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2024.06.11

 更新日:

2024.06.11

全2回 DX時代のビジネスで求められるERPとは? 《連載:第1回》 なぜ従来のERPではこれからのビジネスに対応できないのか?

なぜ従来のERPではこれからのビジネスに対応できないのか?

「データに基づく経営」が当たり前になった現在、ERPはビジネスを支える基盤であり、企業に欠かせない存在であると言っても過言ではありません。しかしそれゆえに、時代と環境に即した最適なシステムを活用する必要があります。今回は従来の一般的なERPシステムの問題点から、次世代のソリューションとして注目されている新たなERPまで、IT部門なら知っておきたいERPの基礎知識を紹介します。

そもそもERPとは何か

まずはERPについて簡単におさらいしておきましょう。

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略称で、直訳すると「企業資源計画」。企業の資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に関する情報を一元的に管理し、組織全体の効率化・最適化に活かす取り組みを指します。

そのERPを実現するために欠かせないのがERPシステムです。ERPシステムにはいくつかのタイプがありますが、共通するのは「会計管理」「販売管理」「在庫管理」「生産管理」「人事・給与管理」などの複数の基幹システムのデータを、データベース上に統合して記録・管理する機能を備えていること。日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれています。

ERPという言葉が日本に普及しはじめたのは1990年代。それ以前の情報システムは、いわゆる「個別分散型」、つまり部門ごとに管理系のソフトウェアを導入する形が一般的でした。この手法の問題点は、部門間でデータ処理の自動連携ができないこと。そのため、「営業部門と経理部門の数字が違う」というようなデータの乖離が生じやすく、必要なデータを正確かつタイムリーに把握できないという課題がありました。

そこで注目を集めたのが、ERPに必要な機能をワンストップで提供するパッケージソフト「ERPパッケージ」です。

ERP以前の情報システムとERPパッケージ

ERP以前の情報システムとERPパッケージ

ERPパッケージはオンプレミス型(現在はクラウド型もあり)で、それまで分散していた基幹システムを密結合させ、単一の大規模なシステムとして統合したERPでした。こうした仕組みから、ERPパッケージによって構築されたERPは「モノリシック(=一枚岩の)型ERP」や「統合型ERP」とも呼ばれています。

それまでの個別分散型のシステムと比較して、ERPパッケージには次の2つのメリットがあります。

・業務効率の向上

異なるシステム間でのデータ処理が自動連携される(例えば販売管理システムに入力した受注情報が会計システムへ即時に反映される)ので、部門ごとのデータの乖離や二重入力がなくなります。

・意思決定の迅速化・精度向上

データが統合され業績がリアルタイムで可視化されるため、経営判断や意思決定の迅速化・精度向上が期待できます。

1990年代後半~2000年代初頭には大企業を中心にERPパッケージの導入が加速し、一躍「ERPブーム」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せました。しかし、システム自体の重要性は変わらないものの、時代の流れとともに次第に課題やリスクが立ち現れてきたのです。

ERPパッケージの問題点

 

ERPパッケージの問題点としてしばしば挙げられるのが、現在の変化の激しいビジネス環境に対応していくには、あまりにも柔軟性と俊敏性に欠けていることです。例えば、各機能が密結合していることはデータの整合性やリアルタイム性を確保するうえでは効果的ですが、一方で改修が難しく、新機能の開発・テストに手間とコストが掛かるという弱点につながります。

また多くの企業で、システムを自社業務にフィットさせるために標準機能を大幅にカスタマイズしていることや、独自機能を追加するためにアドオン開発を繰り返していることも問題です。一部の担当者以外は理解できないほどシステムが複雑化・ブラックボックス化してしまい、バージョンアップに対応できない、特定のベンダーに依存する「ベンダーロックイン」に陥る、といった状況を招きやすくなるからです。

ERPパッケージが抱えている課題はこれだけではありません。数年前から多くの導入企業を悩ませているのが、いわゆる「SAP2027年問題」です。

「SAP2027年問題」とは、国内で2000社以上が導入しているSAP社のERP製品『SAP ERP 6.0』の標準サポートが2027年末に終了し、新機能の追加や修正プログラム、システム改善といった保守サービスを受けられなくなる事態を指します。延長保守料を支払えば保守期限を2030年末まで延長することは可能ですが、いずれにせよユーザー企業が取るべき道としては次の3つが考えられます。

  • 2015年にリリースされたSAP ERPの最新版『SAP S/4HANA(R)』へ移行する
  • 標準サポートなし、またはSAP社以外の企業の保守サポートを利用して既存の製品を継続利用する
  • 他社のERP製品に切り替えてシステムを再構築する

ちなみに、こうしたERPを始めとする基幹システムの複雑化・ブラックボックス化やSAP製品の保守サポート期間終了といった問題は、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』の中でも、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するために早急に解消すべき課題として取り上げられています。裏を返せば、それだけERPがビジネスにおいて重要であるということではありますが、とにもかくにも現在、ERPシステムの在り方を見直すべきタイミングが訪れているということは間違いないでしょう。

続く第2回目の記事では、従来のERPパッケージに代わるソリューションとして期待されている、新たなERPシステムの形を紹介します。

※SAP及びSAP S/4HANAは、ドイツ及びその他の国におけるSAP AGの商標または登録商標です。

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