#コラム

サービスレベル・アグリーメント(SLA)

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  • SLAの目的

    SLAは、「Service Level Agreement」の略称です。アルファベットでエスエルエー、またカタカナ表記でサービスレベル・アグリーメントといった風に書かれることもあります。近年、このSLAはITサービスにおいて重要視されています。主には通信サービスやレンタルサーバーなどが代表的で、ユーザの安心や信頼を得る上で有効です。

    主な目的としては、サービスレベルの品質保証が挙げられます。ITサービスは、目に見えないネットワーク通信を伴うことが多いです。通信やレンタルサーバーは、まさにその例のひとつでしょう。そんな不確かな存在だけに、100%の安定性が保証されているわけでもありません。

    回線トラブルや気候の影響、メンテナンスが伴う場合、契約中であるにもかかわらずサービスが停止するといったケースもでてきます。もちろん、ITサービスである以上これは仕方のないことですし、ユーザ側もこの点については契約前に理解しておかなければなりません。とはいえ、お金を払っている以上そうした利用できない期間が長くなると、不満にも繋がってしまいかねません。規模が大きい場合は、それこそ訴訟問題などにすら発展してしまうことでしょう。そんな面をサポートしてくれるのが、SLAことサービスレベル・アグリーメントなのです。

    この保証は、またの名をサービスレベル合意書と呼びます。内容としては、混雑時の通信速度や処理における最低限度、そして障害やメンテナンスにおける利用できない時間は年間どれくらいになるのかなどをまとめた記述です。そしてこの合意事項を超える利用不能期間やレベル低下などが起こった場合は、一定の補償をおこなうといった決め事を事前に取り交わしておきます。

    これによりユーザは、契約するサービスがどのようなレベルで提供されるのかを、事前に把握しておくことができます。もちろん業者側としても、補償をおこなうともなれば損失に繋がるためそうはならないよう水準を保とうと努力します。つまりSLAとは、どのようなレベルでサービスを提供するかという点を提示し、そしてその内容に合意を得るための存在なのです。

    SLAには、一定の規定が存在します。主には、次の項目がまとめられた書類を指します。目的、適用範囲及び責任、改定方法、対象サービス、サービスレベルに関する規定、報告と管理、サービスレベル未達・達成時の対応等のそれぞれです。IT業界において比較的知られた存在でも、ユーザにとっては未知の存在であることがほとんどでしょう。そのため、SLAの基本的な部分からしっかり明示されている点が特徴的です。

  • SLAの役割

    SLAことサービスレベル・アグリーメントには、業者とユーザそれぞれへ向けた役割が存在します。たとえば合意書を提示する側である業者には、トラブルを未然に防げるというメリットがあります。前述でも触れていますが、当初の契約内容よりも低いレベルでサービスが提供される、もしくは長期間利用困難な期間が続いた場合など、ユーザの不満足が膨らみ、クレームや訴訟の対象ともなりかねません。

    ですが、あらかじめサービスレベルのアグリーメントを通して、どれくらいの範囲までサービスレベルが下がる可能性があるか、利用できない期間が伴うかなどに合意を得ていれば、極端な不満に繋がりにくいです。またもし規定範囲を超えたトラブルが生じたとしても、補償でサポートすると約束しているので温度感が高まり過ぎる心配もありません。

    そして、不満が大きくなりにくいという意味で、ユーザ側にとっても有益に感じられます。ITサービスは目に見えない存在であり、さらには多くの場合インターネットを通して契約するため、担当者と顔を合わせることもなく利用していることが考えられます。自分ひとりで不満を募らせると、妄想も伴い怒りは増幅しやすく、大きな不快感をも味わいかねません。その点、事前に変動の範囲と補償内容を知らされていれば、不意なトラブル時でも冷静に対処できます。安心感を得られるという意味で、ユーザにとっても嬉しい存在といえるでしょう。

  • 注意すべきこと

    メリットの多いSLAですが、注意することもいくつか存在します。たとえば、合意内容に踏まえるデータの種類です。範囲を決めて、その上限下限を基準に納得してもらう内容ではありますが、このデータ自体が不明瞭なものとなれば、本当の意味での安心には繋がりにくいです。つまり、客観的に定量データとして測定が可能である、自動的に収集できる、ユーザが独自にでも収集できる対象であることが重要なのです。

    また、合意事項を増やせば増やすほど双方にとってメリットがあるかといえば、そうでもありません。範囲が広すぎると、内容の複雑さから合意を得られなくなる可能性があります。またそもそも、契約自体も見直されてしまうかもしれません。便利な存在とはいえ、適度な範囲に収められるよう工夫しましょう。