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サービスレベル管理(SLM)とは? プロセス・指標・導入効果を分かりやすく解説

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サービスレベル管理(SLM)とは? プロセス・指標・導入効果を分かりやすく解説
  • サービスレベル管理とは、サービスの提供者とビジネス部門のユーザーが協議して定めたサービスの品質を維持・向上するために、適切に管理し、評価・改善する手法です。Service Level Managementの略語で、SLMとも呼ばれます。

    企業・ユーザーのどちらにとっても、さまざまなメリットがあるため注目を集めている管理手法です。

    この記事では、サービスレベル管理の基本や注目を集める背景、導入の重要性やメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

    【この記事で分かること】
    ・サービスレベル管理の定義と目的
    ・サービスレベル管理の主要プロセスと指標設定
    ・実践運用時の注意点と導入成功のためのコツ

  • サービスレベル管理(SLM)とは?

    サービスレベル管理(SLM)とは?

    サービスレベル管理(SLM:Service Level Management)とは、サービス提供者・ユーザー間で事前に取り決めた合意内容に沿ってITサービスの品質レベルを管理し、評価・改善を進める手法です。ITサービスの品質に関する事前の取り決めのことを、SLA(Service Level Agreement)と呼びます。

    サービスレベル管理は、単にSLAを達成するためだけに行うものではなく、運用・評価・改善までを含んだ管理体制として捉えることが必要です。ここではサービスレベル管理とSLAとの関係について解説します。

    サービスレベル管理の定義

    サービスレベル管理とは、事前にITサービスの事業者とユーザーの間で協議して合意した品質レベルが満たされるように運用・管理することを指します。

    ITサービスは、そのままではユーザーが望む状態で提供できているか判断できません。そこでサービスの状態が把握できるように測定可能な言い方で表したものがサービスレベルです。例を挙げると、以下のようになります。

    ・Webサービスの月間稼働率を99.9%以上とする
    ・重大障害が起きた場合、発生から4時間以内に復旧作業を開始する
    ・データは1日1回バックアップを取得し、30日間保管する

    このように「どのサービスを・どの範囲で・どの水準まで提供するか」を、数値や条件で明確に示すことで、利用者と提供者の期待値を揃え、安定したサービス運用を支えられます。

    サービスレベル管理は、この合意されたサービスレベルを遵守し、必要に応じて改善するための継続的運用プロセスであり、ITサービスマネジメント(ITSM)の要となる活動です。

    SLAとの関係と役割

    サービスレベル管理(SLM)は、合意されたサービス品質を維持し、継続的に改善するためのプロセスです。ここで混同されやすい関連用語として、SLA/SLO/SLIが挙げられます。これらはセットで設計・運用される仕組みと捉えると理解がスムーズです。それぞれの違いは以下の通りです。

    用語 正式名称 役割・意味
    SLM
    (サービスレベル管理)
    Service Level Management ・SLAを達成するため、サービス品質を監視・管理し、改善する活動プロセス
    SLA
    (サービスレベル合意)
    Service Level Agreement ・顧客と合意したサービス内容・品質・責任範囲を文書化した契約(外向き)
    SLO
    (目標値)
    Service Level Objective ・達成するべき目標値(稼働率99.9%など)
    ・SLAと整合しつつ内部基準に使うことも多い
    SLI
    (指標)
    Service Level Indicator ・品質を測定するための指標(可用性、応答時間、障害回復時間など)

    例えば「月間稼働率99.9%以上を達成する」とSLAで定めた場合、以下のような関係になります。

    ・SLI:稼働率(何を測るか)
    ・SLO:99.9%(どの基準まで満たすか)
    ・SLM:指標を継続測定し、達成状況を監視・改善する活動

    もしSLOを満たせない状況が続けば原因分析や改善を行い、必要に応じてSLAの更新(再合意)も検討します。

  • サービスレベル管理が注目される背景

    サービスレベル管理が注目される背景

    近年、サービスレベル管理の手法が多くの企業から注目されています。
    背景にあるのは、社内で使用するIT環境の複雑化やユーザーニーズの期待値の上昇、コンプライアンスの強化などです。ここではそれぞれの要因を詳しく解説します。

    クラウド化・マルチベンダー環境によるサービスの複雑化

    近年、サービスレベル管理の重要性が認識され注目を集めている背景には、社内のIT環境が多様化・複雑化している状況があります。クラウドサービスの普及・利用拡大により、多くの企業で社内システム・クラウド・外部サービスを組み合わせて使用する複雑な状況が起こるようになりました。複数のベンダーと取引するマルチベンダー環境も珍しくありません。

    このような環境下では、かえって業務効率が落ちたり無駄なコストが発生したりする可能性があり、トラブル発生時に適切な対応が遅れる恐れがあります。

    サービスレベル管理は「誰が・どの範囲を・どのレベルで提供・管理するか」を明確にして管理する方法です。複雑化・多層化したIT環境を適切にコントロールするために有効だとして、注目を集めるようになりました。

    利用者ニーズの高度化と期待値の上昇

    ユーザーがサービスに対して高い期待を抱くようになっていることも、サービスレベル管理が重視される要因です。一般にユーザーはいつでもどこからでもスムーズにアクセスでき、安定して使えるITサービスを期待しています。

    企業がサービスを選定する際も、重要な指標となりやすいのが、稼働率の高さや応答時間の素早さ、トラブル時の対応スピードの速さなどです。特にBtoB領域では、サービスの遅延や障害対応の遅れが売上機会損失や業務中断につながるため、システム稼働の安定性や復旧速度の速さが強く期待されます。

    利用者ニーズの高度化・期待値の上昇に応えるためには、サービス品質を具体的に数値で表し、継続的に達成状況を確認するサービスレベル管理が有効です。

    ガバナンス・コンプライアンス要件の強化

    近年、個人情報保護やサイバーセキュリティに関する法規制の強化により、ITシステム運用に求められるガバナンスおよびコンプライアンス要件は年々厳しくなっています。ガバナンスは企業が遵守すべきポリシーやルール、コンプライアンスは法令や規制に従うことを指し、ITサービスはこれらを確実に守るための基盤として重要視されています。

    特にクラウドや外部ベンダーサービスの活用が増える中では、障害の長期化や対応遅延が単なる業務中断に留まらず、契約違反・法令違反・信頼失墜といった深刻なリスクにつながる恐れがあります。
    そこで求められるのがサービスレベル管理(SLM)です。
    サービスの品質基準を数値化し、責任範囲を明確に設定し、実績を継続的に監視・改善することで、以下の効果が期待できます。

    ・コンプライアンス違反リスクの低減
    ・運用ガバナンスの強化
    ・ビジネス継続性の確保

    外部委託が関与する運用ほど、サービス内容・対応速度・データ管理要件などをSLAに明記し、SLMによって遵守状況を記録・管理することが重要です。

  • サービスレベル管理の主なプロセス

    サービスレベル管理の主なプロセス

    サービスレベル管理の概要が分かったところで、実施する際にはどのようなプロセスを踏む必要があるかも知っておきましょう。ここではサービスレベル管理を3つのステップに分け、それぞれについて詳しく解説します。

    要件収集(ビジネス部門との合意形成)

    「要件収集」は、サービスレベル管理において欠かせないステップです。IT部門・サービス提供部門とビジネス部門(ユーザー)が協議し、対象のサービスにはどういった品質が必要かを具体的に取り決めて合意します。

    その際には、まず業務への影響度が高い要素を整理します。例えば、以下のような項目です。

    ・工程稼働率
    ・応答時間
    ・障害発生から一次対応までの時間
    ・復旧までの目標時間

    これらについて、現実的で達成可能な基準を設定します。例として、以下のような内容が挙げられます。

    ・平日営業時間内の稼働率を99.9%以上とする
    ・重大インシデント発生時は15分以内を目安に一次報告する

    合意形成が曖昧なままでは、後から「想定より対応が遅い」「期待していた品質と違う」といった認識のズレが生まれ、トラブルの原因になりかねません。初期段階で入念にすり合わせを行うことが重要です。

    モニタリングと報告体制の構築

    その後はモニタリング体制と報告体制を構築します。まずは、必要なデータを定期的に収集できる体制を整えましょう。

    モニタリングするデータの例は以下の通りです。

    ・サービスの稼働状況
    ・障害発生件数や業務への影響度
    ・システムのレスポンス時間
    ・問い合わせへの対応状況

    定期的にレポートを作成し、IT部門だけではなくビジネス部門も含めた関係者に報告する仕組みも整備しましょう。モニタリング体制・報告体制を整え、データを共有することで、サービス品質の透明性が高まります。

    またデータから「どの時間帯に遅延が多いのか」「未達のSLOはどれか」など、さまざまな問題を客観的に把握できるようになります。

    継続的な改善とSLAの適正化

    サービスレベル管理の最終的な目標は、最初に定めたSLAを守り続けることだけではありません。実績データを元にサービスや運用のプロセスを見直し、環境の変化に合わせて継続的に改善していくことが大切です。

    モニタリング結果や定期レビューの結果から目標値と実績値のギャップを分析し、課題を特定して改善を目指しましょう。分析の際は目標設定が適切だったか、仕組みに問題がないかなどさまざまな観点から検討する必要があります。

    課題が特定できたら、状況や内容に応じてSLOやSLAの見直し、運用プロセスやシステム構成の改善などを行います。

  • サービスレベル管理を導入するメリット

    サービスレベル管理を導入すると、サービス提供者もユーザーも、データに基づいて客観的な視点でサービスを評価・判断できるようになるなどのメリットがあります。ここでは、主なメリットについて具体的に解説します。

    サービス品質の可視化と透明性の向上

    サービスレベル管理(SLM)を導入すると、稼働率やレスポンス時間、障害件数、問い合わせへの対応状況など、サービス品質を示す指標を数字で管理できるようになります。これにより現在サービスがどのような状態なのかを客観的に把握しやすくなります。

    例えば「稼働率は99.9%で安定している」「一定時間内に解決できた問い合わせが90%を超えている」といった形で、明確な品質評価が可能です。感覚ではなくデータに基づいて状況を判断できるため、改善すべき点も発見しやすくなります。

    また指標に基づく報告を行うことで、サービス提供者側とユーザー側の認識のズレを防ぎ、運用の透明性を高める効果があります。サービス提供者にとっては品質を具体的にアピールする材料となり、ユーザー側にとっては安心してサービスを活用できる基盤が整う点も大きなメリットです。

    課題の早期発見と改善スピードの向上

    運用上の課題を発見しやすく、速やかに改善に着手できる点も、サービスレベル管理導入による大きなメリットです。

    サービスレベル管理では、あらかじめ設定したSLI(指標)とSLO(目標値)に基づいてモニタリングを行います。基準が明確なため、品質の低下や遅延が発生した際にも、どの指標が崩れているのかをすぐに把握できます。問題の早期検知につながり、深刻化する前に改善に移れる可能性が高まるでしょう。

    例えば「障害発生時は2時間以内に復旧する」と定めている場合、実績を継続的に監視していれば、復旧時間が目標を超えた時点で即座に課題が認識できます。発見した課題は重要度や緊急度に応じて分類し、要員配置の見直しや運用フロー改善など適切な対策を検討してください。

    なお改善が確実に進むかどうかは、体制やリソース確保などの前提にも左右されます。そのためモニタリングと連動した改善プロセスを組織的に整えておくことが重要です。

    ビジネス部門との信頼関係の強化が可能

    ビジネス部門とIT部門・サービス提供部門の信頼関係が強まることも、サービスレベル管理導入のメリットの一つです。

    サービスレベル管理を実行する際は、どのサービスをどういった範囲・どういった水準で提供するかを明文化し、SLAとして書面に残します。このSLAを起点に稼働率や応答時間などの指標を定め、定期的にモニタリングしてレビュー、そして報告を通して実績と約束を数値で共有する体制を整えることで共通認識が生まれます。

    ただしこの効果が得られるのは、SLAや指標設計、モニタリング体制が適切に機能し、形骸化せずに運用されることが前提条件です。透明性の高い運用になることで、ビジネス部門からすればIT部門・サービス提供部門の取り組み状況が適切に判断しやすくなり、信頼関係の構築にもつながります。

    SLA逸脱リスクの低減と運用コストの最適化

    サービスレベル管理を適切に運用できれば、SLA逸脱のリスク低減とサービス運用コストの最適化が期待できます。

    SLMでは、SLAを満たすために必要な指標(SLI)と内部目標(SLO)を設定し、実績値を継続してモニタリングします。遅延や障害などの兆候を早期に把握しやすくなるため、問題発生前に予防対策を講じたり障害対応を迅速化したりしやすくなるでしょう。その結果、SLAから逸脱するリスク、クレーム発生といったリスクを抑える効果が見込めます。

    またモニタリング結果に基づいて業務フローやリソース配置を改善することで、無駄な再作業の発生や突発的な工数増加を抑制することが可能です。継続的な改善が進むほど、長期的な運用コストの最適化につながります。

  • サービスレベル管理を成功に導くコツ

    サービスレベル管理は、単にSLAを作成して適度に運用すればうまくいくというものではありません。しっかり機能させて成功に導くためには、いくつか押さえておきたいコツがあります。ここでは、特に注意すべきコツを4つご紹介します。

    目的に基づいた適切な指標設定

    サービスレベル管理では、まず「どの指標をなぜ追うのか」を明確にすることが重要です。改善したい成果や解決したい課題によって、設定すべき指標が変わるためです。

    例えば以下のような内容です。

    ・問い合わせ対応品質の改善が目的 → 応答時間/一次解決率
    ・システム停止による業務影響を減らしたい → 稼働率/復旧時間(MTTR)

    このように、目的に直結する指標を定義する必要があります。

    また指標には役割の異なる2つの水準設定があります。

    ・SLO:内部で目指す運用目標
    ・SLA:ユーザーと合意した提供基準

    SLOをSLAより若干高めに設定することで、サービス提供側は改善余地を確保しつつ、ユーザーの期待水準を安定して満たせる可能性が高まります。ただしどちらも達成可能性を十分に検討した上で設定することが前提です。

    ツール活用によるデータ収集・可視化の精度が向上

    データ収集は手作業ではなく、ツールを活用して行うことも大切なポイントです。モニタリングやレポート作成を手作業で行うと、どれだけ注意していてもデータの抜け漏れや集計間違いなど、ヒューマンエラーが起こる可能性が高くなります。

    担当者によって判断にばらつきがでたり、報告が遅くなったりするケースがあるかもしれません。それではサービス運用の現状を、正確に把握できない恐れがあります。

    そのためログ取得ツールやITSMツール、監視ツールなどを組み合わせて活用することが大切です。ツールを使えば正確な実測データをリアルタイムで反映でき、サービスレベル管理を適切に実行しやすくなります。改善すべき課題点も、すぐに発見できるようになるでしょう。

    ただし、効果を発揮するには、監視対象の適切な設定・ログ保存の設計・アラートやレポートの運用ルールをきちんと整備し続けることが前提です。

    改善の継続性を担保する仕組みづくり

    サービスレベル管理を成功させるためには、PDCAのサイクルを回し続けることも大切です。サービスレベル管理は、設定したSLAを達成するよう取り組むだけのものではありません。本来の目的は、投入するリソースに見合うよう、サービス品質を維持し、かつ継続的に向上させることです。

    モニタリングを続け、毎月や四半期、半期など決めたタイミングでレポートを作成し、定期的にレビュー会議を開催する必要があります。得られたデータに基づいて課題や障害の原因を分析し、改善策や再発防止策を実行しましょう。実施後は効果検証を行うことも必要です。PDCAのサイクルを仕組み化し、長期的に回すことで、サービス品質を長期的に引き上げられます。

    関係者間の合意形成と情報共有

    サービスレベル管理にはIT部門だけではなく、ビジネス部門や運用チーム、必要に応じて複数の外部ベンダーなど、多様な関係者が関与します。それぞれの立場によって重視するポイントや判断基準が異なるため、個別最適で動いてしまうと「十分対応しているつもりでも利用者には不十分に感じられる」といったギャップが生じやすくなります。

    そのため、SLAで定義したサービス範囲や品質基準、役割分担、改善状況などを共通の情報として共有できる仕組みが重要です。同じ基準を共有することで、運用状況を客観的に把握しやすくなり、認識のズレが発生しにくい体制を作れます。

    情報共有と合意形成が継続的に行われることで、サービスレベル管理はスムーズに運営されやすくなり、関係者間の信頼関係強化にもつながるでしょう。

  • まとめ

    サービスレベル管理(SLM)とは、サービス提供者側とユーザー側が事前に協議した品質レベルを維持し、改善する一連の管理活動のことです。近年、IT環境が複雑化したことで、サービスレベル管理の重要性が増しています。

    適切にサービスレベル管理を行い、ITサービス全体を管理するためには、専用ツールの活用が効果的です。IT管理ツール「SmartStage ServiceDesk」は、サービス管理に必要な機能が揃い、ノーコードで自社の運用に合わせて調整できる柔軟性の高さが大きな強みです。ITサービス管理に必要な仕組みを無理なく整えられるでしょう。

    IT運用でお悩みの企業のご担当者の方は、ぜひご相談ください。