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2025.09.23

 更新日:

2025.09.23

全2回 今さら聞けない「IDaaS」──クラウド型ID管理が企業とIT部門にもたらす進化 《連載:第2回》 ID管理の効率化とセキュリティ強化を両立する「IDaaS」

ID管理の効率化とセキュリティ強化を両立する「IDaaS」

第1回目記事では、クラウドサービスの普及や働き方の多様化を背景に、従来のオンプレミス型ID管理が直面する課題と限界について解説しました。続く今回は、クラウド時代のID管理の最適解として、IT部門の価値向上にもつながる「IDaaS(Identity as a Service)」の基礎知識をわかりやすく紹介します。

IDaaSとは

IDaaS(Identity as a Service:アイダース、アイディーアース)は、インターネット上で提供されるクラウド型のID管理・認証サービスです。前回紹介したオンプレミス型の『AD(Active Directory)』とは異なり、クラウドサービス。ただし、製品によってはオンプレミス環境との連携に追加の設定・構成が必要な場合があり、対応できるサービスやアプリケーションの種類と範囲も異なります。

代表的なソリューションとしては、『Microsoft Entra ID』や『Okta』が知られています。

IDaaSとは

IDaaSが提供する主な機能は以下の通りです。

・シングルサインオン(SSO)

一度ログイン認証すれば、他のシステムやサービスを認証手続きなしで利用できるようにする機能です。サービスごとのIDの入力・認証作業の手間を減らし、ユーザーの利便性を向上させます。

・多要素認証(MFA)

「知識情報(例:パスワード、秘密の質問)」、「所持情報(例:ICカード、ワンタイムパスワード)」、「生体情報(例:顔・指紋)」など、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う認証方法です。リモートワーク時の社外からのアクセスに対してもセキュリティを強化できます。

・IDフェデレーション(連携)

異なるシステムやサービス間で安全にIDを連携させる機能です。シングルサインオンを実現するための技術的な要素の一つでもあります。

・IDプロビジョニング

複数のシステム・サービス間でユーザーのアカウント情報を自動で作成・変更・削除する機能です。人事システムと連携すれば、従業員の入社・異動・退職に応じた更新・削除作業や他サービスへの反映を自動化することができ、IDライフサイクル管理を大幅に省力化できます。

・アクセスコントロール(認可)

ユーザー、デバイス、場所などの条件に基づいて、サービスの利用を許可・制限する機能です。例えば、あるシステムに対して特定の部署の社員にのみアクセスを許可したり、社用デバイス以外からのアクセスをブロックしたりといった設定が可能です。
機械学習を活用し、普段と異なる振る舞い(例:普段と異なるデバイスからのアクセス)を検知した場合に追加の認証を求めるなど、動的な認可機能(リスクベース認証)を備えた製品もあります。

・ログ管理・監査

IDaaSや連携サービスへの認証履歴、管理者作業のログなどを自動で記録し、可視化する機能です。不正アクセスの早期発見や、インシデント発生時の迅速な原因究明に役立ちます。

IDaaSの導入メリット

IDaaSの導入は、管理者(IT部門)とユーザー(従業員)双方に大きなメリットをもたらします。

管理者(IT部門)にとっての導入メリットは主に次の2点です。

・ID管理の効率化

社内外のシステムやサービスを個別に管理する必要がなくなります。IDフェデレーション機能による複数システムとの認証連携と、IDプロビジョニング機能によるアカウントの自動作成・変更・削除で、手動による作業やヒューマンエラーのリスクを削減できます。また、クラウドサービスのため、インフラ構築や運用管理の手間が不要な点も大きな利点です。

・セキュリティ強化

ID認証をクラウドで処理することで、社外から社内ネットワークへの直接アクセスが不要となり、オンプレミス型よりも安全性を高めやすくなります。多要素認証、シングルサインオン、柔軟なアクセス制御、ログ管理など、セキュリティ機能も充実。IDライフサイクル管理の自動化は、不正アクセスにつながる退職者のID削除漏れ(ゴーストID)の防止にも効果的です。さらに、アクセスルールや認証方式といったセキュリティポリシーを一元適用でき、組織全体のガバナンス強化にも貢献します。

ユーザー(従業員)には生産性向上につながるメリットが期待できます。

・利便性の向上

シングルサインオン機能により、サービスごとにログインする必要がなくなり、複雑なパスワード管理の負担が軽減されます。結果として、管理者への問い合わせる手間を減らすこともできます。

・業務効率の向上

リモートワーク環境でも、業務システムに安全かつスムーズにアクセスできます。SaaSや外部サービスとのID連携も容易で、新しいサービスを既存IDで即座に利用開始できるため、導入時の手間や負担が軽減されます。

ゼロトラストにおけるIDaaSの役割と重要性

IDaaSは、近年のセキュリティトレンドである「ゼロトラスト」の実現においても非常に重要な役割を担います。

ゼロトラストとは、「何も信用せず、すべてのアクセスを検証する」ことを前提としたセキュリティモデルです。従来の「社内=安全、社外=危険」という境界型防御の考え方では、インターネット経由で提供されるクラウドサービスの利用拡大や、社外から社内システムにアクセスするリモートワークの普及に対応できなくなったことから、近年急速に注目を集めています。

ゼロトラストでは、すべてのアクセス要求に対し、「誰が」「いつ」「どこから」「どの端末で」といった情報を検証し、自社リソースの利用可否を判断することを原則としています。IDaaSは、この原則を支える「ID管理」と「アクセス制御」の役割を担います。

・ID管理の役割

「誰が」を正確に識別するためには、正確なID管理が欠かせません。IDaaSは組織内のすべてのユーザーIDを一元管理し、入社から退職までのIDライフサイクル全体を自動化することで、信頼性の高いID基盤を提供します。

・アクセス制御の役割

IDaaSは、ユーザー属性や使用デバイス、アクセス元、時間帯といった情報をもとに、動的なアクセスコントロールをおこなうことが可能です。多要素認証(MFA)機能により、なりすましのリスクを低減し、認証許可の信頼性を高めることできます。

なお、ゼロトラストについては↓の記事で詳しく解説しています。
誰もがゼロトラストに無関心ではいられない|SmartStage

IDaaSがもたらすIT部門の変化

IDaaSは進化を続けており、最近では生成AIを活用した製品も登場しています。例えば生成AIチャットボットを搭載した製品では、自然言語で「新入社員に他の従業員と同様の権限を付与してください」といった指示を入力するだけで、必要な処理を自動で実行できるようになっています。

第1回目記事でも触れたように、ID管理は企業にとって「守り」(セキュリティ対策)だけでなく、「攻め」(業務効率化やDX推進)の起点ともなり得る、極めて重要な取り組みです。今後、クラウドサービスの活用がさらに広がり、働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、IDaaSはこうした「守り」と「攻め」の両面を支える基盤として、ますます存在感を高めていくでしょう。

そしてIT部門にとっても、システム・サービスを横断するID連携や権限設計、ガバナンス管理を実現できるIDaaSは、「管理者=お守り役」から「全体最適を設計・推進する役割」への変化を支える、強力なソリューションとなるはずです。

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