コラム
システム運用とは? メンテナンス(保守)との違いや仕事内容を解説
目次
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IT化が急速に進んでいる昨今、多くの企業がITシステムを導入しており、運用やメンテナンス(保守)とは切り離せない環境にあります。
運用とはシステムを安定的に稼働し続けるために行う作業です。システム運用を継続して行うには不具合を発見したり、トラブルに対応したりするメンテナンス(保守)が必要になります。
なお、システム運用を自社で行っている企業と外部に委託している企業があります。後者では、自社に専門知識を有する従業員がいない場合でも、システムの安定的な稼働が可能です。
本記事では、システム運用の概要を押さえた上で、システム運用の仕事内容、運用とメンテナンス(保守)の違い、システム運用のメンテナンス(保守)が重要な理由などを解説します。 -
システム運用とは?
現代社会では、ほとんどの企業がシステム運用と無関係というわけにはいきません。システム運用は、システムを止めず安定的に稼働し続けるために行います。
システム運用では主に以下のことを行い、社内におけるITインフラの維持を目指します。
● 定期的なサーバーの再起動
● 手順書による定型的なメンテナンス作業
● 定期的なデータのバックアップ
● システム稼働状況の監視
● ソフトウェアのバージョンアップ、およびパッチ適用
● セキュリティー脆弱性対応
これらを日々行うことで、システムは正常に動作します。システム運用を怠ると、業務に影響が生じることもあるので注意しなければなりません。
なお、ショッピングサイトはセール期間のように、平時よりもアクセス数が増えシステムへの負荷が一時的に大きくなるケースもあります。こうしたサイトではシステムが停止する前に対応できるよう、稼働状況の監視を行います。監視し、適切な対応を実施することで、システムの負担を回避できるのです。 -
システム運用の仕事内容
システム運用の仕事内容は数多く存在し、いずれもシステムを正常に稼働するために不可欠です。
システム運用の仕事内容として、以下の5つが挙げられます。
● システムの状況を常に確認
● サーバーの再起動対応
● データのバックアップ対応
● システムに関わる情報の管理
● 運用業務のマニュアル作成
それぞれ確認していきましょう。システムの状況を常に確認
システム運用では、システムが正常に稼働しているかを監視します。例えば、ネットワークであれば回線にトラブルがないか、サーバーであればCPUやメモリーなどを監視ソフトによって確認し、機器の稼働状況を目視でチェックするのが大切です。
また近年においては、システム運用でのセキュリティーの重要性が増しています。ウイルスや不正アクセスの脅威を感じたら、迅速に対応しなければなりません。対応が遅れたために、解決までにより時間を要する事態になることも珍しくないので注意が必要です。
さらにシステム運用では、生じる可能性があるトラブルを予想し、トラブルを防ぐための対策をあらかじめ施すこともあります。システムにとって最適な状態を保つのも、システム運用の重要な役割です。サーバーの再起動対応
システム監視業務において、Javaで開発されたシステムのプロセス再起動を日常業務に含めている企業が多くあります。なぜなら定期的な再起動も適切なシステム環境を整えるために必要だからです。
コンピュータープログラムの実行環境を備える機能として、GCがあります。GCとはガベージコレクション(Garbage Collection)の略語で、実行中であるプログラム占有のメモリー領域の中で不要なものを自動的に解放し、空き領域として再度利用できるようにする便利なものです。しかしごみ処理を定期的にしてくれるから安心できるというわけではありません。
ヒープ領域中のニュー領域では新しいオブジェクトを格納するため、GCはかなりの頻度で発生します。参照されていないオブジェクトは破棄の対象となるものの、参照があるオブジェクトはヒープ領域に残存します。残ったオブジェクトはオールド領域に移されますが、空き容量がなくなるとシステムはFullGCを行わなければなりません。FullGCの間はシステムの処理が止まり、場合によっては長時間ストップします。
こうした事態を回避するには定期的にシステムを再起動し、メモリー空間にゆとりを残しておかなければなりません。データのバックアップ対応
データのバックアップ対応を定期的に行うことで、トラブル発生時にデータを迅速に復旧できます。
データのバックアップはスケジュールと範囲が事前に定められているため、マニュアルに従って行うのが一般的です。
バックアップされたデータはリスクを考慮し、保管場所を分散しましょう。システムに関わる情報の管理
システム運用は運用を実際に行うだけでなく、それに関連する情報の管理も行います。例えばIDやパスワード、ネットワーク情報、サーバーやパソコンなどのIT資産はシステム運用において特にしっかりと管理しなければならないものです。
これらの情報の管理を怠ると、システムに不具合が起きた際にスムーズな原因究明ができません。トラブルが大きくなったり、解決まで時間や手間がより生じたりします。
またIDやパスワードは企業の経営に関係する重要な情報であり、悪用されないためにも適切な管理が重要となります。運用業務のマニュアル作成
システム運用は、運用業務マニュアルを作成しておくことが大切です。マニュアルに従って業務を進められるため、変化を発見しやすく業務の漏れを防げます。
またマニュアルは一度作成したら終わりとするのではなく、運用方法を定期的に見直してブラッシュアップすることが大切です。例えばクライアントからのヒアリングで得た意見や日々の発見などから既存マニュアルを見直し、今後の業務に生かせるように加筆訂正を行います。
マニュアルがあれば効率的に業務を進められるため、従業員の負担軽減にもつながります。 -
システムのメンテナンス(保守)とは
システムのメンテナンス(保守)とはシステムを障害から復旧させ、通常の安定した稼働の状態に戻すことです。障害の発生や機器の故障は事前に予測できないものが多いため、イレギュラー対応が多くあります。
ただしシステムの稼働状況を日頃から確認することでトラブルを最小限に抑えたり、改善策を検討したりすることも可能です。
システムのメンテナンス(保守)には以下の業務があります。
● サーバーハードウェアのメンテナンス
● バグや不具合の原因究明
● 障害からの復旧
● ネットワークのメンテナンス
● データベースのチューニング
● バックアップなどの復旧作業
メンテナンス(保守)の中には担当者のルーティンワークとなるものだけでなく、迅速な対応が求められるものも多いです。 -
メンテナンス(保守)の仕事内容
メンテナンス(保守)とはITシステムの障害が発生した際、原因究明を行い、対処する役割を担っています。業務内容は数多く存在し、専門的な知識やスキルが求められるものばかりです。
メンテナンス(保守)の仕事内容として、以下の2つが挙げられます。
● システム障害への対応
● ハードウェア故障時の対応
それぞれ確認していきましょう。システム障害への対応
システム障害が発生した際、メンテナンス(保守)の対応が必要です。対応には知識やスキルが求められるため、専門性が不可欠となります。システム障害が起こった場所を特定し、バックアップされたデータを使ってシステムの復旧作業を実施します。
また再発防止のためには原因究明も不可欠です。たとえトラブルが解決されても、原因究明されなければ一時的な解決にしかならず、同様のトラブルが近いうちに生じるかもしれません。何が原因となりシステムに障害が発生したのか確認するのも、メンテナンス(保守)の業務に含まれます。ハードウェア故障時の対応
ハードウェアとはパソコンや周辺機器、ネットワーク機器、サーバー、ストレージなどコンピューターを構成する物理的な機器のことです。このハードウェアが故障した際はメンテナンス(保守)を行い、復旧を目指します。
復旧が難しい場合は周辺機器のリプレイスを実施し、周辺機器を入れ替えることで正常稼働できるか確認します。
またハードウェアは製品の故障時に備えて、メーカーによる保守サービスに入っておくのも一つの手です。保守サービスに加入しておけば、故障時はメーカーに一任できるため、自社で対応する必要がありません。
ただしメーカーに依頼した場合、故障の内容やタイミングによっては修復までに時間を要することもあります。自社に対応できる人材がいれば、自社で対応した方がスムーズなケースもあります。 -
運用とメンテナンス(保守)の違い
システムの導入後、運用とメンテナンス(保守)はいずれもシステムを安定的に稼働させるために必要です。
運用とは日々の監視・点検業務を実施しトラブル発生を防止するために行います。対象となるものはハードウェア、ソフトウェア、データ、ネットワークなどさまざまです。
一方、メンテナンス(保守)はトラブルに対応するとともに再発を防ぎます。老朽化した周辺機器をリプレイスしたり、運用にトラブルが生じないように予防措置を講じたりします。さらに復旧やプログラムの回収も重要な業務です。 -
システム運用のメンテナンス(保守)が重要な理由
システム運用のメンテナンス(保守)が重要といわれていますが、なぜ必要なのかイメージできない担当者の方は多いのではないでしょうか。
システム運用においてメンテナンス(保守)が重要な理由として、以下の3つが挙げられます。
● セキュリティー対策ができる
● システムの安定性を確保できる
● 生産性の向上が期待できる
それぞれ確認していきましょう。セキュリティー対策ができる
システム運用のメンテナンス(保守)を定期的に行うことで、最新のセキュリティー対策を適用でき、システムの安全性を維持できます。不正アクセスの手法が年々高度化する中で、セキュリティーの脆弱性を定期的に確認し、迅速に対策を講じることが求められます。
メンテナンスを通じて、システムに潜在する脆弱性を発見し、必要に応じてセキュリティーパッチやアップデートを適用することで、外部からの攻撃やデータ漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。システムが堅牢であればあるほど、顧客や取引先の信頼を損なうことなく、安全に業務を遂行することが可能です。
このように、定期的なシステムメンテナンス(保守)は、企業にとってのリスク管理の一環として重要な役割を果たし、安心して運用を続けられる基盤を築くために欠かせない要素です。システムの安定性を確保できる
メンテナンス(保守)を行うことで、業務の安定性を確保することができます。現代社会では多くの企業がシステムに依存しています。その依存度合いはシステムが止まれば業務も止まりかねないほどです。システムが止まらないよう、メンテナンス(保守)を定期的に行い、トラブル発生率の削減を目指さなければなりません。
システムの改善点をメンテナンス(保守)によって把握しておくことで、ビジネスの発展に関する戦略的な意思決定や新規システム導入なども実施しやすくなります。
メンテナンス(保守)はシステムを継続的に利用できるようにするだけでなく、ビジネスの発展にも必要不可欠です。生産性の向上が期待できる
システムにトラブルが発生すると通常業務がストップしたり、その対応に追われたりすることになります。本来行うべき業務ができなくなり、業務に支障を来すだけでなく、従業員にとって通常以上の負担にもなりかねません。
こうした事態を発生させないためにも、システムが正常に動作するようにメンテナンス(保守)を行うことが大切です。
またシステムのアップデート、パッチ適用によってシステムの処理速度が高まれば、業務の処理時間の削減も期待できます。 -
システム運用・メンテナンス(保守)における課題
システム運用・メンテナンス(保守)には課題もあるため、その面も理解しておかなければなりません。
システム運用・メンテナンス(保守)における課題として、以下の2つが挙げられます。
● 常に新しい技術を取り入れる必要がある
● リソース不足に陥る可能性がある
それぞれ確認していきましょう。常に新しい技術を取り入れる必要がある
システム運用・メンテナンス(保守)においてテクノロジーの進歩に対応していくことは不可欠です。テクノロジーは急速に変化し、それに合わせてソリューションやアプリケーションなども変化しているので、情報を日常的にアップデートしなければなりません。メンテナンス(保守)の担当者は常に学び、スキルアップを続けなければならない環境にあるといえます。
また新技術の導入により、既存のシステムとの互換性に問題が生じることもあるので注意してください。メンテナンス(保守)担当者は新しい技術の情報を追跡し、システムの変更を必要に応じて行わなければなりません。新システム導入後は、テスト検証やトラブルシューティングなどが求められます。リソース不足に陥る可能性がある
メンテナンス(保守)に必要な人員や時間、費用などが想定外に膨れ上がると、不測の事態の際に迅速な対応ができなくなるかもしれません。
IT人材は近年不足しているだけでなく、メンテナンス(保守)は専門性が高い仕事です。このため業務にマッチした人材を募集しても、求める人材になかなか出会えないケースも珍しくありません。こうなれば人手不足に陥り、システム運用やメンテナンス(保守)に問題が生じ、対応が遅れるケースもあるでしょう。
また費用が膨れ、予算オーバーになることも懸念されます。特に限られた予算しかない企業の場合、安定的なシステム運用を左右しかねない問題です。 -
システム運用・メンテナンス(保守)を効率よく行うには
システム運用・メンテナンス(保守)は手間や時間を要することがあります。コア業務に影響を与えることもあるため、なるべく効率的に行いたいものです。
システム運用・メンテナンス(保守)を効率良く行う方法として、以下2つの方法が挙げられます。
● 外部業者の活用
● 管理するシステムの導入
それぞれ確認していきましょう。外部業者の活用
システム運用・メンテナンス(保守)は外部業者に委託することも可能です。自社に対応できる人材がいない企業においては管理業務の問題を解決できますし、いずれの企業においても社内のシステム維持の負荷を軽減できます。
近年は労働力人口の減少によりIT人材の確保が難しいといわれていますが、システム運用・メンテナンス(保守)を外部業者に委託する方法もあります。委託により社内の限られた人的リソースをコア業務やクリエイティブな業務に割り当てることが可能です。こうした業務に人材を集中的に投入できれば、付加価値を創出できる業務や利益率アップにつながる業務に多くの時間も費やせます。
また大規模システムのメンテナンス(保守)などエンジニアの高度な知識が必要な場合にも、外部業者の活用がおすすめです。管理するシステムの導入
社内におけるITシステムを一元管理できるツールを導入することで、運用管理を自動化し安定的な運用を実現できます。
社内のITシステムを一元管理できるツールにはジョブ管理、可用性管理、パフォーマンス(性能)管理、構成管理、セキュリティー管理、IT資産管理が基本機能として搭載された製品が多いです。
さらに製品によってはシステム運用を24時間365日監視することも可能です。継続的な監視によって、アプリケーションのパフォーマンスを向上できます。
社内のITシステムを一元管理できるツールにはさまざまな製品があるので、自社のニーズに合った機能が搭載された製品を選ぶようにしてください。 -
まとめ
システム運用とメンテナンス(保守)はシステムを安定的に稼働させるために重要です。システム運用の業務は数多く存在するため、自社で行うことに負担を感じるかもしれませんが、トラブル発生を防ぐためにも行うようにしてください。
システム運用とメンテナンス(保守)はITサービスを活用することで、自社で行う負担を軽減できることもあります。また外部に委託するよりも、コストパフォーマンスが高いことも多いです。
ITサービスを運用している企業のご担当者さまには、Smart Stageをおすすめします。
本サービスはITILに準拠した機能性が高いITサービス管理ツールです。インシデント管理や問題管理、IT管理などをスムーズに行えます。ノンプログラミングの設定ベースで導入でき、既存運用を崩さずにシステム化できるため、導入時の負担の少なさもポイントです。