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2023.06.01

 更新日:

2022.01.25

全2回 インパクトはAIに匹敵!? ビジネスで注目を集める量子コンピューターとは? 《連載:第2回》 国内外企業の量子コンピューター活用事例

国内外企業の量子コンピューター活用事例

量子コンピューターの基本的な概要を紹介した前回記事に引き続き、今回は海外・国内企業の活用事例を紹介していきます。

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日本企業でも進む活用

前回も紹介した通り、量子コンピューターには量子ゲート方式と量子アニーリング方式の2種類があり、実用化の面で先行しつつあるのが量子アニーリング方式です。

独・フォルクスワーゲン社の活用事例

量子アニーリング方式の可能性を示す活用事例として頻繁に取り上げられているのが、2017年に独フォルクスワーゲン社が中国、北京で実施したテストプロジェクトです。内容は、北京中心部と北京空港間の渋滞解消のために道路交通流を最適化するというもの。そこで同社は、過去に北京を走行したタクシー10,357台分の走行データを収集し、前回も紹介したD-Wave system社の量子アニーリングマシンを使って、それぞれのタクシーがどのような経路を通れば渋滞が緩和されるかを導出することに成功したのです。

もちろん海外企業だけでなく、日本企業でも量子アニーリング方式の活用は進んでいます。いくつか紹介しましょう。

株式会社デンソーの活用事例

自動車部品メーカーの株式会社デンソーは、東北大学と共同で無人搬送車(AGV)の配送効率を高めるための技術研究を推進しています。無人搬送車とは、工場内で人に代わり部品を配送する車のこと。従来はそれぞれの搬送車は事前に用意されたルールに基づいて走行していましたが、量子アニーリングコンピューターを利用し、経路やスピードをリアルタイムで最適化していくことで、従来に比べて稼働率が15%上がったということです。

参考:東北大学とデンソー、量子アニーリングマシンを活用した工場内の無人搬送車の効率的配送技術を発表|東北大学

株式会社リクルート(旧:株式会社リクルートコミュニケーションズ)の活用事例

デジタルマーケティングの分野で活用しているのが、株式会社リクルート(旧:株式会社リクルートコミュニケーションズ)です。旅行・宿泊施設情報サイト『じゃらんnet』では、宿泊予約数を向上させるためにアニーリングマシンを活用。訪問ユーザー一人ひとりに対して表示する情報を最適化するだけでなく、従来のソフトウェア(ソルバー)では困難だった表示情報に多様性を持たせるという取り組みにも成功し、ABテストを実施したところ、従来の手法と比べて売上アップが確認できたと発表しています。

参考:『デジタルマーケティングにおけるアニーリングマシンの活用』経済産業省政策シンポジウム講演動画

株式会社三井住友ファイナンシャルグループの活用事例

株式会社三井住友フィナンシャルグループは、約1,000人に及ぶコールセンタースタッフのシフト作成に量子アニーリング方式技術を活用しています。(1)各時間帯に必要なスタッフ数(過去データをもとにAIで予測)、(2)それぞれのスタッフが勤務可能な曜日・時間帯、そして(3)一人のスタッフがなるべく同種業務を続けておこなえるようにする、という3つの条件を考慮することで、業務量予測に応じた柔軟かつ最適なシフトを実現できるようになったということです。

参考:『金融分野における次世代コンピューティング技術への期待』経済産業省政策シンポジウム講演動画

DXならぬQX事例

量子コンピューターの計算原理である量子力学は、SF映画やSF小説などのテーマとしてもお馴染みですが、早くも未来の社会に向けて量子アニーリングコンピューティングの活用を進めている企業も実際に存在します。

住友商事株式会社の活用事例

2021年10月、住友商事株式会社は、空飛ぶクルマなどのエアモビリティが空を飛び交う時代のリアルタイム三次元交通制御システムの開発に向け、量子コンピューティングの活用実証を実施したと発表しました。
同社は、近年盛り上がりを見せる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ならぬ、「QX (クオンタムトランスフォーメーション)」という量子(クオンタム)技術を起点とした社会変革プロジェクトを推進。今回の実証実験では、量子アニーリング技術によって同時に飛行できる空飛ぶクルマの数を70%程度向上させ、特定の問題において従来コンピューターより10倍程度の高速化が可能であることを実証しています。

以上、2回に渡って量子コンピューターの基礎知識や企業の活用事例を紹介してきました。量子コンピューターについてあまりご存じなかった方の中には、「予想以上に進んでいるな」と驚かれた方も多いかもしれません。

もちろん量子コンピューターが、アプリケーションのような誰でも簡単に使える形でビジネスに普及するのはもう少し先のことになるでしょう。また、量子コンピューターが実用化された後も、企業の基幹系システムに関しては従来型のコンピューターが残るであろうという声も耳にします。とはいうものの、だからといって量子コンピューターを他人事のように考えているようでは、DX時代のIT人材/部門に相応しくないと思われても仕方がありません。

言うまでもなく、最新のテクノロジーは企業にとって大きな武器になります。破壊的なイノベーションとまではいかずとも、競合他社に先んじて利用することで、現状を打破するきっかけを生み出す可能性は大いにあり得ます。何より、AIやビッグデータが注目を集め始めたときと同じく、企業が量子コンピューターを導入するにあたって最大の課題は「量子人材」不足と言われています。この記事を読んで少しでも量子コンピューターに興味を持った方は、書籍やセミナーなどでより本格的に学んでみるのも良いかもしれません。

全2回インパクトはAIに匹敵!? ビジネスで注目を集める量子コンピューターとは?

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