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2024.09.24

 更新日:

2024.09.24

全2回 イノベーション創出のための新発想法!「SFプロトタイピング」とは? 《連載:第2回》 小説からアニメまで! 国内企業のSFプロトタイピング事例

小説からアニメまで! 国内企業のSFプロトタイピング事例

SFプロトタイピングは、社会やテクノロジーの未来を描いたSF作品を通してイノベーティブなアイデアを生み出すための取り組み。今回はSFプロトタイピングを実施している日本の企業や組織が実際に創作した作品を紹介していきます。

SFプロトタイピング事例【1】
〜清水建設株式会社のSF小説〜

大手ゼネコンの1つであり、DX推進企業としても知られている清水建設株式会社。同社は、著名なSF作家が多く所属する一般社団法人日本SF作家クラブの協力を得て、『建設的な未来』というSFプロトタイピングのコラボレーション企画を進めています。

詳しい企画内容や取り組み、創作作品などは、同社Webサイト『テクノアイ 清水建設の技術』に設けられた企画用ページ『コラボレーション企画 建設的な未来』で公開されており、誰でも読むことができます。

コラボレーション企画 建設的な未来|清水建設株式会社
出典:コラボレーション企画 建設的な未来|清水建設株式会社

簡単に説明すると、2019年~2021年にはSF作家によって書かれたショートショートを定期的に掲載。ダンボール製の建物が立ち並ぶ仮設都市、移動可能で地震や台風とは無縁の海上都市、地球とは別の星の都市などを舞台とした、短いながらも読者の想像力を刺激する作品が並んでいます。

さらに2022年からは第2フェーズとして、同社のエンジニア視点で未来構想を作り上げる『エンジニアによる未来構想』という企画をスタート。実際にエンジニアが参加したワークショップの様子や、そこで生まれた未来の世界像をもとにプロの作家が創作した小説とイラスト作品などが掲載されています。いずれもSFプロトタイピングに取り組むうえで参考になるコンテンツばかりです。

SFプロトタイピング事例【2】
〜日産自動車株式会社の映像作品〜

第1回目記事でも述べたように、SFプロトタイピングで創作されているのは小説だけではありません。例えば日産自動車株式会社では、専門家をファシリテーターに招いて「40年後の道」をテーマにSF小説を創作し、さらにその世界観を表現した映像作品『真冬のサイファー盆踊りfeat.車と車椅子』を自社のYouTube公式チャンネルで公開しています。

「真冬のサイファー盆踊りfeat.車と車椅子」|日産自動車株式会社

作品の舞台は西暦2064年。視界にさまざまな情報を映し出すディスプレイ内蔵のコンタクトレンズ、健康状態をモニタリングするセンサー付き靴下など、いかにも未来を感じさせる技術が登場する一方で、現在と変わらない外見の自動車、冬に開催される盆踊りイベントなど、新しさと古さが奇妙に入り混じった独特の未来像が鮮やかな映像で表現されています。

SFプロトタイピング事例【3】
〜東京都下水道局の多ジャンル作品〜

作品制作をプロに頼らない、ユニークな取り組みをおこなっているのが東京都下水道局です。

若い世代の下水道への関心を高めるためのプロジェクト「東京地下ラボ by 東京都下水道局」を実施している同局は、2021年、公募で集まった大学生7組14名とSFプロトタイピングのワークショップを実施。そこで「2070年の下水道がある世界」をテーマに参加学生らが制作した作品を、ホームページの『下水道の可能性を、想像力によって拡張する』というページで公開しています。

一見して、小説、日記、漫画、都市計画、アニメーションなど、ジャンルの多様さに驚かされますが、それぞれの作品に描かれている2070年の未来像もユニークです。例えば、ある作品の舞台は、下水道に流れ込む生活排水から個人の健康情報が収集され、病気の早期発見や健康維持に必要な商品・サービスをレコメンドされる社会。そこでは個人情報漏出を防ぐための情報保護も下水道局の仕事になっている、といった次第です。

同局広報サービス課のYouTube公式チャンネルでは、学生たちの作品やプレゼンを見ることができます。

Mystic Drops|東京都下水道局広報サービス課

※参考:下水道の可能性を、想像力によって拡張する|東京都下水道局
※参考:現役大学生14名がSFプロトタイピングに挑戦!「2070年の下水道がある世界」を創造した3Dアニメ、CG模型、小説など全7作品を初公開|東京都下水道局

生成AIを活用した試みも

ここまで紹介してきたように、SFプロトタイピングでは小説を中心に、さまざまなジャンルの作品が創作されています。ただし、勘違いしてはいけないのは、作品を完成させることがSFプロトタイピング本来の目的ではないということです。あくまで目的は、作品で描かれている未来像から逆算して、革新的なビジネスアイデアを創出することに他なりません。

そのため、SFプロトタイピングのプロセスにおいて作品は手段であり、もっとも重要なのは作品完成後のディスカッションである、という意見もあるほどです。また、作品が完成するまでの過程、例えばワークショップでのブレインストーミングなども、社員が未来を自分ごと化して考えたり、柔軟な発想力を養ったりと、イノベーションを生み出すために欠かせないスキルとマインドを身に付ける絶好の機会になります。

SFプロトタイピングはIT部門が中心となるべき取り組みではありませんが、エンジニア視点で未来像を試作した清水建設株式会社の事例もあったように、IT・デジタル技術やガジェットに関する知識は、プロジェクトを効果的に進めていくうえで役に立つことは間違いないでしょう。

最近では、プロの作家や専門家の協力を得ずに、対話型の文章生成AIを使ってSFプロトタイピングに取り組む事例や、そのための有効なプロンプト(生成AIに与える指示文)を紹介する記事をネット上で目にする機会が増えています。今回の記事でSFプロトタイピングに興味を持った方は、これからのIT部門の在り方や必要な取り組みを考えるために、一度部署で試してみるのも良いかもしれません。

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