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2023.09.26

 更新日:

2023.09.26

全2回 企業が避けて通れない「先端IT人材」不足問題を考える 《連載:第2回》 企業が「先端IT人材」を育成するために必要な取り組みとは?

企業が「先端IT人材」を育成するために必要な取り組みとは?

AIやIoT、5Gなど、ビジネスに様々なメリットをもたらすテクノロジーが登場している一方で、その担い手となる「先端IT人材」に関しては今後大幅に不足するだろうと予測されています。前半記事ではその課題として「従来型IT人材」の問題点を取り上げましたが、要因はもちろんそれだけではありません。今回はもう一つの大きな問題と、先端IT人材を増やすために必要な企業の取り組みを事例と併せて紹介します。

企業がスキル向上の障壁に

前回、「従来型IT人材の多くはスキル習得の意欲に乏しい」という独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査結果を紹介しましたが、かといってそう決めつけてしまうのは拙速ですし、そのことを先端IT人材の数が少ない理由にするのも見当違いです。なぜなら同じIPAの調査において、実際にIT人材がITスキルを発揮する場所、つまり企業側にも大きな問題があることが明らかになっているからです。

例えば、『デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)』(2023年4月)の企業を対象としたアンケートでは、事業会社の60%以上が「先端スキルを学んでもそれを活かせる場が少ない」、80%以上が社内のIT人材を評価・把握する基準について「ない」と答えています。また、同資料のキャリア形成上の悩みに関する質問については、先端IT従事者の32.2%、非先端IT従事者(従来型IT人材)の28.5%が、所属企業に対して「キャリアアップのための計画的な配置・育成がされていない」と回答しています。  

このように、仮にIT人材がスキル習得の必要性を感じても、実際に使う機会がない、評価されない、キャリアアップに繋がらないという環境であれば、モチベーションを維持・向上できないのは致し方ありませんし、ある意味、企業がIT人材の成長を阻む障壁になっているとも言えるのです。

IPAは前回も取り上げた『デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査』の中で、「デジタル化がもたらす第4次産業革命が進む中で、産業構造や消費者行動・考え方が大きく変化しているにも関わらず、企業の方向性と個人のあるべき姿が描けていない」ことが、こうした状況をもたらした本質的課題であると述べています。そして企業側の課題解決=先端IT人材育成の方向性として、次の5つの施策を挙げています。

  • めざすデジタル経営の姿や長期的ビジョンの提示
  • そのために必要な人材プロファイルの明示
  • 能力を正当に評価し処遇する仕組み作りや、リスクにチャレンジする組織文化の醸成
  • 新技術の積極的な採用による業務生産性向上や継続的にスキルアップできる“場”の提供
  • デジタルな社風の定着と全社員のリテラシー向上(デジタルミドル層の拡大)

とはいえ、これだけでは漠然としてイメージしづらいかと思いますので、実際に他の企業はどのように先端IT人材の育成に取り組んでいるのか、事例を紹介します。

企業の先端IT人材育成事例

JFEスチール株式会社の先端IT人材育成事例

大手鉄鋼メーカーであり、IoTやAIなどの先端技術を積極導入してテクノロジー革新を推進していることでも知られているJFEスチール株式会社。同社は2018年に、データサイエンティストの人員拡充と個人のスキルアップを目的として、社内で育成プログラムをスタートさせています。

自社育成を始めた理由は、人材獲得競争の激化により外部から高度専門人材を獲得するのが困難であること、さらに実際の製造・研究開発現場で効果的にデータを応用するためには、鉄鋼業独自のフィールドに関する知識も不可欠だから、とのこと。育成対象者には、事務系などの非ITの社員も含まれています。

プログラムは受講者に求めるレベルに応じて4つの階層に分かれており、製造部門エンジニアの場合は、“OJT主体の実課題解決型教育”や“研究所への派遣”といった実践的かつ専門的なカリキュラムが用意されています。既に2020年度末時点で350人のデータサイエンティスト育成を達成しており、2024年度末には600人へ増員すること目標に掲げています。

※参考:社内データサイエンティスト養成のための階層別・系統的教育体制を構築|JSEスチール株式会社
※参考:DX REPORT 2021|JFEホールディングス株式会社

ダイキン工業株式会社の産学連携による先端IT人材育成事例

世界最大の空調機器メーカーであるダイキン工業株式会社は、大阪大学の全面的な協力を得て高度IT人材の育成に取り組んでいます。同社が自社育成に取り組む理由は、新しくサービス型(=コト売り)の事業モデルを創出・展開していくため。そのためにはデジタル技術が必須ですが、専業メーカーゆえIT人材が大幅に不足しており、JFEスチール同様、外部人材の獲得も困難だったということです。

そこで2017年、計画的な人材育成を目的に『ダイキン情報大学』という社内大学(講座)をスタート。最先端知識を持つ大阪大学の教員を講師として招き、IoT、AI、データ分析などに関する基礎から“独り立ちレベル”までのスキルを習得できるカリキュラムが揃えられています。

受講者には既存社員だけでなく、毎年100名の新入社員も選ばれ、在学中の2年間は学びに集中するために通常業務が免除されます。成果も上々のようで、JDLAE資格(ディープラーニング)や統計検定、基本情報処理技術者検定などの公的試験では全国平均を大幅に上回る合格率を達成しており、2023年度末には基幹職、既存社員、新入社員毎に1,500名の人材育成を目標に掲げています。

※参考:ダイキンの人材育成|ダイキン工業(株)情報技術大学 事務局

今回、事例として紹介した2社のように企業がカリキュラムを組んで計画的・戦略的に育成していくことは、独学にありがちな場当たり的かつ属人的な成長を防ぐメリットがあります。また、どちらの企業も“先端IT人材の獲得競争の激化”を自社育成の理由に挙げていましたが、こうした環境を整え、社外へ発信することは、成長意欲の高い人材に“選ばれる企業”となるためにも重要な取り組みと言えます。

今後もテクノロジーの進化や社会・ビジネスにおけるデジタルシフトは不可逆的に加速していくでしょう。従業員のスキルアップは「企業責任」か「個人責任」か、という点については様々な意見があるようですが、いずれにせよ双方とも“現状のまま”では、近い将来“選ばれなくなる”可能性が高まることは間違いありません。

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