送時の支払いが不要だったりと、出品のハードルを下げる機能を提供しており、API利用者=フリマ・オークション事業者はユーザー層の拡大が期待できます。匿名配送機能を使って出品者・購入者双方の個人情報を明かさず配送できる点も、サービスの安全性を担保する上で大きなポイントと言えるでしょう。

※参考:配達連繫API|ヤマト運輸株式会社

2017年に成立した改正銀行法によって、銀行や信用金庫にオープンAPIに係る体制整備の努力義務を課されたこともあり、国内で特にAPIエコノミーの動きが目立つのが金融業界です。

■「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」におけるAPI連携活用事例

エンベデッドファイナンスとは金融DX及びフィンテックの潮流の一つで、おもに「非金融事業者が自社サービスに金融サービスを埋め込んで提供する取り組み」を指します。非金融事業者にとって、銀行免許を所得することなくサービスに銀行機能を活用できることが大きなメリットです。

エンベデッドファイナンスによって新ビジネスを創出した企業の一つが、家電量販店チェーンを展開する株式会社ヤマダホールディングスです。住信SBIネット銀行による銀行機能提供サービス『NEOBANK』と連携し、2021年7月に『ヤマダNEO BANK』という金融サービスを開始。同社のスマホアプリ会員に向けて、アプリ内で預金・振込・融資などの銀行取引が利用でき、利用ごとにポイントが貯まるサービスを提供しています。

※参考:「暮らしまるごと」をサポートする「ヤマダ NEOBANK」誕生!|㈱ヤマダホールディングス、住信SBIネット銀行

APIは一般的なビジネスだけでなく、新技術を活用したまちづくりを意味する「スマートシティ」や、国が主導する「スーパーシティ構想」においても重要な役割を担っています。ここではそうした取り組みとも関連性の高い、次世代モビリティにおけるAPI連携の事例を紹介します。

■「テレマティクス」におけるAPI連携事例

テレマティクス(telematics)とは、「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語で、自動車に専用の通信端末を搭載し、交通情報や天候など様々な情報を利用できるようにする技術を指します。

あいおいニッセイ同和損保保険株式会社がパートナー企業と開発した『テレマティクス損害サービスシステム』は、API連携を活用し、自動車データとGoogle MAPなどの外部Webデータをリアルタイムで取得できる事故対応システム。顧客が事故に遭った際、従来は電話や書類によるやりとりが中心でしたが、このシステムにより走行データや運転挙動、位置情報などのデジタルデータを活用することができ、迅速かつ適切な事故解決のサポートが可能です。

※参考:【業界初】テレマティクス技術を活用した事故対応システム 「テレマティクス損害サービスシステム」の提供を開始|あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

今回は取り上げられませんでしたが、APIは上記事例以外にも、医療、スマートホーム、機械学習、画像認識など、様々な領域で活用されています。

API活用の課題と注意点

最後に、APIをビジネスで活用する際の課題や注意点を紹介します。

API提供者の大きな課題は、総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)という調査でも国内外企業の課題トップとして挙げられていた「セキュリティの担保」です。APIを公開することは、すなわちデジタル資産のインターフェースを公開すること。そのため不正アクセスやDDOS攻撃への入念な対策は欠かせません。また公開後は、ビジネスの状況や環境変化に合わせて改修していく必要があるため、運用保守を安全かつ効率的に回す仕組みの構築が必須です。

対して他社のAPIの利用者は、提供元の事情で不具合が生じる可能性があることを考慮しておかなくてはなりません。例えばAPIの仕様変更により自社アプリの改修が求められるケースや、提供元でサーバー障害などのトラブルが発生した際に、その影響を被ってしまうケースなどが考えられます。活用領域や規模によっては、そうした事態に備えてBCP(事業継続計画)を策定しておくことも必要でしょう。

また、API連携によってビジネスを大きく拡大させるためには、提供者・利用者ともに、戦略策定やシミュレーションが必須であることは言うまでもありません。

先に挙げた総務省の資料では、日本企業のAPI認知率と公開率の低さが指摘されています。とはいえ、新規ビジネスの創出や価値創造、レガシーシステムの刷新、さらに自前主義からの脱却といった取り組みは、現在、ほとんどの企業にとって喫緊の課題でもあるはずです。今後はさらに多くの企業がAPIによってビジネスや組織を変革していくことは間違いないでしょう。

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SmartStage編集部

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