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2024.06.30

 更新日:

2024.06.25

全2回 DX時代のビジネスで求められるERPとは? 《連載:第2回》 “攻めのIT”活用を支える「ポストモダンERP」と「コンポーザブルERP」

なぜ従来のERPではこれからのビジネスに対応できないのか?

従来のモノリシックなERPパッケージでは、スピードと迅速性が求められるこれからのビジネスに対応していくことが困難。そこでこの第2回目記事では、「DX時代のERP」として先進的な企業で活用が進んでいる新たなERPアーキテクチャを2つ紹介します。

ポストモダンERP

「ポストモダンERP」は2014年にアメリカのITリサーチ会社ガートナーが提唱した概念です。

ポストモダンERPの大きな特徴は、様々な業務機能を密結合させて単一のシステムを構築する従来のERPパッケージと違い、複数の機能をAPI連携などでゆるやかに疎結合させて構築するところです。より具体的には、下図のようにERPの機能は会計管理や販売管理などのコア業務に絞ってスリム化し、その他の不足する機能や、ビジネス環境の変化によって更新や入れ替えがたびたび発生すると想定される経費精算や営業支援などの機能は、SaaS型クラウドサービスのようなアプリケーションで補完する形になります。

ポストモダンERPの基本的な構成(イメージ)

ポストモダンERPの基本的な構成(イメージ)

ポストモダンERPのメリットとしては次の3つが挙げられます。

・運用負担とコストの削減

ERP機能のスリム化とクラウドアプリケーションの活用により、従来のERPパッケージよりもシステム構築や保守運用に掛かる負担とコストを削減することができます。必要な機能から段階的に導入できるのも利点です。

・ブラックボックス化の抑制

システム構造がシンプル化されることで複雑化やブラックボックス化を抑制できます。また、API連携などによって複数ベンダーのシステムを適材適所(=Best of Breed)で活用できるため、過剰なアドオン開発やベンダーロックインを回避することも可能です。

・柔軟性の向上

ポストモダンERPの何より大きなメリットは、システムの組み合わせにより、環境やニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応できることです。しかも連携できるのは、業務の品質や効率の向上を目的としたシステムだけではありません。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、インメモリーデータベースなど、他社との差別化やビジネス変革につながる最新テクノロジーを取り込むことも可能です。

例えばAIとの連携により、「過去の販売実績データを学習させて需要予測を立てる」といった活用が考えられます。IoTを活用すれば製品の使用状況などのデータをリアルタイムで収集できるので、遠隔保守サービスやAI解析による予知保全サービスといった新サービスの創出も期待できます。

インメモリーデータベースは、データを内部メモリー(RAM)上で処理するデータベース管理システムです。HDD(ハードディスク)やSSD(補助記憶装置)へのアクセスが不要なので、応答時間を大幅に短縮できるのがメリット。音声や画像などの非構造化データも扱えるため、ビッグデータ分析に最適です。

コンポーザブルERP

現時点(2024年6月)で最新型のERPが、ポストモダンERPと同じくガートナー社が2020年に提唱した「コンポーザブルERP」です。「コンポーザブル(composable)」は「組み替え可能な」を意味する言葉で、クラウドベースでSaaSなどを疎結合で組み合わせて構築するERPシステムを指します。

「SaaSを組み合わせて構築」と言うと、一見ポストモダンERPと変わらないように思えますが、コンポーザブルERPの場合、コアERPにもSaaSを活用する点が大きく異なります。コンポーザブルERPの概念が生まれた背景として、ポストモダンERPの提唱以降、SaaSが急速に進化し、様々な領域に進出してきたことが影響していると言われています。

コンポーザブルERPのメリットは、ポストモダンERPよりも柔軟性と拡張性が高く、細かいビジネス要件に対応すること。また、単にSaaSを疎結合で組み合わせるだけではデータの整合性やリアルタイム性に問題が生じる恐れがありますが、コンポーザブルERPでは以前『SmartTag』の記事でも紹介した「データファブリック」の技術を活用することで、ユーザー側からはまるで一つのシステムを利用しているかのように正確かつ迅速なデータ活用を実現します。

求められるユーザーの意識改革

以上、「次世代型ERP」とも呼ばれている2つのERP、ポストモダンERPとコンポーザブルERPを紹介してきました。どちらも従来のERPパッケージにはない機能を備えた革新的なアーキテクチャですが、それゆえ、有効活用するためにはユーザー側にいくつかの意識改革が求められます。

そのうちの一つが「Fit&Gap」から「Fit to Standard」への意識改革です。平たく言うと、「Fit&Gap」とはカスタマイズを重ねてシステムを業務に合わせる考え方、「Fit to Standard」は業務をシステムの標準機能に合わせるアプローチのこと。言うまでもなく、前者は従来のERPパッケージに、後者はポストモダンERPとコンポーザブルERPに対応します。もちろん業務を100%システムに適合させるのが現実的でないケースもありますが、DX時代の主流とも言われている「Fit to Standard」のアプローチを浸透させることなしに、新しいERPの効果を最大化することはできません。

ERPシステムの位置付け、または価値に対する意識変革も必須です。第1回目記事の冒頭で、ERPシステムは「データを一元的に管理・記録するもの」と説明しましたが、ポストモダンERPとコンポーザブルERPに関しては、そうした捉え方ではあまりに不十分です。先述の通り、AIなどビジネス変革や付加価値創出を実現できる技術を活用できるのも2つのERPの強み。それぞれのポテンシャルを活かすためには、「守りのIT」だけではなく「攻めのIT」としての活用を意識することも重要でしょう。

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SmartStage編集部

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