#コラム

SLA(サービス品質保証)とは?メリットや評価指標について解説

  • ビジネスに欠かせない存在となっている各種ITサービスですが、自社のみで運用することはむずかしく、多くの企業がITサービスを委託しています。そして、ITサービスを利用する際にチェックしておくべきなのが「SLA(サービス品質保証)」です。
    SLAはサービス提供の品質保証や損失補填が盛り込まれており、ITサービスの提供者・利用者どちらにも有益です。SLAとはどのようなものなのか、メリットや評価指標などもあわせて解説します。

  • SLA(サービス品質保証)とは

    SLAとはサービスの具体的な内容や、違反した場合のペナルティについて提供者・利用者双方が合意する契約のことです。また日本語で「サービス品質保証」と訳されます。

    一般的に以下のような内容が盛り込まれます。
    ・サービス内容
    ・サービス範囲
    ・サービス達成目標
    ・ 品質水準の明確化
    ・守られなかった場合のルール

    クラウドサービス、通信サービス、レンタルサーバー、コールセンター・ヘルプデスクなど、各種IT・通信サービスが対象です。

    具体的には通信速度の保証やデータの保全、メンテナンスなどによる停止時間の上限など、客観的に判断できる数値で定めるのが原則で、測定方法も定めます。
    もしサービス品質が規定より下回った場合の、ペナルティ(利用料金の減額など)を定めるのが一般的です。

    SLAの要件基準

    SLAを締結する際に定める要件基準として、大きく以下4つが挙げられます。

    ・月間稼働率:システムが停止している時間を差し引いた、実際に稼働する時間を表す項目です。数値が高いほど安定性が高くなります。
    ・サービスの定義:どのようなサービスが提供されるのかを表す項目です。提供者と利用者の見解を共有します。
    ・サービスのレベル:サービス内容を数値などで表す項目です。ストレージや通信速度など、サービス品質の高さを数値で示します。
    ・返金規約:定めた基準値や定義に違反した、もしくは下回った場合の対応(返金・解約など)を表す項目です。

    事前に定めておくことで、提供者・利用者どちらも納得して契約できます。

  • 「SLA」と「SLO」の違い

    SLAとよく似た用語として、SLOというものもあります。
    両者の違いは、以下のとおりです。

    ・SLA:提供者と利用者間で取り決めるサービス品質の契約
    ・SLO:サービス提供者側が設定する目標値

    SLAはサービスの内容や品質などを取り決める契約のことです。合意したサービス基準が守られなかった場合に、返金・解約など罰則を定めているのが大きな特徴です。

    対してSLOは、SLAで取り決めた内容を達成するために、サービス提供者が設定する目標のことを指します。日本語では「サービスレベル目標」と訳されます。
    SLAを達成するための目標値なので、SLOより厳しく設定されるのが一般的です。

    例えばSLAで月間稼働率99.95%を保証すると定めている場合、SLOでは月間稼働率を99.99%にするといったように、より厳しい目標を掲げます。
    また大きな違いとして、SLOにはペナルティがありません。

  • 提供者側・利用者側から見たSLAのメリット

    SLAの取り決めは、提供者・利用者それぞれにメリットがあります。双方の視点から見たメリットを解説します。

    サービス「提供者側」から見たSLAのメリット

    サービス提供者側から見たSLAのメリットは、曖昧さをなくすことにあります。不透明性をなくすことで、トラブルを未然に防いだり、品質の高さをアピールしたりできます。

    サービス内容と責任範囲が明確になりトラブルを防止できる

    サービス内容と業務範囲を詳しく決めておくことで、提供者・利用者間の認識のズレを解消しトラブルを未然に防げます。

    もしサービス内容や業務範囲が不明瞭であれば、利用者側の思い込みや過度な期待などによって、必要以上のサービスを求められてしまうかもしれません。

    細かく規定しておけば、認識のズレや食い違いによるトラブルを防げます。

    トラブルの際に慌てず対応できる

    もしトラブルが発生しても、SLAのとおりに動けばスムーズに問題を解決できます。
    サービスが提供できない場合や、品質を維持できない場合の補償についても明記するので、落ち着いて対応できます。

    加えて「災害時の対応は例外」など、例外事由を記載しておけば、トラブル対応に労力を割かれません。トラブル防止はもちろん、万が一の際に対応方法が分かりやすいのは大きなメリットです。

    客観的な数値で競合他社との差別化を図れる

    競合他社と差別化を図り、優位性をアピールするツールとしても役立ちます。

    サービス品質が客観的な数値で示され、具体的な補償内容なども記載されているため、利用者はSLAを確認して「求めているサービスなのか」吟味します。
    数値化できる項目を増やし、品質レベルの高さをアピールしましょう。

    サービス「利用者側」から見たSLAのメリット

    サービス利用者側からすると、サービスクオリティが明確になったり、補償内容が定められていたりと、利用するサービスの選定基準や比較項目として役立ちます。

    サービスのクオリティが明確に分かる

    サービスの品質が客観的な数値で分かるため、受けられるサービスの内容が明確になります。

    サービス内容や品質に対して、思い込みや期待など曖昧さがなくなるため、複数サービスを正しく比較できます。
    自分が求めているサービスかどうか、判断しやすくなるのは大きなメリットです。

    万が一の損失補償が可能になる

    責任範囲やペナルティを決めておくことで、問題が発生した際に損失補償を受けられます。もしもの際に補償があることで、堅実にサービスを利用できます。

    また提供者側と意見が衝突したり、トラブルになったりする可能性が低くなるので、いらぬ労力やストレスがかかる心配もありません。

    サービスの比較基準にできる

    サービス内容や品質などが保証されるため、比較検討の基準として役立ちます。サービス品質が数値化されるため、客観的かつ分かりやすく複数サービスを比較できます。
    比較した上でサービスを利用できるので、納得して契約できるでしょう。

  • SLA作成・運用の注意点

    SLAを締結する際の注意点を押さえておきましょう。いずれもSLAの効力を保つために必要な項目です。

    自社サービスに応じて定める項目を選ぶ

    SLAで規定する項目に決まりはなく、サービス内容や提供形態などに応じて異なるので、自社サービスに応じた項目を選ぶ必要があります。

    定める項目としては、以下のようなものが代表的です。

    ・前提条件
    ・提供者・利用者、双方の役割と責任範囲
    ・提供サービスの範囲や内容、品質
    ・運用のルール(計測すべき数値など)
    ・条件未達成時の対応や補償内容、罰則
    ・報告や会議の方法

    想定される事態に応じて、どのように対応するか明記しておきましょう。
    しかし項目が多過ぎると、運用コストや手間がかさむため、必要な範囲に絞り込むのが大切です。

    実現可能な内容か精査する

    自社の能力で実現可能な内容か、精査する必要があります。
    利用者は高クオリティかつ広い対応範囲を求めますが、持続的に提供可能か冷静に見極めましょう。

    対応可能レベルを超えているとサービス提供が難しくなるのはもちろん、トラブルの際に手が回らなくなります。
    問題なく運営できるように、自社に合った適切なレベル・範囲に設定しましょう。

    締結後の運用も想定する

    締結後の運用も想定して、SLAを結びましょう。

    運用開始後は常に監視して、規定した数値を満たせているか計測する必要があります。もし数値が規定より下回れば、SLAに基づいた対応が必要です。

    多くの項目を設定し過ぎると、監視の作業コストが高くなるので要注意です。監視ツールを活用するなど、作業負荷を低減させる工夫も検討してみてください。

  • SLAの評価指標

    サービス品質を保証する評価指標として「サービス品質保証」「応対品質保証」「生産性」「コスト」の4つの指標が挙げられます。

    コールセンターでの入電対応を例に解説します。

    サービス品質保証指標

    コールセンターは電話のつながりやすさが重要なため、サービスの品質保証の指標として、応答率・SLが挙げられます。

    ・応答率:入電数の中で、実際にオペレーターが応答できたコールの割合です。応答率が高いほど、電話のつながりやすさを示します。
    ・SL:一定時間内にオペレーターが応答したコールの割合です。入電に対しいかに迅速な応答ができたか測れます。

    どちらの指標も高いほど、電話がつながりやすい高品質なサービスです。

    応対品質保証指標

    オペレーターの応対の正確さ・丁寧さを保証する指標とのことです。応対クオリティの高さは顧客満足度に直結するので、重要な要素です。

    ・モニタリングスコア:言葉遣いや応対内容など、複数の評価項目の合計得点のことです。顧客ニーズに応えた回答がされているほど、高評価となります。
    ・一次解決率:転送やコールバックせず問題を解決できた割合です。問い合わせに対し、的確な応対ができているかを表します。
    ・ミス率:ミスの割合です。重大なミスと軽微なミスに分けて計測するのが一般的です。管理体制の見直しにも役立ちます。

    オペレーターはもちろん、管理体制を見直すためにも重要な指標です。

    生産性指標

    正しく機能して、成果を上げているか測る指標です。

    ・CPH:1人のオペレーターが1時間で対応したコール数のことです。どれほど電話応対しているかを測る指標です。
    ・ATT:1コールあたりの平均通話時間です。ATTが短ければ、同じ時間内でより多くの応対が可能となります。
    ・ACW:1コールあたりの後処理にかかった平均後処理時間です。電話応対後のシステムへの入力や、手続き処理などにかかった時間を測ります。
    ・AHT:1コールあたりの平均処理時間です。通話時間や保留時間、後処理時間の平均値です。AHTの短縮はコスト削減とサービスの品質向上につながります。
    ・稼働率:オペレーターが給与発生時間内で、顧客対応業務にあたった割合です。高過ぎても低過ぎても問題で、80%〜85%が理想です。

    どのように稼働しているか把握することで、コールセンターの生産性を高められます。

    コスト指標

    顧客対応や生産性に優れていても、コストが高ければ改善の余地があります。

    コストはCPCを指標とし、1コールの応対にかかるコストを計測します。オペレーターの人件費・通信費など、コールセンター全体の経費から計算します。CPCが高いと、コストの見直しが必要です。

  • SLAの締結はITサービスの提供者・利用者どちらにもメリット

    SLAはサービスの内容や品質、補償などを明確にすることで、不透明性を払拭し提供者・利用者双方の見解を擦り合わせられます。

    提供者側には余計なトラブルを防いだり、競合他社と差別化できたりするメリットがあるのに対し、利用者側にはサービスのクオリティが明確になったり、比較検討の材料になったりというメリットがあります。

    サービス提供者・利用者どちらの場合も、しっかりと確認してSLAを締結・運用するのが大切です。