コラム
インシデント管理の方法と問題点について
目次
-
インシデント(incident)とは、出来事や事件を指す英単語です。日本のビジネスシーンにおいては、好ましくない出来事や事件を指しています。このような出来事や事件に対して、相応しい対応を行える体制のことを、インシデント管理といいます。
今回は、インシデント管理の方法やその問題点について解説します。 -
インシデント管理の方法を正しく理解する5ステップ
インシデント管理が実際にどういった形で構成されているのか、5つの項目で解説します。
1.インシデントが発生する
インシデント管理は、出来事や事件の発生に対してまず確認するところから始まります。インシデントの検出は、ユーザーからのアラートや問い合わせによる場合が多いです。
インシデントが発生した際は、内容の記録が推奨されます。状況に関する詳細な情報やユーザーからの問い合わせ内容は、今後の再発防止など分析の際に必要となるためです。2.インシデントの内容について把握と分類を行う
現在、発生しているインシデントの内容について、状況を正確に把握して分類を行います。インシデントの把握と分類は、過去に発生した類似される事象を参考にします。
インシデントを分類する際は、主にその緊急度や対応の難易度、優先度について明確にします。把握と分類が完了したら、対応できる担当者に対処を依頼します。3.担当者による解決策の検討
インシデントの内容について把握と分類ができたら、依頼された担当者が具体的な解決策について検討を行います。解決策は、過去に発生した類似するインシデントを参考にして検討されます。
たとえば、過去に類似したインシデントが発生していたとして、その解決策が既にマニュアル化されていたのであれば、この場合は手順に従った対処が可能です。
一方で、これまでに見られなかったインシデントであったり、依頼を受けた担当者では解決が困難である場合には、より上位の責任者や担当者に対処してもらう必要があります。4.解決策を実行してインシデントの解決に努める
具体的な解決策が見つかったら、実行してインシデントの解決に努めます。重要なのは、今発生しているインシデントに対して適切な対応を行い、ユーザーにとっての障害を取り除くことです。
従って、すぐの解決が難しいのであれば、たとえば代替品で対応するといった対応が求められます。迅速な対応が必要です。5.インシデントが解決してシステムを復旧させる
インシデントが解決したら、対応に携わっていた関係者やユーザーに報告します。ユーザーに対してフォローが必要かどうかも確認しましょう。システムが復旧したら、一連の経緯を記録して今後のインシデントに備えます。
-
インシデント管理と問題管理の違い
システムに発生した好ましくない出来事や事件をインシデントといい、対応するための体制をインシデント管理といいます。似たようなワードとして、問題管理が挙げられます。インシデント管理と問題管理は、似ているようでその目的や意味合いは異なるので正しく把握しておきましょう。
インシデント管理は、あくまでも発生した出来事や事件を解決するための体制です。システムを運営していくうえで、ユーザーのサポートを目的としています。
一方で問題管理とは、発生してしまったインシデントに対して、原因を明確にして再発を確実に防ぐための対応を指します。 -
インシデント管理を整えるために必要なこと
ITサービスにおけるマネジメントシステムの導入によって、インシデント管理の体制を整えられます。インシデント管理を整えるにあたり、目的や役割を明確にすることが大切です。目的を明確にし、将来発生するであろうインシデントに対して適切なマネジメントツールを導入することが求められます。
正確度が高く、迅速な解決を図るのであれば、自社で提供しているサービスに見合った最適なツールを探す必要があります。たとえばサービス規模の大きさや拡張性の自由度、予算などを吟味することこそがインシデント対応の始め方における重要な要素です。
複雑度の高いITサービスの場合、なかなか導入できないというケースもあります。一度にすべての体制を変化させるのではなくて、可能なところから徐々に始めることも大切でしょう。
フレキシブルな対応能力を有しているツールの導入によって、比較的少ない労力で適切な問題解決システムの準備が叶い、管理を始めやすくなります。自社が抱えているITサービス運営における問題点を洗い出し、客観視することも管理の始め方について考慮する際に気を付けたい部分です。 -
インシデント管理における3つの問題点
インシデント管理は、ITサービスを運用していくうえで必要不可欠です。発生したインシデントに適切な対応をしていくために、3つの問題点について把握しておきましょう。
1.インシデント管理と問題管理について違いを明確にしておく
インシデント管理は、問題管理とは異なる部分があります。関係者のなかで同一視してしまうと、スピード感が必要とされるインシデント対応において遅れが生じる恐れがあります。インシデント対応の場におけるトラブルは、ユーザーに対して不快感を与えかねません。
まずは、この両者の違いを認識しておくことが大切です。2.インシデント管理には相応の能力が必要
発生したインシデントに適切な対応を行うためには、技術力や経験、ノウハウを必要とします。しかし、これらの条件を満たした人材を揃えること自体、困難だとされています。
人材不足が原因でインシデント対応が正常に行われない場合、より大きな事態を引き起こす可能性は否めません。人材不足は危機的な問題点になるでしょう。3.多くのスタッフがインシデントに対応できる体制を整える
インシデント管理では、携わっているスタッフがあらゆるシーンに対応できず、一部の人しか扱えないケースがあります。インシデント管理の目的や意味合いを考えると、これではまったく意味がありません。
インシデント管理を整えるには、専用ツールの駆使などによって多くのスタッフが対応を可能とすることが大切です。 -
インシデント管理における問題点を踏まえて最適な体制を整える
インシデント管理は、提供しているサービスの命運だけでなく、企業自体の存続にも関わっているといえます。インシデント管理の実施方法によって、実施方法によってユーザーが感じる満足度が大きく異なります。
問題点を把握しやすく適切な管理が行え、誰もが実施しやすくすることこそが理想とされるインシデント管理です。満足度を向上させて快適な使用環境をユーザーに提供するためにも、インシデント管理の体制を整えることは必要不可欠だといえるでしょう。
-
監修者情報井上 誠株式会社クレオ2002年から、さまざまな業務システムSEとしてキャリアをスタートし、100社を超える企業システムの開発プロジェクトに携わる。数多くのIT部門を見てきた経験とITILやITサービス管理への高い知見を生かし、現在はITILエキスパートを取得し、クライアントの課題解決に日々尽力するITサービス管理のエキスパートとして活躍。2002年から、さまざまな業務システムSEとしてキャリアをスタートし、100社を超える企業システムの開発プロジェクトに携わる。数多くのIT部門を見てきた経験とITILやITサービス管理への高い知見を生かし、現在はITILエキスパートを取得し、クライアントの課題解決に日々尽力するITサービス管理のエキスパートとして活躍。