コラム
業務プロセスとは?改善が無駄な施策になる3つの理由や成功事例を紹介
目次
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ビジネスの現場でよく使われる言葉の一つに「業務プロセス」があります。目指す成果を実現するために、企業のあちこちでさまざまな業務プロセスが実施されていますが、時間の経過とともにムダや非効率な部分が出てくるため、定期的な改善が必要です。
業務プロセス改善を成功させるには具体的なノウハウが不可欠です。大事なポイントを見逃したばかりに、計画が頓挫する恐れもあります。
本記事では、業務プロセスや業務プロセス改善の定義、具体的なステップや役立つポイントなどを、具体的な成功事例を交えながら解説します。ぜひ参考にしてください。 -
業務プロセスとは
企業では事業の中で利益を出すために、日常的にさまざまな仕事が行われています。個々の仕事は業務と呼ばれ、業務プロセスはこうしたさまざまな業務の連なりを指します。何らかの結果を出すためには、単独の業務だけではなく複数の業務が必要であり、個々の業務には関連性があります。
例えば、一つの商品を製造・販売する一連の業務プロセスには、以下のようなさまざまな業務が含まれます。
・マーケティングや商品企画、研究開発などの業務を通じて、作りたい商品のアイデアをまとめる。
・原材料を調達して製造する
・製造された商品を販売するために広告や宣伝をする
・各業務に携わる社員を雇うための人事、お金の流れを管理する経理や財務業務をこなす -
業務フローとの違い
業務フローとは、個々の業務が連なった一つの流れを指します。例えば営業の業務フロー、企画の業務フローといった具合です。
前述のとおり、一つの商品を販売する業務プロセスには商品企画や資材調達、製造、広告宣伝、営業、販売など、さまざまな業務が含まれ、これら一つひとつが業務フローに該当します。さまざまな業務フローが組み合わさって形作られた一つの流れが業務プロセスです。
業務プロセスは、PDCAサイクルを回すために用いられます。PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の各頭文字を組み合わせた用語で、マネジメントモデルの一つです。PDCAサイクルでは、業務プロセスを回転させながら、Plan・Do・Check・Actionの4つのステージを通じて検証・改善を繰り返しつつ、ビジネスで得られる成果の向上を図ります。 -
業務プロセス改善とは
業務プロセス改善とは、業務上のムダを省いてより効率化するための取り組みです。
企業や組織を取り巻く環境は時代の流れとともに変化しており、新たな課題も生じます。その中で、それまでの仕事の仕方が時代の変化に合わなくなり、企業や組織が目指す目的の達成が困難になる場合もあるでしょう。
企業や組織では、こうした時代の変化に対応できるよう定期的に業務プロセスを見直して再構築を図っています。各業務フローの最適化や効率化、省力化、リスク軽減、コストダウンなどの取り組みを通じて無駄を省き、従業員にかかる負担を軽減することで業務プロセス全体の生産性が向上し、企業が受け取る利益も増えます。
業務プロセス改善の目的は、次の項目でより詳しく解説します。 -
業務プロセス改善の目的は2つ
業務プロセス改善には、主に「効率化による業務向上」と「業務の標準化によるリスクマネジメント」の二つの目的があります。以下にそれぞれ詳しく解説します。
効率化による業績向上
業務プロセス改善の第一の目的は、業務効率化による業績向上です。
同じ業務プロセスを長く続けていると、ところどころ非効率な部分や無駄な部分が出てきます。これらの部分を特定し、検証して改善していくことで、業務効率化が促進されます。
業務プロセスが改善されると、以前よりもより短時間・より少人数で業務が回せるようになり、従業員一人ひとりに掛かる負担も軽減されるでしょう。個々の業務効率がアップすれば生産性向上やコスト削減が実現し、その分会社の業績にもつながります。業務の標準化によるリスクマネジメント
業務プロセス改善の第二の目的は、業務の標準化によるリスクマネジメントです。
同じ業務プロセスが使われていると、次第に特定の従業員以外に業務がこなせない「属人化」や、業務の詳しい内容や仕組みなどを他者が把握・管理できない「ブラックボックス化」などのリスクが生じます。
これらのリスクを放置しておくと、例えば担当している従業員の異動や退職により業務が続行できなくなる、トラブルが起きた場合も改善策が立てづらいなどの問題が生じる可能性があります。
他の従業員が同じ業務をできるよう訓練する、マネージャーが業務の仕組みを適切に把握・管理するなどの業務標準化の取り組みにより、より容易なリスク管理が実現します。 -
ステップ別業務プロセス改善の流れ
業務プロセス改善を具体的にどう進めていくべきか、ステップ別に解説します。業務プロセス改善の流れには、問題点の特定や目標設定、改善策の実施など、主に4つのステップが存在します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP1:課題を認識した上で問題点を見つける
まずは業務プロセスの現状の把握・分析が第一です。業務プロセス全体を理解した上で、プロセスを構成する各業務フローにわけて可視化します。加えて、どのフローのどの部分でどのような問題が起こっているのか、発生箇所や具体的な内容を洗い出します。
このステップでは、関連資料を使って業務内容やフローを詳しく調べたり、担当者にヒアリングしたりするなどの作業を通じてできだける詳細を明らかにし、問題の原因が何なのかも特定しましょう。どうすれば問題の発生が防げるか、問題の改善に向けてどのような対策を講じるかの見通しも見えてきます。STEP2:改善することでの貢献度を考え、優先度を明確にする
次に手を付けるステップは、改善を通じた組織への貢献度を考え、問題解決の優先順位を明らかにすることです。
まずは問題の改善を通じて、どの業務がどの程度やりやすくなるか、具体的な貢献度を考えます。例えば「工程を改善すれば、このくらいのスピードアップが図れる」など、指標を用いて明確化します。
場合によっては、その業務に関わる人員の採用など、関連する別の業務フローも検討する必要もあるでしょう。
改善を通じた貢献度が具体化できたら、今度はどの問題から手をつけて改善していくべきかの優先順位を明確化します。STEP3:目標と目標までの道のりを設定する
次は、改善に向けた具体的な目標と、目標を達成するまでの道のりの設定です。どの程度までの改善をゴールとするかを明確に定めます。目標の設定には、工期や期間など、進捗度合いを定量化できる明確な指標が必要です。
まず、最終的に達成したい目標は、KGI(Key Goal Indicator=最終目標達成指標)を用いて設定します。例えば「製造コストの10%削減」などです。
また、KGIの達成に向けて実行されるプロセスがどの程度進んでいるかを測る中間指標として、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)を用いて設定します。例えば、「製造コストの10%削減」のKGIの達成に向けて、「製造に要する工期の20時間削減」などをKPIとして設定します。STEP4:具体的な改善方法を考え実行する
最後に、問題解決および目標達成のための改善案を作成して、実施します。
業務プロセス改善に向けて対応すべき各問題を踏まえながら、具体的な改善策を作成していきましょう。最終的なKGI達成に向けて満たすべき各KPIを押さえつつ、現実性と有効性に基づいた改善計画を立案します。
改善計画が定まったら、いよいよ実行に移ります。必ずしも事立案した計画どおりに事が進むとは限りません。あらかじめ改善策を効果的に進めるためのPDCAサイクルを設けておき、改善策の実施中は常時回転させながら、途上で発生する新たな問題を解消しつつ進めていきます。 -
上手くいくためのポイントは?
業務プロセス改善の効果を高めて最終ゴールを達成する上で、いくつかの要点を押さえておく必要があります。3つのポイントを解説します。
見える化をする
第一に押さえておくべきポイントは、業務プロセス全体の見える化です。業務プロセスの全体像を具体的に書き出し、その業務の何が問題なのか、問題を解決するには何をすべきか、関係者の誰が見てもわかるように可視化することで、関係者の間で共通認識が形づくられます。
情報共有が徹底されれば、改善策を実施中もPDCAを回しやすくなり、改善に要する工数も減らすことができます。見える化の作業を効率的に進めるために、場合によっては、業務プロセスの管理に便利なツールの導入・活用を検討しても良いでしょう。業務プロセス間のつながりを意識する
業務プロセス改善を講じる場合、他の業務プロセスとのつながりを意識するのも重要です。
業務プロセスのなかには、単独で改善を進められる業務もある一方、他の部門にまたがっている業務もあり、他部門の関係者の協力も得ながら改善を進めていかなくてはなりません。
一方の部門だけで業務が改善されても、他部門にそのしわ寄せがおよび、かえって業務負担が増えてしまうような場合もあります。これは本当の意味で業務改善が達成されているとはいえず、取り組みそのものが無駄になる恐れもあります。
業務プロセス改善の効果を高めるためにも、幅広い視点から部門間の関わりを見据え、効率的な改善に取り組みましょう。再現性を高める
業務の再現性を高めるのも意識すべきポイントです。再現性を高めるとは、たとえ担当者が変わっても同じ手順で同じ成果を出せるような仕組みづくりであり、業務を標準化する取り組みです。業務の再現性が高まれば、業務の属人化やブラックボックス化などのリスク軽減につながります。
業務の標準化には、定期的な業務プロセス改善が欠かせません。業務プロセス改善は繰り返して実施する必要があります。業務の標準化とともに、業務プロセス改善の取り組みそのものも標準化していきます。 -
業務プロセス改善が失敗する3つのケース
業務プロセス改善は成功する場合もあれば、うまくいかない場合もあります。どのような原因が元で業務プロセス改善が失敗するのかを、3つのケースから解説します。
効果測定や客観的な評価をする仕組みがない
業務プロセス改善がうまくいかない原因の一つとして、改善の達成度を把握するための効果測定や、客観的な評価をする仕組みがないことが挙げられます。改善の進捗度合いを定量化するためのKGIやKPIが設定されないことが原因です。
KGIやKPIの設定には、事前の徹底した課題の洗い出しが不可欠です。課題の洗い出しが中途半端なために、具体的な指標や数値を用いたKGI・KPIが設定できない場合、以後の改善に向けた取り組みの進捗を評価しようにも、明確な手段がありません。改善が進んでいるのか、変化がないのか、むしろ悪化しているのかなどの把握が困難になります。曖昧な目標のみで具体的な目標がない
業務プロセス改善が失敗する二つ目のケースは、曖昧な目標のみが設定されており具体性に欠けている状況です。例えば「残業を減らす」「定時退社を目標に」「工期のスピードアップ」などの曖昧な表現が用いられた目標では、何をどこまで達成すべきかのゴールがぼやけてしまいます。
目標が曖昧だと、どれだけ達成されているか正しく評価ができません。また、達成度を定量化する指標がないため、人によって異なる評価になりがちです。
業務プロセス改善を立案する際は、できるだけ具体的な指標や数値を用いて目標を設定し、評価しやすい仕組みを設けておく必要があります。変化を望んでいない
業務プロセス改善に関わる現場の関係者が変化を望んでいない場合もあります。組織や部署を構成する従業員のなかには、年齢や立場の違いにかかわらず、変化を嫌う人や現状維持を望む人が一定数存在します。
業務プロセス改善の理由や根拠、目的などを従業員一人ひとりに浸透させる取り組みが十分ではない場合、従来どおりの仕事の仕方を続けることに対しての従業員の問題意識は薄いままです。せっかく業務プロセス改善に着手しても効率が悪く、取り組み自体が意味を失いかねません。
従業員の理解を得るには、業務プロセス改善を通じて得られる具体的なメリット、例えば労働時間の短縮や有給取得の取りやすさなどを、徹底して共有する必要があります。 -
業務プロセス改善が失敗する3つのケース
業界・業種が異なるさまざまな企業での業務改善取り組み事例の中から、5つの成功事例をご紹介します。
ANA
日本を代表する航空会社の一つであるANAでは、業務効率化とコスト削減の課題を解決する必要がありました。
同社が採った対策の一つとして、iPadを導入した職場環境のペーパーレス化を実施したところ、4億円の経費削減効果が得られました。この取り組みを通じて、社内での情報共有体制もより整備されました。
同社が実行したもう一つの取り組みが、空港カウンターでの荷物預かり業務の自動化です。カウンターにAIロボットと自動機を導入した結果、カウンターで働くスタッフの人数を約7割削減できただけでなく、乗客がチェックインで待たされる時間も最大80%にまで短縮できる効果が得られました。ロイヤルホテル
株式会社ロイヤルホテルでは、顧客ごとのオーダーメイドが必要な宴会業務において、無駄を省きつつ一定のサービス対応品質を維持することへの課題を抱えていました。そこで、徹底した作業環境改善を図るために展開したのが、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つを軸にした「5S運動」です。
例えば、整頓では必要なものと不要なものを区別して不要なものを処分する取り組み、しつけでは決められたことを正しく守る習慣付けを徹底しました。
以上の取り組みの結果、職場環境が整備されて仕事がしやすくなり、作業スピードが17%向上。業務効率化を考えながら仕事をする習慣が社員の間で浸透し、ES(従業員満足度向上)も実現しました。レディ薬局
愛媛県を本拠にドラッグストアチェーンを展開する「レディ薬局」では、中央の大型チェーンとの競争が激化する中、生き残りをかけた業務効率化という課題を抱えていました。しかし、従業員の大半は現状に対する危機意識が薄い状況だったといいます。
そこで、業務改善を通じて企業と社員がそれぞれ得られるメリットへの理解促進を目的に、業務プロセス改善に着手しました。具体的には、店舗作業の中でもボリュームが多い荷受・品出し・補充およびレジ作業の2つの業務を選定して作業計画を立案。計画した内容に現状を近づけるための改善策実施を通じて、業務効率化を図りました。
一年間におよぶ取り組みの末、人件費の8%から14%が削減される成果を実現しました。五味八珍
中華ファミリーレストランを展開する「五味八珍」では、複数の店舗間で料理の品質に差が生じる課題と人手不足に直面していました。そこで、パートやアルバイト社員の調理技術を向上させ、店舗間での料理品質のブレ解消を目的とした業務プロセス改善に乗り出します。
具体的には、ベテラン調理人の調理技術をマニュアル化してオンライン配信し、スキルの見える化を図るとともに、調理技術に関する資格認定制度を正社員およびパート・アルバイト、指導者向けに3種類設定し、キャリアアップと連動させる施策を実施しました。
その結果、従業員は短期間でスキルを習得し、提供する料理の品質が向上するとともに、オンライン配信の仕組みにより、メニューが改訂された際もスムーズな対応が可能になりました。サイボウズ
クラウドベースのグループウェアや業区改善サービスを軸に事業展開する「サイボウズ」では、離職率の深刻化に直面していました。時間と場所を軸に9分類された働き方の中から、社員が自分に適したスタイルを選ぶ「選択型人事制度」を運用していましたが、9分類のみでは社員の希望や実態に当てはまらないケースも出てきたためです。
同社は、より多様な働き方を実現するために人事制度の見直しに踏み切りました。社員がライフスタイルに合わせて働き方を自由に選択して、グループウェアに登録、全員に共有される「働き方宣言制度」を導入したところ、この取り組みが功を奏し、離職率の大幅な低下を実現できました。 -
まとめ
ビジネスを取り巻く状況は刻々と変化しているため、同じ業務プロセスを継続している限りはムダや非効率が生じるのは避けられず、業務効率低下、ひいては企業の損失につながります。
そのため、定期的に業務プロセス改善を実施して業務効率向上を図る必要があります。本記事でご紹介した改善のステップや成功のポイントを参考に、業務プロセス改善にチャレンジしてみてください。
現代の業務プロセス改善では、ITサービスを駆使したDX化による業務効率化の必要性も高まっています。SmartStageサービスデスクは、ITIL(継続的サービス改善)に準拠したITサービスマネジメントを通じて、自社で短期間のうちに無理なくITサービスの運用と管理を実現するためのツールです。 こうしたシステムも業務プロセス改善の一つとして検討してみてください。
ITサービス管理ツール「SmartStageサービスデスク」