コラム
ナレッジを活用する方法は? AI活用のメリットや押さえておくべきポイントもご紹介

目次
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企業のナレッジマネジメントに、AIを活用する方法があります。組織内で業務に関する知識を効果的に共有・活用すれば、スムーズな人材育成や企業の競争力向上につながります。近年、急速に成長しているAI技術を活用することで、膨大な社内データから価値のある情報を抽出し、企業全体で有効活用できるようになるでしょう。
本記事では、AIを活用したナレッジマネジメントの方法や、AIを活用するメリット、押さえておくべきポイントなどをご紹介します。社内でナレッジマネジメントを実施したい方や、既存の取り組みを効率化したい方は、ぜひ最後までご覧ください。 -
そもそもナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、知識の「Knowledge」と管理の「Management」を組み合わせてできた言葉です。一般的に、従業員それぞれが持つ情報を社内で共有して、経営や意思決定などに活用します。ここでは、ナレッジマネジメントの概念を構成する要素について、詳しくご紹介します。
暗黙知と形式知
ナレッジマネジメントの概念には「暗黙知」と「形式知」の2つが存在します。
暗黙知とは、従業員個人の内面に蓄積された経験や直感などの知識で、属人的で他人への説明が難しいことが特徴です。長年の経験で培われた知識や経験などが、これに当てはまります。暗黙知をうまく抽出してまとめれば、情報資産として企業全体で共有できるようになるでしょう。
形式知とは、すでに文章や画像などを使って整理されている知識です。これらの情報を企業が適切な仕組みで管理すれば、従業員が必要なタイミングで必要な情報にアクセスできるようになるでしょう。
ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知に効果的に変換し、生産性の向上に役立てていくことが重要です。SECIモデル
ナレッジマネジメントのプロセスには、Socialization・Externalization・Combination・Internalizationの頭文字を取った「SECIモデル」があります。これらの4つのプロセスを踏めば、暗黙知から形式知への転換が可能です。ここからは、それぞれのプロセスの詳細を解説します。
1.共同化(Socialization)
共同化は、それぞれの従業員が持つ暗黙知を他の人と共有するプロセスです。この段階では、共通の経験や実践を通じて知識が伝達されます。具体的には、ベテラン従業員の作業を新人が間近で見学したり、業務習得トレーニングを通じて直接指導を受けたりするなどです。
担当者の経験に基づいた勘やコツが必要な業務は言語化が難しいので、マニュアルや文章を読んだだけでは身に付きにくいです。そのため、従業員同士が暗黙知を共有していくことが欠かせません。2.表出化(Externalization)
表出化は、共同化で得られた暗黙知を言語や図表などの形式知に変換するプロセスです。
具体的には、従業員が経験から得たノウハウをマニュアル化したり、業務上の気付きを報告書にまとめたりする作業が該当します。このプロセスでは、抽象的な概念を具体例や比喩を使いながら分かりやすく説明したり、他の従業員が情報を理解できるように整理したりします。
表出化を行うことで一部の従業員だけが持っていた知識が全体に共有され、組織の知的資産として活用可能です。3.連結化(Combination)
連結化は、さまざまな形式知を組み合わせて新しい知識体系の構築を行うプロセスです。
具体的には、企業の各部門が個々に持っている形式知を既存の形式知と統合して、新しい戦略や製品開発に活用していく取り組みなどが挙げられます。例えば、新商品を企画する際、他の部門からの意見やノウハウなどを聞いた上で複数の形式知を掛け合わせた開発を行うと、連結化から新たなものづくりができるようになるでしょう。4.内面化(Internalization)
内面化は、連結した形式知を個人の暗黙知として取り込んでいくプロセスです。
具体的には、従業員一人ひとりがマニュアルや研修を活用して、新たな知識、スキル、知見などの形式知を習得し、個人の中に蓄積していきます。このとき、単なる形式知の習得ではなく、背景や意図を含めて理解することで暗黙知に転換でき、内面化ができるようになります。
このように、ナレッジマネジメントで重要なSECIモデルは、共同化・表出化・連結化・内面化の4つのサイクルを理解し、継続的に回していくことが重要です。 -
ナレッジマネジメントが注目される背景
ナレッジマネジメントが注目される背景には、いくつかの理由があります。ここでは2つの主な理由を見ていきましょう。
働き方の変化
ナレッジマネジメントが注目されている背景の一つに、働き方の変化があります。
現代社会では従業員の働き方が大きく変化し、テレワークや在宅勤務が一般化しました。従業員同士が物理的に離れた場所にいながらも円滑に業務を進めるためには、企業がナレッジマネジメントの整備に力を入れる必要があります。
さらに、「終身雇用制度が崩壊しつつある」といわれている昨今、従業員のキャリアの流動性は高まっています。その結果、人材の入れ替わりが激しく、組織のナレッジ流出を招いているのです。この課題を解決するには、従業員一人ひとりが持つ経験や知識を形式知として広く共有すること、すなわちナレッジマネジメントを行うことが重要です。デジタル技術の発展
ナレッジマネジメントが注目されているもう一つの背景に、デジタル技術の発展もあります。
デジタル技術の発展に伴い、消費者ニーズの多様化や市場変化のスピードが早まりました。情報の形態も音声や動画など多様になった他、クラウドサービスの普及やモバイルデバイスの軽量化など、場所や時間の制約なく消費者が気軽に情報にアクセスできる環境が整いつつあります。
このような状況を受けて、企業内でナレッジマネジメントを行い、迅速な情報共有と効率的な意思決定を行う必要性が高まっています。今後も、デジタル技術の発展に合わせて、ナレッジマネジメントの重要性がより高まるでしょう。 -
ナレッジマネジメントにAIを活用する方法
AIを活用することで効率的にナレッジマネジメントができるようになります。ここでは、主な方法を見ていきましょう。
情報抽出・分析の効率化
AIを使って、ナレッジマネジメント上の情報抽出や分析の効率化を行えます。
AI技術として注目されている大規模言語モデル(LLM)は、文章から必要な情報を抽出して要約や分類を行うことが可能です。また、AIは膨大なデータの中から客観的事実に基づいた分析を行う能力にも長けています。そのため、不特定多数の情報から重要な要素をスピーディに抽出してパターン化することができ、企業が持つナレッジの質を高めてくれるでしょう。
また、AIを活用すると、断片的な情報を構造化された知識へと変換できます。従来は体系化が難しかった暗黙知の情報を、形式知に変換する方法にも有効です。このようにAIを活用することで、ナレッジマネジメントがスムーズになる可能性が高まるでしょう。自然な対話による検索
AIを活用すれば、自然な対話の方法で必要な情報の検索を行えます。
従来の社内ポータルサイトや検索システムでは、情報検索にはツールを使いこなすスキルが必要でした。そのため、従業員がツールに不慣れだと必要な情報にたどり着けず、せっかくのナレッジが活用されないケースもありました。
対話型の情報検索ができるAIを導入すれば、手軽かつ自然な流れで必要な情報にアクセスできるようになります。技術的な操作スキルに左右されない情報アクセスは従業員の誰もが直感的に利用しやすく、効率的に情報を検索できます。その結果、業務の質の均一化を目指せるでしょう。過去データからの予測
ナレッジマネジメントでAIを活用すると、過去のデータに基づいた分析や予測を行えるようになります。
企業に蓄積されているデータは、きちんと分析することでさまざまな発見や学びを得られます。しかし、マンパワーを使った分析には時間や業務量の限界があり、全ての情報を処理するのは難しいこともあるでしょう。AIを活用すれば、大量のデータであっても短時間で処理し、分析や予測ができるようになります。また、AIはデータ量が多いほど、学習精度が向上して予測精度が高まります。
AIに過去のプロジェクト事例や業務知識を学習させることで、従業員に依存せずにデータベースの構築ができるようになるでしょう。24時間体制での質問対応
AIは、時間や場所の制約なしで稼働可能です。ナレッジマネジメントにAIを活用すると、いつでも従業員からの質問対応ができるようになります。
社内のナレッジや過去の案件などをAIに学習させることで、従業員はいつどこからでも業務に関する質問ができます。従業員の業務効率の向上はもちろん、勤務時間やタイムゾーンによる情報格差も解消されるでしょう。
さらに、従来は各担当者に問い合わせていた質問をAIによるヘルプデスクに集約させると、従業員の業務負担の軽減にもつながります。特に、定期的に繰り返される似たような質問への回答時間が削減されれば、その分の時間をより付加価値の高い業務に振り分けられるでしょう。 -
ナレッジマネジメントにAIを活用するメリット
ここからは、ナレッジマネジメントにAIを活用することで得られる、主なメリットをご紹介します。
業務の質とスピードが上がる
ナレッジマネジメントにAIを活用することで、業務の質とスピードを上げられます。
AIは課題に応じて、適切なナレッジを素早く提示してくれます。従業員が1日を通して情報検索に費やしている時間が減り、より優先度の高い業務に取り組む時間を確保できるようになるでしょう。
結果、業務をこなすスピードが上がる他、業務の質も向上しやすいです。
例えば、カスタマーサービスや営業職の現場でAIを活用すると、商品や顧客情報の検索を効率化できたり、スムーズな顧客対応を実現できたりするでしょう。さらに、特定部署で成果を上げたノウハウや情報を、AIを使って他チームへ素早く横展開するといったように、全社レベルの業務効率化も期待できます。人材育成を効率化できる
人材育成を効率的に行えるようになることも、ナレッジマネジメントでAIを活用するメリットのひとつです。
社内ナレッジをAIに読み込ませることで、短期間で従業員の育成ができるようになります。その結果、企業が人材育成に必要な工数や人件費を削減したり、育成担当者の業務負担を減らしたりできるでしょう。
人材育成のスピードが加速すると事業全体の発展につながるだけではなく、急な退職や休職、人事異動があった場合でも対応できるようになります。顧客向けFAQへの応用
顧客向けFAQやチャットボットに応用できることも、AIをナレッジマネジメントに活用するメリットといえます。
AIは学習した内容に基づいて、適切な回答を返すことができます。この機能を利用して、顧客から高頻度で質問される内容に関して、回答の自動化が可能です。また、過去の顧客対応記録やヘルプセンターのやり取りをAIに学習させれば、分かりやすいFAQを作成してくれるでしょう。
さらに、チャットボットによる対応データを蓄積していけば、AIが質問パターンを学習して精度が向上していきます。初めての質問に対しても、事前にある程度予測して回答を用意できたり、顧客のニーズに合わせた回答を提供できるようになったりするでしょう。
このようにAIを活用することで、カスタマーサポートの質を大きく向上させ、これまでFAQに対応していた従業員の業務負担を大幅に減らせるでしょう。 -
ナレッジマネジメントにAIを活用する際に押さえておくべきポイント
ナレッジマネジメントにAIを活用するとさまざまなメリットがある一方で、注意点もあります。ここからは、AIを活用する際に押さえておくべきポイントを2つご紹介します。
ハルシネーション対策
ナレッジマネジメントにAIを活用する際には、ハルシネーション対策を行うことが大切です。
ハルシネーションとは、AIが事実と異なる情報を生成・提示する現象のことです。企業のナレッジ管理では情報の正確性が求められます。誤った情報の蓄積や拡散が行われると、大きな問題に発展してしまうこともあるでしょう。
このようなリスクを軽減するには、AIが生成した内容を人間が検証するプロセスをしっかりと設けておくことが大切です。具体的には、社内の専門家による事実確認や情報リソースのリンク設置など、情報の信憑性を確保できる仕組みを構築しましょう。
また、AIを活用する従業員へ、AIが持つハルシネーションの特性を理解させる研修や啓発を行うことも有効です。専門知識を持った人材の確保
ナレッジメントにAIを活用する際には、専門知識を持った人材を確保しておきましょう。
AIを活用してナレッジマネジメントを成功させるには、データサイエンスやAIエンジニアの知識を有する技術者が必要です。AIシステムの構築、運用、改善を担当し、組織のニーズに合わせた運用を行います。
同時に、企業の知識体系を理解し、効果的な情報の蓄積と共有方法を設計できるナレッジマネジメントに詳しい人材も必要です。両方の専門性を兼ね備えた人材は希少なため、計画的に人材育成や外部からの採用を進める必要があるでしょう。
なお、社内での人材確保が困難な場合は、専門のコンサルティング会社やベンダーに依頼するのも選択肢の一つです。また、既製のAIナレッジマネジメントツールを活用すれば、専門人材への依存度を下げられます。 -
まとめ
本記事では、ナレッジマネジメントの概要から、AIの具体的な活用方法などをご紹介しました。企業がAIによるナレッジマネジメントを行うことで業務の質の向上や、業務効率化といったさまざまなメリットを得られます。活用時には、AI特有のハルシネーション対策や専門知識に詳しい人材の確保も並行して進めていきましょう。
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