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IT部門をビジネスクリエイティブ集団に

システムの安定稼働、コスト削減、コンプライアンス強化など、IT部門の「作業」は年々増加しています。
しかし、新規事業や新技術の立ち上げなど、企業力強化のうえで不可欠なものは、IT部門の「知恵」です。
IT部門がビジネスクリエイティブ集団に生まれ変わるためのヒントやトレンド情報をご提供いたします。

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2025.06.24

 更新日:

2025.06.24

全2回 【事例紹介】他社は生成AIをどのように活用しているのか? 《連載:第2回》 新たな顧客体験を創出! 社外向け生成AI活用事例

新たな顧客体験を創出! 社外向け生成AI活用事例

生成AIをサービスや問い合わせ対応、プロモーションなどに活用することで、顧客体験の向上や新たな体験創出、さらにはコスト削減や事業成長などの効果が期待できます。第2回目となる今回は、そのような社外向け業務での生成AI活用事例を紹介します。

顧客問い合わせ対応における生成AI活用事例

企業にとって重要な顧客接点であるカスタマーセンターやコールセンターの業務でも、生成AIの活用は進んでいます。

明治安田生命保険相互会社では、2024年1月より、コミュニケーションセンターにおける顧客応対メモの作成業務を生成AIによって自動化しています。従来、この業務では、担当者が顧客との通話終了後に手作業で照会内容を要約・記録していましたが、同センターでの年間の照会対応件数は約55万件にも及び、大きな負担となっていました。

この課題に対応するため、同社はAIカンパニーの株式会社ELYZAと連携し、日本語に特化した生成AIに過去の応対メモを学習させ、通話のテキストデータから自動でメモを生成するシステムを導入。業務にかかる時間を約30%削減するとともに、担当者によるメモの表現の統一や内容の分かりやすさの向上を図っています。

参照:生成AIを活用した社内業務の効率化・高度化の取組開始について|明治安田生命保険相互会社

住信SBIネット銀行株式会社では、顧客対応業務の効率化を目的に、2024年8月よりカスタマーセンターの電話窓口に生成AIを活用したバーチャルアシスタントを導入しました。これにより、顧客からの問い合わせに対して、対話型AIが自動で応答する仕組みを構築しています。

バーチャルアシスタントの特長は、顧客の音声から用件を認識し、内容に応じた適切な対応を即座に実行できること。例えば、問い合わせに関連する情報が掲載されたWebサイトのURLをSMS(ショートメッセージサービス)で送信するほか、人による対応が必要と判断した場合には、カスタマーセンターのオペレーターにつなぐことが可能です。

参照:住信SBIネット銀行、GPT-4oモデル「生成AI」を活用し、電話自動応対を実現(住信SBIネット銀行株式会社)

プロモーション・ブランディングにおける生成AI活用事例

これまで、企業がプロモーションやブランディングに起用するイメージキャラクターといえば、芸能人や著名人、あるいはオリジナルキャラクターが一般的でしたが、近年では、生成AIによって作成されたAIタレント(バーチャルヒューマン)を広告やWebサイトに活用する企業も増えています。

株式会社宮崎銀行は2024年11月より、オリジナルAIタレント『ドリームAI(アイ)&ひなたこ』の2人を採用。同行の専属モデルとして、ホームページやテレビCM、ラッピングバスなどに起用しています。

宮崎銀行ホームページ
宮崎銀行ホームページ

参照:生成AI技術を活用したオリジナルAIタレントの起用について|株式会社宮崎銀行
参照:オリジナルAIタレントを起用した新イメージCMの放映開始について|株式会社宮崎銀行 参照:オリジナルAIタレントを起用したラッピングバスの運行開始について|株式会社宮崎銀行

イメージキャラクター以外でも生成AIを活用しているのが、株式会社パルコです。同社が2023年に展開した『HAPPY HOLIDAYSキャンペーン』のCMでは、人物・背景・ナレーション・音楽など、すべてが生成AIによって制作されています。

参照:パルコ初の生成AI広告「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」が公開!グラフィック・ムービー・ナレーション・音楽まで全て生成AIにて制作!|株式会社パルコ

ブランド体験の提供に生成AIを活用している企業もあります。

日本コカ・コーラ株式会社は2023年3月より、同社コーヒーブランド『ジョージア』のブランド刷新に伴い、生成AIを活用したユーザー参加型コンテンツ『AIイラストメーカー』をキャンペーンサイト上で提供しています。

AIイラストメーカー - 毎ドラ部 presented by GEORGIA|日本コカ・コーラ株式会社
出典:AIイラストメーカー – 毎ドラ部 presented by GEORGIA|日本コカ・コーラ株式会社

『AIイラストメーカー』は、ユーザーが撮影した日常の写真を、プロのイラストレーターのタッチで描いた印象的なイラストに変換できるサービスです。同ブランドの「毎日って、けっこうドラマだ。」というキャンペーンメッセージを、体験として楽しめる仕掛けになっています。

また同年3月~8月には、講談社の人気コミックス7作品とのタイアップ企画『わたしが表紙ジェネレーター』も期間限定で実施。ユーザーのスマートフォンにある写真と、好きな漫画作品のフレームを組み合わせて、コミックの表紙のような画像を生成できるサービスとして話題を呼びました。

参考:「毎日って、けっこうドラマだ。」本日スタート! ドラマチックにイラスト化された日常の一コマを投稿する参加型体験コンテンツ 「毎ドラ部 presented by GEORGIA」開設|日本コカ・コーラ株式会社

BtoCサービスにおける生成AI活用事例

生成AIを活用することで、既存サービスの機能を大幅に向上させることが可能です。

ビズリーチ株式会社は2023年、同社が運営する転職サイト『ビズリーチ』の新機能として、『GPTモデルのレジュメ自動作成機能』を開発しました。これは、ユーザー(会員)がいくつかの簡単な質問に回答するだけで、最適な内容の職務経歴書を自動作成できる機能です。

この機能の大きな特長は、同社がこれまで蓄積してきたノウハウやデータに基づく独自のロジックで構成された指示を、生成AI(米OpenAI社の提供するGPTモデル)に与える点にあります。そのため、単なる経歴の整理にとどまらず、企業の採用担当者やヘッドハンターに対して効果的な内容のレジュメを自動生成することが可能です。

実際に試験導入時の検証では、同機能を使用して職務経歴書を更新した会員は、使用せずに更新した会員と比べて平均40%も多くのスカウトを受け取る結果となっています。

参照:ビズリーチ「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」を開発 東京大学マーケットデザインセンターと共同で、GPTツールの性能評価を発表|ビズリーチ株式会社

BtoBサービスにおける生成AI活用事例

BtoCに比べるとあまり目立ってはいないものの、BtoBのサービスでも着実に生成AIの活用は進んでいます。

旅行会社の株式会社JTBは、株式会社KIYONOと共同で、観光関連データを生成AIが自動で分析・レポートする観光事業者向けサービス『AIレポーター』を開発し、2025年4月より提供を開始しています。

同サービスでは、AIがDMP(データマネジメントプラットフォーム※)を通じて取得した各種データを学習・分析し、その結果を自動でレポートとして生成。予約・売上データの過去実績との比較に加え、各種データに基づく課題解決に向けた示唆の提示、さらには複数の予約情報や利用実績データから旅行者のペルソナ像をレポートすることなども可能です。

これにより、専門的な分析スキルのない観光事業者でも迅速かつ正確な意思決定に役立つ情報が得られ、データドリブン経営を推進することができます。

※DMP…社内外の多様なデータを統合・分析・管理するためのプラットフォーム

参考:JTBとKIYONO、生成AIによる新機能を共同開発~観光DX実現のカギ、データドリブン経営を支援する AIレポーティングサービスの提供を開始~|株式会社JTB 株式会社KIYONO

ロボットへの生成AI活用事例

生成AIの活用により、ロボットが人間と対話・協働できる新たな技術が登場しています。自動車部品メーカーの株式会社デンソーが開発したロボット制御技術『Generative-AI-Robot Technology』も、そうした取り組みのひとつです。

『Generative-AI-Robot Technology』は、生成AIに加え、音声認識技術と音声合成技術を搭載。従来のロボットのように事前にプログラムされた動作を繰り返しこなすだけでなく、人間との自然な会話や、状況に応じた動作判断(例:アームを動かすなど)を実行することが可能です。

現在はロボットのデモイベントでの活用が中心のようですが、販売員として人間のスタッフと一緒に接客をおこなったり、バリスタとして客の好みに合わせて豆をブレンドしたコーヒーを提供したりするなど、さまざまな場面でその高度な能力を発揮しています。

参照:デンソー、生成AIを活用したロボット「販売員」が人と一緒に働くデモイベントを開催|株式会社デンソー
参照:デンソー、生成AIロボット「Jullie」がバリスタとして働くデモイベントを開催~対話などを通じて好みに合わせた最適なブレンドコーヒーを提案~|株式会社デンソー

以上、2回にわたって国内企業の生成AI活用事例を紹介してきました。当然ながら、今回取り上げた事例はあくまで一部に過ぎません。また、生成AIの可能性や進化のスピードを考えると、その活用領域は今後ますます広がっていくことが予想されます。

生成AIを業務やサービスに効果的に活用するためには、社員のリテラシー向上や活用アイデアの創出を促進する環境整備が重要です。実際に今回紹介した企業でも、社内研修やアイデアコンテスト、社内コンペなどの取り組みを、全社的に実施している企業は少なくありません。自社での生成AI活用を検討している企業は、ぜひこうした取り組みも参考にしてみてください。

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SmartStage編集部

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