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IT部門をビジネスクリエイティブ集団に

システムの安定稼働、コスト削減、コンプライアンス強化など、IT部門の「作業」は年々増加しています。
しかし、新規事業や新技術の立ち上げなど、企業力強化のうえで不可欠なものは、IT部門の「知恵」です。
IT部門がビジネスクリエイティブ集団に生まれ変わるためのヒントやトレンド情報をご提供いたします。

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2025.06.10

 更新日:

2025.06.10

全2回 【事例紹介】他社は生成AIをどのように活用しているのか? 《連載:第1回》 業務効率化の参考に!社内向け生成AI活用事例

新たな顧客体験を創出! 社外向け生成AI活用事例

『ChatGPT』の登場からまだ数年ながら、急激なスピードで進化を続けている生成AI。いまだ多くの企業が限定的な活用にとどまっているものの、先進企業では早くも独自のシステムや革新的なサービスを生みだし、新たな成長や競争力強化につなげています。

IT部門での生成AIの活用法については、以前『ヘルプデスク、システム開発でも活用が進む生成AI』と『生成AIが変えるシステム運用保守とセキュリティ』という記事で取り上げてきました。今回は情報システム部門の業務に限らず、国内企業の生成AI活用事例を紹介します。まず第1回目となる今回は、人材育成や商品企画、マーケティング実務など、社内業務での事例について解説します。

Webサイト制作における生成AI活用事例

生成AIの活用において先進的な取り組みをおこなっている株式会社ベネッセホールディングスは、Webサイト制作への導入にも早くから着手し、協力会社と共同でPoC(概念実証)を実施。2023年4月にその取り組みを発表しています。

同社が生成AIを活用したのは、コピーやテキストのライティング業務です。Webに最適なコピーを自動生成するAIを独自に開発し、担当者のスキルに大きく左右されるコピーのクオリティを均質化。作業工数の削減に加え、短期間でわかりやすく適切なコピーを制作できるようになりました。

参照:生成AIを活用したWebサイト制作・運用改革によりコスト4割削減、制作期間を半分以下に短縮 Webサイト業務プロセスを抜本的に改革、新体制にて運用を開始|株式会社ベネッセホールディングス

人材育成における生成AI活用事例

意外なところでは、若手社員などの人材育成にも生成AIが活用されています。

大東建託株式会社は営業担当者の育成を支援すると独自システム『生成型AI課長』を開発し、2025年4月より導入を開始しています。

『生成型AI課長』は、生成AIが顧客(不動産オーナー)役となって対話するロールプレイング型の研修ツールで、人間の代わりにAIと営業トークを実践できる点が大きな特長です。同社は2024年に、あらかじめ設定したシナリオに沿ってセールストークを習得する『台本型AI課長』というシステムを導入していましたが、新たに開発した「生成型」では、シナリオが不要で、より自由度の高い対話形式の研修が可能となりました。

AIは、設定された顧客の年齢、興味関心、性格といった属性情報をもとに、多様で柔軟な反応を返します。こうした機能により、ユーザーは顧客の心理や要望を読み取る力を養いながら、質問への的確な応答力や臨機応変な対応力を実践的に身に付けることができます。

参照:人工知能を活用した独自システム「生成型AI課長」を4月から導入 AI技術で営業担当者の育成を支援し提案の質・スピードを向上|大東建託株式会社

他に人材育成では、コールセンターのオペレーター研修用シナリオの作成に生成AIを活用している企業もあります。

ペルソナ設定・活用における生成AI活用事例

ペルソナとは、ビジネスでは年齢や性別、ライフスタイルなどの属性を設定した“架空の顧客像”を指し、商品開発やマーケティング活動の精度向上のために活用されています。まだまだ実証実験段階ではあるものの、こうしたペルソナの設定に生成AIを活用する取り組みも始まっています。

キリンホールディングス株式会社では、缶チューハイの新商品開発において、商品コンセプトの検討段階で生成AIによるペルソナを導入しています。従来は、社内での仮説立案と顧客インタビューを重ねながらコンセプトを練り上げる手法が主流でしたが、多くの時間がかかるため、開発期間が長期化する傾向がありました。

こうした課題を解決するため、同社は過去のインタビュー調査から得た顧客の声を生成AIに学習させ、『AIペルソナ』を構築。新たな商品コンセプトやフレーバーなどについて、顧客インタビューを実施する前にAIから顧客インサイトを抽出することで、仮説の精度と立案スピードの両立につなげています。

参照:生成AIをキリンビールのマーケティングに実装する検証を開始|キリンホールディングス株式会社

ペルソナ設定・活用における生成AI活用事例(イメージ)

ユニークな取り組みをおこなっているのが、日本航空グループのクレジットカード会社、株式会社JALカードです。同社は2024年10月から2025年1月にかけて、マーケティング施策の高度化を目的とした実証実験を実施し、その中で生成AIを活用してJALカードの利用傾向などに基づいた複数の『AIバーチャル顧客(会員ペルソナ)』を作成しました。

特に注目すべきは、そのペルソナの活用方法です。同社は、通常のように人間がAIに質問するのではなく、『AIバーチャル顧客』同士での会話やグループディスカッションを実施。そこから販促対象商品に関心を持つ顧客の傾向や、効果的なDM(ダイレクトメール)のタイトルといった、マーケティング施策に活用できる示唆を抽出しました。

さらに、こうした取り組みから導き出されたターゲットを対象にダイレクトメールを送付した結果、従来のターゲットよりも購買率が3.0%向上するという成果が得られたということです。

参照:「AIバーチャル顧客」同士の会話からJALカード会員への効果的なマーケティング施策を導出|株式会社JALカード、株式会社NTTデータ

アンケート分析における生成AI活用事例

AIの自然言語処理(日常的な話し言葉や書き言葉を理解・生成する技術)を活用することで、アンケート調査にかかる時間を大幅に削減することが可能です。

株式会社三菱総合研究所では、住民意識調査において生成AIを用いた分析を試験的に実施しました。生成AIが担ったのは、自由記述式の回答1,000件を、あらかじめ指定された複数のカテゴリーに分類し、さらに各カテゴリーの代表的な意見の抽出と要約をおこなう作業です。

その結果、分類・要約の精度は通常の担当者による作業と変わらず、所要時間は10分の1以下にまで短縮されました。分類作業においては、プロンプト(AIに対する指示文)を最適化することで、手動による分類をしのぐ精度を実現できることも確認できたということです。

参照:生成AIで自由記述式アンケートを自動分析、手動の1/10の時短を実現|株式会社三菱総合研究所

イオン株式会社は、社内向けの景気動向調査『イオン景気指標』におけるアンケート分析に生成AIを活用。『イオン景気指標』とは、全国のイオングループ店舗の店長を対象に、景況感や売上傾向に関するアンケートを月次で実施し、その回答内容と各店舗の売上データ(POSデータ)を掛け合わせて、自社に関わる景気の動きを可視化・分析する取り組みです。

同社はこの調査に生成AIを導入し、アンケートの自由記述欄を高度に分析する仕組みを構築しました。これにより、数百~数千件に及ぶコメントの要約や主要なトピックの抽出、前月との比較などを瞬時におこない、物価や景気、消費動向、購買行動などの定性的な傾向や変化を、地域単位から全国レベルまで効率的に把握することが可能になっています。

参照:「生成AIのWebアプリ」、「景気指標」など独自の開発を手掛けるイオンのデータ専門組織の「脱PoC」ストーリー|AEON TECH HUB(イオン株式会社)

商品企画・開発における生成AI活用事例

生成AIは瞬時に大量のデータ解析やアイデアの創出をおこなえるため、商品企画や商品開発の効率化にも効果的です。

セガサミーホールディングス株式会社は、商品企画・開発の効率化と精度向上を目的に、「自社製品画像を学習した画像生成AI環境」と「アンケート分析機能を有した生成AI環境」を構築。2024年5月より、玩具の開発・製造・販売をおこなう株式会社セガ フェイブ Toysカンパニーに展開しました。

実際の製品を使って実証実験をおこなったところ、デザイン案の制作では、自社製品の画像を学習させたAIが短時間でバラエティ豊かなデザイン案を迅速に生成。デザイン案の数は従来の100倍に達し、デザイナーはより高付加価値な業務に集中できるようになりました。

一方、アンケート分析では、数万件に及ぶ自由記述回答をもとに、顧客の意見や感情を自動で抽出・分類。さらに製品改善の提案をおこなうことも可能です。これにより、分析業務は従来と比較して約80%の効率化を実現しています。

参照:AI×エンタメでさらなる感動体験を創出!! 玩具のデザイン案・アンケート集計にAIを導入|セガサミーホールディングス株式会社

続く第2回記事では、社外向け業務における生成AI活用事例を紹介します。

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SmartStage編集部

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