コラム
ナレッジ管理がヘルプデスクやサービスデスクに必要な理由とは? ツール導入のメリットや注意点も解説
目次
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幅広い知識が求められ、日々大量の問い合わせが押し寄せるヘルプデスクやサービスデスク部門にとって、ナレッジの活用は不可欠です。しかし上手にナレッジを管理・活用できておらず、大きな負担がかかっている場合もあるのではないでしょうか。そこで情報の利活用に適した専用ツールを使用すれば、時間をかけずに自社データを有効に使えるはずです。
この記事では、ナレッジ管理がヘルプデスクやサービスデスクに必要な理由やツールの導入によるメリット・注意点について解説します。導入を検討する際はぜひ参考にしてツールを選んでみてください。 -
ナレッジ管理とは?
ナレッジ管理とは、組織で蓄えられたナレッジを「見える化」して共有し、業務の効率化や高平準化を図るプロセスのことです。
ナレッジ管理は共通体験をもとに暗黙知を分かち合う「共同化」、マニュアルを作成して可視化する「表出化」、新たに生まれた知見と既存の知見を融合する「連結化」、マニュアルから暗黙知を生み出す「内面化」という4つのプロセスに分かれます。
暗黙知とは長年の経験に基づき育まれた知見のことです。ノウハウの属人化を防いで共有しやすい形式にするには、マニュアルの作成が求められます。
例えばECサイトに接続できなくなったと顧客からクレームが入ったとき、類似の事例を参照できれば、「セキュリティソフトのアップデートに原因がありそう」「過去はこのように対処していた」などと分かります。
このように問い合わせの内容から解決策まで記したドキュメントが整備されていれば、目の前の問題に対する原因をいち早く特定し、適切な対応がとれるのです。
膨大な量に及ぶナレッジの管理には、FAQシステムやナレッジ管理ツールなどのデジタルツールの導入が有効です。情報の効率的な利活用を実現するには、検索性に優れ、欲しい情報が即座に取り出せるシステムの実装が求められます。 -
ヘルプデスク・サービスデスクが抱える課題
ナレッジ管理が必要な理由は、ヘルプデスクが日常業務で抱える課題を考えると理解しやすくなるでしょう。彼らは幅広い内容の膨大な数の問い合わせを一元的に処理しなくてはならず、多忙を極めています。
ナレッジを使って類似の事例を迅速に解決できれば、業務効率化にとって有益です。ここではヘルプデスクやサービスデスクが抱える課題を紹介します。問い合わせ量が多く業務の負担が大きい
ヘルプデスク・サービスデスク部門でよくある課題には、問い合わせ件数が多過ぎて、過度な負担を迫られている状況が挙げられます。業務量が膨大に及ぶ理由は、マニュアルを参照せずに担当者に問い合わせる社員がいることや問い合わせの量が時期ごとに異なること、問い合わせを受けるチャネルが複数あることなどです。効率的に対応できるような工夫をしなければ、対応に時間を要してしまい、顧客満足度の低下を引き起こしかねません。
しかし内容に目を向けてみると、問い合わせの数自体は大量でも、同種の要望・問題が繰り返されているだけの場合があります。過去の事例をナレッジ化できていれば、問い合わせした方が自分で情報を参照して解決できる手段が増えるため、ヘルプデスク・サービスデスクの負担軽減が期待できます。対応領域が大きくさまざまな知識が求められる
システムに関するあらゆる疑問が各部署から寄せられるヘルプデスク・サービスデスクでは、問題の解決にさまざまな知識が必要です。
ヘルプデスクの分業化ができない場合は、一人の担当者がパソコンから部門ごとのシステム、各種チャットツールに至るまで、あらゆるトラブルの解決役として機能しなければいけません。
近年は業務の効率化を目的に新たなITシステムを取り入れる企業も出始め、サービスデスクが備えるべき知識が肥大化する傾向があります。備えるべき知識が増え、担当者のノウハウが追いつかなくなるケースもあるでしょう。
こうした状況を踏まえ、担当者の知識レベルに依存しないスムーズな業務の進行のために、ナレッジを活用して不足する情報を補える仕組み作りが求められます。ナレッジが社内で共有されていない
経営陣やIT部門のマネージャーがナレッジ管理を推奨しても、ナレッジが社内で文書化されず、制度が十分に機能しないケースもあるでしょう。ヘルプデスク・サービスデスクは知識やノウハウに依存する業務のため属人化しやすく、過度な業務負担に迫られて、ナレッジの共有に割く時間を設けられない場面があります。
知見の蓄積には現場の協力が不可欠ですが、社内に施策の意義が浸透していなければ、業務で得たノウハウを共有する意識が生まれません。
また自らの知見を頼りに業務を進める、自身の経験を他人に共有する行為を嫌がるなど、一部の社員からの反発がナレッジ管理の足かせとなるケースもあります。
このような問題を防ぐには、ナレッジ活用の意義を発信して社内から理解を得ることや、積極的に情報共有したいと思わせるルール作りが必要です。 -
ナレッジ管理をヘルプデスク・サービスデスク向けに行うメリット
先述の通り、ヘルプデスク・サービスデスクの課題を解決する手段としてナレッジ管理が考えられます。ナレッジ管理にはExcelやGoogleスプレッドシートにまとめる方法の他、専用のナレッジ管理ツールを使う方法があります。
担当者から吸い上げた情報を的確に活用・分析するためには、ツールの導入がおすすめです。ナレッジ管理ツールの導入によってヘルプデスクにもたらされる効果を解説します。スムーズなナレッジの共有ができる
ナレッジ管理ツールを導入すると、スムーズにナレッジの共有ができるメリットがあります。ナレッジ管理ツールには、ヘルプデスク部門のシステムに組み込んで利用できるものがあります。担当者はパソコン上で別のウィンドウに遷移せずとも、ナレッジの保存や情報へのアクセスが可能です。
多忙を極める状況でも、余計な作業の負担なくシームレスに情報を共有できれば、ナレッジの蓄積を進めやすく、業務の負担を減らせるでしょう。対応スピードが向上する
ツールの検索機能を活用し、大小さまざまなナレッジから必要な情報を即座に探し出せることもナレッジ管理をヘルプデスクやサービスデスク向けに行う利点です。
担当者が入力したナレッジはカテゴリ別に分類され、検索しやすい形で保存されるものが一般的です。検索機能があれば、管理画面上でインシデントに関連するキーワードを入れると、対応策まで記載された類似案件のナレッジを閲覧できます。ツールを使いこなせば、経験年数に関係なく、誰でも効率的に業務を遂行することが可能です。
対応スピードの向上を重視する場合、全文検索や横断検索など検索機能が充実したツールの選定がおすすめです。社員のスキルアップにつながる
ナレッジ管理ツールの導入によって、社員が個人的に持っていた有益なノウハウが収集されていくため、担当者全員のスキルアップにつながります。
ヘルプデスクやサービスデスクは、担当者の知識量が対応力の差を分けるポイントとなる部門です。蓄積されたナレッジを活用し、担当者が業務ノウハウを自身のスキルに落とし込めれば、業務効率化や生産性の向上、顧客満足度の上昇につながります。
膨大な問い合わせ対応を迫られるヘルプデスクやサービスデスクは日々多忙を極め、新たな知識を習得したくても時間的な余裕がない状況に直面しているケースがあります。ナレッジ管理ツールがあれば担当者は業務中に知見を獲得できるため、顧客対応と社員教育を同時に達成しやすい点もナレッジ管理ツールを導入する魅力です。ナレッジの属人化を防げる
ナレッジ管理ツールの活用により、部門全体で情報を共有しやすくなります。ナレッジが蓄積されていないと、離職や求職、異動を理由にサービスデスクの対応レベルが一気に落ちる懸念があります。
例えば案件に関する質問をしたくても適切な相談先が部内におらず、結果的に社員が自らの判断で回答しなければなりません。ナレッジ管理で全担当者にノウハウが行き届いていれば、部署レベルで対応力が底上げされ、顧客満足度の向上まで期待できます。分散したデータの統合ができる
ナレッジ管理ツールを導入する利点として、各部署に散らばったデータを統合できる点が挙げられます。
各部署の業務システム(サーバ)やユーザーサポートと連携可能な仕組みがあれば重宝するでしょう。システム同士でデータを移す際に人の手で加工する手間を省ける他、ツールによっては管理ツールから他システムのデータの抽出も可能です。
例えばセルフサービスポータル(顧客用オンラインサポートチャネル)と連携できれば、疑問や不満の自己解決を促進し、顧客は自ら解決策に辿り着けます。このようにヘルプデスクの工数を削減し、担当者の生産性を高めるためには部門横断型のシステム構築が必要です。 -
ナレッジ管理ツールの主な機能
ヘルプデスクやサービスデスク向けのナレッジ管理ツールの主な機能は、FAQシステム・チャットボット・問い合わせ管理・タスクのチケット管理の4つです。それぞれ何ができるか解説します。
FAQシステム
FAQシステムはよくある質問と回答をデータベースの形に一元化し、顧客や社員の自己解決を促す機能です。基本的なトラブルの一次的な問い合わせ先として活用すれば、繰り返し発生するインシデント対応の負担軽減につながります。
一般的にナレッジ管理を導入して時間が経過すると、活用頻度が高い重要な情報とめったに使用しない情報が見えてきます。一つひとつのノウハウが点在しているだけでは効率的な利活用は難しいため、あらかじめ整理・分類が必要です。
FAQシステムを導入して問い合わせ件数自体が減れば、ヘルプデスクの負担は大きく軽減します。チャットボット
チャットボットはナレッジ管理ツールに組み込むことで、顧客や社員が質問を入力すると自動でレスポンスを出す仕組みを構築できる機能です。組み込まれたスクリプトに沿って動くため、人員を割く必要がなく、一次的な顧客対応・社内対応にかかる負担が減ります。
簡単な問い合わせはチャットボットに一任し、複雑な案件は担当者につなぐようなオペレーションを取り入れれば、ヘルプデスク部門の省力化と顧客対応の質向上の効果が期待できます。
業務時間外の夜間や休日にも休みなく動き続ける他、レスポンスが速いこともチャットボットの利点です。問い合わせ管理
問い合わせ管理は、蓄積された情報を駆使して問い合わせ内容や対応進捗を一元的に管理する機能を指します。ツールによってはリアルタイムで対応状況を可視化したり、新たな案件を適切な担当者に割り振ったりすることが可能です。
また各問い合わせから得たノウハウをナレッジとして残す際に、情報の活用方法を制限できるものもあります。基本的に業務で獲得した知見は積極的に社内へと周知されるべきですが、情報漏洩の観点から、機密情報のアクセス制限を設ける必要が出てくることがあります。そこでこのような機能を活用すれば、ナレッジ管理ツールの管理者は、問い合わせ内容や対応進捗を閲覧可能なユーザーを選別できるようになるでしょう。表示のみや編集可能など、機能面の柔軟なコントロールが可能となるのです。タスクのチケット管理
タスクのチケット管理は、問い合わせに対して実施するべきタスクをチケットとして管理する機能です。システムを開くと確認事項や処理状況が一目で分かるようなツールも多く、別途メモに記録する手間を省き、効率的な業務の遂行を支援します。
担当者の業務を含めて一元的に管理できるため、いろいろな場所に情報が散らばることを防ぎ、常に整理整頓された状態を保てるのも利点です。顧客からの要求や作業の対応漏れがなくなり、業務のクオリティの向上にとって有意義です。 -
ナレッジ管理ツールを導入する際の注意点
ナレッジ管理ツールを使う際には、いくつか注意すべきポイントがあります。ツール導入の効果を発揮するために、以下のポイントを意識しましょう。
使用目的を明確にする
ナレッジ管理ツールを導入する際は、使用目的を明確にすることが大切です。ナレッジ管理ツールを導入する目的が不明瞭な場合は、ツールを使用するヘルプデスクやサービスデスクがどのようにツールを活用したら良いか悩んでしまうかもしれません。ツールを使用する目的が共有されていれば、迷わずナレッジ管理に取り組めるようになるはずです。
なお、ツールを導入する目的によって選ぶべき機能は異なります。先述の通りナレッジ管理ツールの機能は豊富ですが、いきなり全ての機能を駆使しようとしても、うまくいくとは限りません。問い合わせ件数の減少が目的であればFAQ機能の活用、ヘルプデスクの負担軽減が狙いであればチャットボットの実装のように、必要な機能を選択するのがおすすめです。
課題は複数存在するケースもありますが、全ての目標の達成を目指すのは現実的ではない場合があるため、優先順位を付けることが重要です。導入効果を可視化する
ナレッジ管理ツールを導入する際は、ナレッジの共有による効果を可視化して、客観的に測定できる仕組みの構築が求められます。
情報提供に関する施策は、営業成績のように数値でパフォーマンスの向上を判断しにくいことが特徴です。効果を可視化するためには、ツールの導入前後で担当者の残業時間を測定したり、顧客向けにアンケートを実施して満足度の差分を把握したりする方法が考えられます。
ナレッジの共有頻度や数に基づく指標を設定し、社員の評価材料にする手法も有効です。貢献度に応じた評価の仕組みを設ければ、情報共有のモチベーションを維持して活発なナレッジの蓄積につながります。
ナレッジ管理ツールの導入後、具体的な成果を挙げるまでには時間がかかるため、中長期的な視点を持って取り組みましょう。社内担当者の意見をヒアリングする
ツールを導入しても使用されなければ意味がないため、ナレッジ管理ツールを導入する際は、担当者の意見をヒアリングしながら慎重に進めることが肝要です。ルールを変えた直後は、多少の混乱が生まれることは仕方ありませんが、反発を防ぐには社員の声に耳を傾ける必要があります。
この際に重要なのは、業務を担当するヘルプデスク・サービスデスクの意見を聴くことです。実際にツールを活用する立場の担当者の声を反映しなければ、ツールの導入による効果は期待できません。
一部の支店で試験運用を行い、運用の過程で社員から要望や不満点を受け付け、適宜改善しつつ活用範囲を拡大していくステップを踏むと良いでしょう。導入前に説明会を開催してナレッジ共有の必要性を周知し、導入直前から直後には研修の機会を設け、オンボーディングを促進する活動も重要です。またナレッジを多く持つベテラン社員にインセンティブを付与して積極的に工夫してもらったり、ナレッジ共有に対する評価制度の仕組みを整えたりすることも考えられます。 -
まとめ
ヘルプデスクやサービスデスクは、ノウハウが重要な部門でありながら、業務で得た知見を共有する余裕がなく、組織規模で有効活用できていないケースがあります。
そのためナレッジ管理の4つのプロセスを意識して暗黙知を見える化し、マニュアルを作成することが重要です。ナレッジ管理を行う際はツールを活用して効率的に行う他、社内の意見に耳を傾けながら徐々に進めることを推奨します。
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無料のトライアル期間も用意しているので、ナレッジ管理の導入を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。