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ベンダーマネジメントとは?役割や進め方、成功させるためのポイントをご紹介

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ベンダーマネジメントとは?役割や進め方、成功させるためのポイントをご紹介
  • ベンダーマネジメントは、主にシステム開発などを外注する際に必要となる管理業務のことです。ベンダーとのコミュニケーションを密に保ち、成果物の質を担保することを目的としています。

    本記事ではベンダーマネジメントの役割や進め方、成功のポイントについて解説します。システム開発の外注を検討している企業の担当者や、適切なベンダーマネジメントの方法を知りたい方は、ぜひご一読ください。

  • ベンダーマネジメントとは?

    ベンダーマネジメントとは?

    ベンダーマネジメントとは、システムやアプリなどの開発先である委託先(ベンダー)の企業を管理・マネジメントすることです。DXの推進が社会的な風潮となる中、さまざまな会社でITプロジェクトのニーズが高くなっています。

    営業やマーケティングなど利益を生み出す部門から、経理や管理などバックオフィス部門まで、あらゆる領域でデジタル化が進んでいます。専門性が高いソフトウェアやシステムの開発は、社内で行う他にITベンダーに依頼することもあるでしょう。

    問題なく納期を遵守し、質の高い成果物を納めてもらうには、ベンダーに丸投げしてはなりません。発注元が適切に指示を出し、進捗管理や納品後のレビューにまで携わることで、満足いくシステムが出来上がります。そのためには、適切なベンダーマネジメントをしていくことが必要です。

  • ベンダーマネジメントの役割

    ベンダーマネジメントの役割

    ベンダーマネジメントは契約前から納入後まで継続的に行う活動で、その役割は多岐にわたります。ベンダーマネジメントにおける主な役割は、契約管理・品質管理・リスク管理・モチベーション管理の4つです。それぞれについて、詳しく解説していきます。

    契約管理

    契約管理では、ベンダーとの契約内容を管理し、契約書の条項に問題ないかチェックします。システム開発を依頼するベンダーの選定では見積もりと予算を照合し、納期や成果物の品質基準などもすり合わせてから、契約を交わさないとなりません。

    支払う金額や納入方法などの基本的な事柄の他に、万が一納品後にトラブルが生じた際の対応も決めておいた方が好ましいでしょう。契約を締結した後は契約書の内容に拘束されるため、署名・押印をする前に問題はないか、細部まで確認する必要があります。

    品質管理

    ベンダーから納品された成果物の確認も、ベンダーマネジメントの重要な役割です。成果物が契約時に取り決めた品質基準を満たしているか、詳細にチェックします。

    定期的に進捗状況の報告や中間成果物の納入を求め、事前に定めたスケジュール通りにプロジェクトが進んでいるか精査します。開発の途中で問題が生じたときは、発注元とベンダーで協議して、解決策や対応方針を決めなくてはなりません。

    また成果物の質が高くても、納期や予算を超えてしまえば、良い仕事とはいえません。日頃からベンダーとのやり取りを密にして、細やかに報告や成果物の提出をしてもらうようにしましょう。

    リスク管理

    ベンダーマネジメントにはトラブルを未然に防ぎ、万が一問題が起きたときに迅速に対応する役割も求められます。プロジェクトの進行中はさまざまな想定外の事象に見舞われる可能性があります。

    例えば、プロジェクトリーダーやエンジニアが業務を遂行できない程の病気にかかり、納期までの提出が難しくなるといったトラブルが発生する可能性もゼロではありません。また成果物が想定していた品質水準を下回り、改修を依頼してもベンダー側から対応範囲外だと断られ、争いに発展する場合もあります。

    事前に問題が生じたときの対応フローを定めておくことが大切です。

    モチベーション管理

    依頼先の担当者やプロジェクトメンバーと良好な関係を築き、モチベーションの維持に努めることもベンダーマネジメントの重要な役割です。ベンダーはいくつもの会社からシステムの開発を請け負っていて、複数の案件を同時並行で進めています。

    開発側のモチベーションが低くなれば、優先順位を下げられ、結果的に成果物の品質の低下まで招きかねません。ベンダーのリソースを自社のプロジェクトに十分割かせるためには、日頃からのコミュニケーションの取り方が重要です。

    モチベーションの管理ではコミュニケーション力や共感力を発揮し、同じ目的をもつパートナーとして尊重し、お互いが気持ちの良いやり取りを心がける必要があります。

  • ベンダーマネジメントの進め方

    ベンダーマネジメントの一般的な進め方は、以下の通りです。

    1. VMOの編成
    2. VMOの目標設定
    3. ベンダーを選定
    4. ベンダーマネジメントの実行
    5. プロジェクトごとの総括
    6. ノウハウのデータベース化

    ここからは各手順について、詳しく解説していきます。

    1. VMOを編成する

    VMO(Vender Management Office)とは、ベンダーマネジメント専任の社内組織です。専門性が高い人材を関連部署から集め、チームを形成することです。

    先述の通り、ベンダーとの契約の確認からプロジェクトに携わっているメンバーのモチベーション管理まで、ベンダーマネジメントには幅広い役割が求められます。1人の担当者のみで業務を遂行するのは難しいため、チームで取り組んだ方が効率的かつ高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

    VMOのもう一つの利点は、マネジメントやシステム開発の知見を社内に蓄積できる点です。新たに次のプロジェクトを起こす必要に迫られたときに、過去の経験を活かして品質の改善や人材の育成、ベンダーとのより良い進め方などが可能になります。

    2. VMOの目標を設定する

    VMOを編成して、実現したい目標を設定しましょう。ゴールが明確であれば、問題が発生した際にも、対策や改善の方向性を見出しやすく軌道修正しやすくなるためです。

    例えば期限までに納品が間に合わない場合、試作品の段階でリリースするか、全体的にプロジェクトを後ろ倒しにするか、適切な対応は目標によっても異なります。社内向けの業務効率の改善が目的のプロジェクトであれば、現状のまま実装して様子を見るのも一つの方法です。

    一方で顧客向けに新しいサービスを提供するためのプロジェクトの場合、不十分なままリリースするのは不適切な場合もあるでしょう。

    VMOの目標を決める上で意識したいキーワードが「調達最適思考」と「戦略最適思考」です。調達最適思考はシステムの導入によるITコストの削減を目指す考え方で、戦略最適思考では付加価値の創造を目的に据えます。

    いずれかの基準を採用して目標や方向性が明確になれば、プロジェクト開始後の意思決定が迅速かつスムーズに運ぶといわれています。

    3. ベンダーを選定する

    ベンダーマネジメントは、依頼先の選定にも携わります。ベンダーを選ぶ際はプロジェクトの成功に求める技術要件を詳細に洗い出し、業者を絞るための条件を決めましょう。

    ベンダーと一括りにしても、会社ごとに得意な言語やシステムの種類は異なります。緻密なリサーチを行い、検討する企業の得意分野を明確にして、依頼先を決める際に必要な材料を集めましょう。

    またベンダーの選定では技術力以外にも、自社のビジョンや考えに同意してもらえるベンダーかどうかも見極めることがポイントです。考え方や方向性がそぐわないと、プロジェクト中にいざこざが生じやすく、円滑に進行しない可能性が高まります。

    なお、ベンダーへの依頼時には、概要や実績などの提示を求めるRFI(情報提供依頼書)や、システムの仕様や機能を定めたRFP(提案依頼書)を提出して、どのような成果物が必要なのか、希望していることは何なのかを具体的に伝えるようにしましょう。

    4. ベンダーマネジメントの実行

    ベンダーが決まった後は、ベンダーマネジメントを実行に移しましょう。ベンダーが契約に従って作業を進めているか、指示の内容を守っているか、コンプライアンス違反はないかなどを都度確認していきます。

    VMOが一丸となって、プロジェクトの進行に必要な業務をチームでこなすことが大切です。業務自体は実装するシステムの内容次第で変わりますが、最終的に目指すゴールはITサービスの実装やシステム開発などによる「価値の最大化」です。目標や方向性からずれていないか、チェックしていきましょう。

    5. プロジェクトごとに総括をする

    一つのプロジェクトが完了したら、次に進む前に総括を行うことが重要です。業務の進行中に発生した課題を細かに分析し、実行した対策の内容や成果を評価します。反省点を見出し次回以降に活かして、プロジェクトマネジメントのクオリティを向上しましょう。

    プロジェクトには「目的の達成を目指して臨時で発生する業務」という定義があります。工場でのライン作業や毎月の請求書の発行のように、繰り返し行われるものではないからこそ、一回ごとの振り返りが大切です。

    6. ベンダーマネジメントのノウハウをデータベース化する

    プロジェクトの進行で得たノウハウをデータベース化してまとめることも重要です。ベンダーマネジメントは複雑な業務が多い上に、企業特有の慣習やルールに依存する場合も少なくありません。

    Microsoft ExcelやBIツール、Googleスプレッドシートなどを駆使し、ノウハウをデータベースに保管しておけば、VMOに所属していない担当者も確認しやすくなります。

    この作業を怠ると、業務やプロジェクトで得た知見がブラックボックス化してしまうでしょう。ノウハウを蓄積し、マネジメントの改善に励むには、データベースの構築が必須です。

  • ベンダーマネジメントを成功させるポイント

    ベンダーマネジメントを成功させるポイント

    ベンダーマネジメントを成功に導くには、適切な人材を抜擢する必要があります。そのためにも、発注元と依頼先であるベンダーがフラットで良好な関係を築くことが重要です。またベンダーとのやり取りを効率良く、密に行うためにはシステムやツールの活用も必要不可欠。
    ここからは、ベンダーマネジメントを成功させる4つのポイントについて、解説します。

    技術力のある人材を配置する

    VMOには、ITプロジェクトの経験をもつ技術力のある人材を配置しましょう。直接開発や運用を担う立場ではなくても、ベンダーへの発注や指示の精度が上がりやすくなるためです。

    依頼側に技術力がある人材がいれば、成果物のチェック時にミスや漏れを見抜ける上に、不具合の発見や修正の指示を迅速に行えます。問題点がいち早く見つかれば、納期の遅延や追加コストの発生を未然に防ぎ、スムーズにプロジェクトが進行します。

    マネジメント経験のある人材を配置する

    近年は、システム開発を複数のベンダーに依頼する「マルチベンダーマネジメント」に取り組むケースも一般的になりました。各ベンダーのチームに加え、会社を超えた指示出しや調整などの業務が伴うため、高度なマネジメント力が求められます。

    関係各社への進捗確認やヒアリングを漏れなく行いながら、プロジェクト全体をコントロールするのは難しい業務です。複雑化しつつあるシステム開発のマネジメントを担うには、チームリーダーや管理職の経験がある人材を抜擢する必要があります。

    「指示する・指示される」のみの関係にならない

    ベンダーは発注元の言いなりになりやすく、上下関係が生まれるリスクがあります。発注元が指示を出し、ベンダーが指示を受けるという一方的な関係に陥らないよう注意が必要です。

    発注先が予算やシステム要件で無理な要求を突きつけ、最終的に納期が間に合わなかったり、不具合が発生したりすることもあります。発注元とベンダーの双方が満足いく仕事にするには、お互いが協力してリソースや知恵を出しあわなくてはなりません。

    ベンダーマネジメントではコミュニケーションの量や質に気を配り、発注元とベンダーの良好な関係の構築を目指す必要があります。

    ベンダーと共有できるタスク管理システムを使う

    ベンダーマネジメントでは小まめな進捗状況の管理が必須となる反面、報告や連絡の頻度が多すぎると業務量が増大し、プロジェクトの遅延につながることがあります。お互いの負担を減らしつつ、密に連携を図るためには、タスク管理システムの導入が有効です。

    ベンダーのパフォーマンスを確認するのは発注元の責務ですが、システム開発の現場ではIT技術の専門的な話が飛び交うため、全てを把握するのは困難かつ非効率です。

    タスク管理ツールを導入すれば、開発中の進捗管理だけでなく、システムに不具合が生じたときのインシデント管理や、サービス要求管理を効率的に行えます。コミュニケーションに伴う手間や時間を減らし、お互いが進捗を確認しやすくなるでしょう。

  • まとめ

    予算・納期・成果物で満足いくITシステムを開発するには、発注先のベンダーマネジメントが不可欠です。一方的な関わり方にならずにベンダーと良好な関係を築くには、お互いに協力して知見を出し合うことが求められます。ベンダー側の負担を増やさず、進捗状況の報告や成果物の納品をはじめ、密に連携を図るにはタスク管理ツールの導入が効果的です。

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