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2024.11.05
更新日:
2024.11.05
全2回 IT部門の永遠の課題?自社の社員のITリテラシーを向上させる方法 《連載:第1回》 早急に解決すべき「社員のITリテラシー低すぎ」問題
非IT社員のITリテラシーの低さに悩みつつも、どうすることもできず、手をこまねいたままのIT部門(情シス部門)は多いのではないでしょうか。とはいえ、この「従業員のITリテラシー低すぎ問題」は実は大きなリスクをはらんでおり、放置しておくと想像以上の不利益を被る恐れがあります。では、それを防ぐためには何をすれば良いのでしょうか?
「ITリテラシー」に含まれる知識・スキルとは?
解決策を紹介する前に、まず明確にしておくべきことがあります。それは、「ITリテラシー」という言葉の定義です。多くの人は、なんとなく「パソコン操作やインターネットに関する基本的な知識・スキル」といった意味で使っているかもしれませんが、厳密に言えば正しくありません。実際は、もっと幅広い知識・スキルを指す言葉なのです。
例えば、厚生労働省が2018年に公表した資料では、「基礎的ITリテラシー」について次のように定義付けされています。
『現在入手・利用可能なITを使いこなして、企業・業務の生産性向上やビジネスチャンスの創出・拡大に結び付けるのに必要な土台となる能力のこと。いわゆるIT企業で働く者だけでなく、ITを活用する企業(ITのユーザー企業)で働く者を含め、全てのビジネスパーソンが今後標準的に装備することを期待されるもの。
具体的には、
【1】世の中にどのようなITがあり、それぞれどのような機能・仕組みを有しているか、どのような場面で活用されているかについての理解。
【2】企業・業務の課題解決場面に有用なITを選定し、そのITを操作して目的に適う情報を取得・分析・表現し、課題解決に繋げる能力。
【3】ITを安全に活用するための情報セキュリティやコンプライアンスの知識。』
※出典:平成29年度基礎的ITリテラシーの習得カリキュラムに関する調査研究報告|厚生労働省
つまりITリテラシーには、パソコン操作やインターネット以外にも、ネットワーク、システム、ソフトウェア、データ活用、情報リテラシーに関する知識・スキルも含まれ、しかもそれらを専門的とまではいかないまでも、最低限ビジネスや業務に生かせるレベルで習得していなければいけないということです。
IT部門に及ぼす影響
<p当然ながら、一般的に非IT系社員はこのようなITリテラシーを備えていません。恐らく、そのしわ寄せを最もダイレクトに受けているのがITヘルプデスク業務でしょう。パッと思い付くだけでも、「ちょっと調べればわかるような初歩的な問い合わせが多数寄せられる」「チャットで数回やりとりすれば解決するような問題なのに対面での対応を求められる」といった被害(?)が浮かびます。
もちろん、ヘルプデスクの仕事はユーザーのトラブルを解決することです。しかし、こうした(言ってしまえば)無駄な問い合わせを寄せる社員ほど、自身のITリテラシーの低さに疑問を抱かず、IT部門のことを「問い合わせに何でも答える部署」「難しい操作を代わりにやってくれる部署」と思い込んでいる傾向があるのは困りものです。
ヘルプデスクはあくまでユーザーの“サポート”役であり、“おもてなし”役ではありません。なにより問い合わせ対応に時間を奪われて、本来IT部門が取り組むべき重要な仕事、例えばIT戦略の策定・推進などに注力できなくなるのは大きな問題です。
また、社員のITリテラシーが低すぎると、ここぞという時にスムーズな意思疎通を図れないことも見過ごせない課題です。ビジネスにおいてIT・デジタル及びデータの活用が当たり前になった昨今、あらゆる場面でIT部門と他部門との密接な連携・協働が求められるようになっているからです。
企業存続に関わるリスクも
もう1つ、社員のITリテラシーに関して知っておきたいのは、それがあまりに低すぎると、企業の存続に深刻な影響を与えかねないということです。具体的には大きく次の2つのリスクが考えられます。
(1)情報漏えい・紛失などの情報セキュリティリスク
情報セキュリティリスクの対策としては専用のツールやシステムを導入することが大切ですが、一方で、近年多発している企業のセキュリティ被害・事故の事例を見てみると、ある程度のITリテラシーを備えた組織であれば被害を未然に防いだり最小限におさえたりできるケースも少なくありません。
言うまでもなく、情報漏えい・紛失は重大なコンプライアンス違反であり、企業の社会的信用の低下や業績悪化につながる恐れもあります。同様にSNSを積極的に活用している企業の場合は、こちらも頻発している炎上のリスクを抑えるために、担当者の情報モラルやネットリテラシーの習得・向上が必須です。
(2)情報漏えい・紛失などの情報セキュリティリスク
業務のデジタル化、あるいは組織・ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、今や企業が競争力を確保するために欠かせない取り組みと言っても過言ではありません。しかし、そのどちらに関しても、多くの企業がお決まりのように課題として挙げているのが「社員のITリテラシーの低さ」なのです。
中にはDXをスタートさせたものの、Excelやチャットツールの教育から始めなければならない企業もあるのだとか。高齢化などの影響によりIT人材が大幅に不足するという「2025年の崖」(経済産業省『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』)がすぐそこまで迫っている状況にもかかわらず、です。
とはいえ、ここでいくら現状を嘆いたところで何も解決はしません。とにもかくにも社員のITリテラシー向上は喫緊の課題。次回の第2回目記事では、そのために有効な取り組みを他社の事例と併せて紹介します。